召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第三十二話「幻獣の素材と宴」

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「これは……幻魔獣、ワイバーンの頭骨! どこで見つけたんだ?」
「砦の宝物庫にあったんだよ。キングが見つけてくれたんだ」
「幻魔獣の素材が手に入るとは……ワイバーンが居れば騎士団の戦力は大幅に上がるだろう。素材の状態も良く、強い魔力を持っている」
「素材にも魔力の強さがあるんだね」
「そうだ。強い魔力を持つ魔物ほど、大量の魔力を体に秘めたまま命を落とす。強い魔力が籠もった素材から召喚を行えば、魔物が成長しやすくなり、知能も高くなりやすいと言われている」
「やっぱりゲルストナーは召喚学にも精通しているんだね」
「育成学と召喚学は共通している点も多いからな」

 ゲルストナーからワイバーンの説明を聞くと、ドラゴンよりも獰猛で魔力が強い大型の飛竜なのだとか。戦闘力は幻魔獣の中でもトップクラスで、忠誠心も高いらしい。ただし、自分よりも強い人間にしか懐かなく、野生のワイバーンを手懐けられた人間は過去に二人しか居ないのだとか。

「ワイバーンならアレラ山脈に居るブラックドラゴンにも勝てるかな?」
「それは分からないな……個体としての強さなら、幻魔獣のワイバーンの方が上だとは思うが、ブラックドラゴンの戦闘経験や、敵の数が分からない。一対一ならワイバーンが勝つとは思うが」
「魔物も長く生きれば戦闘の経験を積んでいるから、新たに生まれた幻魔獣よりも、長く生きた幻獣の方が強い可能性もあるんだね」
「そういう事だ。魔力の強さや筋力の強さだけが、戦闘における強さではない。低レベルの人間でも、戦い方次第では高レベルの魔物を狩れるだろう?」
「確かにそうだね。ブラックドラゴンを倒す方法を考えなければならないね」
「うむ。ドラゴンを狩ればたちまち俺達の騎士団の名が知れ渡るだろう。幻獣の中でも討伐の難易度はトップクラスだからな」

 ゲルストナーと山脈攻略について暫く話し合うと、クーデルカを歓迎する宴の準備が整った。テーブルにはゲルストナーが調理したブラックウルフの肉と、ブラックライカンの肉が並んでおり、それ以外にもトマトを使ったスパゲッティやチーズ、飲み物は葡萄酒やエール酒等、豪華な料理が所狭しと並んでいる。

「クーデルカ。ブラックライカンの肉を使わせてもらったが、大丈夫だったか?」
「ええ。気にしないわ。むしろいい気味かしら」

 アイリーンが宴の音頭を取ると、クーデルカは葡萄酒を飲んだ。それからブラックライカンのステーキを食べると、嬉しそうに微笑んだ。自分の家族を、自分自身を殺した敵の肉を食べる……どんな気分なのかは本人しか分からないだろうが、クーデルカは上機嫌で肉を食べている。

「なかなか美味しいわね」
「そうか。そいつは良かった」
「ゲルストナーは料理が上手なのね」
「一人暮らしが長いからな」
「まだ結婚はしていないの?」
「うむ。なかなか良い相手が見つからなくてな」
「それは勿体無い。きっと良い夫になれるわ」
「ありがとう。クーデルカ」

 すっかりゲルストナーと打ち解けたのだろう、ゲルストナーは騎士団が出来たエピソードや旅の目的地等をクーデルカに話している。ルナはブラックライカンの肉に齧り付いたが、分厚いステーキを噛み切れず、悲しそうに俺を見つめた。まだナイフを使った食べ方を知らないのだろう。見た目は大人の女性だから、時折、ルナが生まれたての魔物だという事を忘れる時がある。

「ルナ。ステーキは小さく切って食べるんだよ」
「わかった!」

 ルナのは右手をステーキにかざし、風の魔力を放出させると、小さな風の刃がステーキを切り裂いた。とんでもない魔法の使い方だな……キングもルナの真似をして魔力を込めた時、アイリーンが急いで静止した。

「キング。私が切ってあげる。ここで魔法を使うと皆死んでしまうの」
「アリガト……」

 キングとルナには一般常識を教えた方が良さそうだな。アイリーンは歯が良いからだろうか、分厚いステーキをそのまま噛み切っている。やはり彼女も人間ではないんだな。よく考えてみれば、俺とゲルストナー以外は皆種族が違う。ユニコーンが寂しそうに室内を覗いていたので、俺はアシュトバーン村で頂いた果物をユニコーンに食べさせた。満足そうに食事をすると、ユニコーンは野営地の見張りを続けた。頼りになる召喚獣だ。

「サシャは私の主なのに、どうしてルナに肉を切ってあげるの?」
「ルナは俺が育てているからね。実はまだ生まれたばかりなんだよ」
「そんなでたらめな嘘、私が信じると思う?」
「クーデルカ、サシャは嘘を付いていないんだよ。ルナはつい最近まで卵の中に居た。サシャが育ててここまで大きくなったんだ」
「それじゃ、私のためにも肉を切って頂戴。いいでしょう? 私もあなたのものなんだから」
「俺のものではないけど、ステーキは切ってあげるよ」

 それからクーデルカのためにステーキを切ると、彼女が肉を食べさせてと言ったので、肉をフォークに刺して差し出した。クーデルカは俺を見つめながら肉を頬張った。随分色っぽいな……彼女を見ているだけで胸が高鳴る。キングはそんな俺達の様子を楽しそうに見つめている。

「クーデルカ、実はサシャはルナと共に風呂を入る仲なんだ。あまり二人の邪魔をしてやるなよ」
「なんですって? サシャ! どういう事?」
「ああ。ルナはまだ幼いから俺が風呂に入れているんだよ」
「そう。ルナはサシャとお風呂に入るの」
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