召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第三十一話「クーデルカの過去」

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 砦を出るとユニコーンとゲルストナーが駆けつけきた。ユニコーンはクーデルカの臭いを嗅ぐと、小さく頭を下げた。仲間として認めるという事だろうか。ゲルストナーにブラックライカンの討伐を伝えると、彼は自分の事の様に喜んだ。

「流石だな……幻獣を倒してしまうとは! それに、隣に居る女は魔族か? 魔族が人間の仲間になるとは信じられないな……俺はゲルストナー・ブラックだ。よろしくな」
「私はクーデルカ・シンフィールドよ」
「まずはこの場所を離れようか」
「うむ。直ぐに出発しよう」

 俺達は馬車を走らせ、次の野営地を探す事にした。馬車の運転をキングに任せて、俺達はクーデルカと話し合う事についた。自分が召喚した相手だが、素性も全く分からない。キングとルナ、それにユニコーンが認めた魔族か……十分に信用出来る相手なのは確かだろう。まずはお互いに自己紹介をして知り合う必要がある。

「俺はさっきも名乗ったけど、幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガー。それから馬車を牽いているのは幻獣のユニコーン。手綱を握っているのが幻魔獣のキング」
「あたしはアイリーン・チェンバーズなの。サシャに命を助けられて一緒に旅をしているの」
「私はハーピーのルナ」
「ゲルストナーと呼んでくれ。戦士をしている」
「クーデルカ、どうして砦で殺されたのか。それから、なぜブラックライカンは君を守る様に地下に潜んでいたのか。色々教えてくれるかな?」

 クーデルカは髪をかき上げて俺を見つめた。見れば見るほど美しい。彼女は俺の手を握ると、静かに語り始めた……。

「私が二十歳の時、砦で暮らしていた盗賊の首領との結婚が決まっていたの。結婚式の日には、大勢の魔族や人間の盗賊達が集まっていたわ。事件は結婚式の当日に起きたの。当時、魔族の長だった私の父には、休戦状態だった幻獣のライカン族が居たんだけど……参加者がお酒に酔って、騒ぎ始めた頃に、ブラックライカン率いる軍団が突然、結婚式会場を襲ったの」
「結婚式をブラックライカンに襲われたのか?」
「そうよ、ゲルストナー。私達はブラックライカンの軍団に皆殺しにされた。ただ一人、私の父を除いた参加者は全員命を落としたの。私はブラックライカンの闇の魔力によって魂を祭壇に封じ込められた」
「それで祭壇の上を漂っていたという訳か」
「そう。父は襲撃を受けて直ぐに逃げ出した。私の死も知らずに……きっと父は私がまだ生きていると思っていたのでしょう。父は私を取り戻すために何度もブラックライカンに挑んだのだけど、父一人ではブラックライカンに敵わなかった」

 ブラックライカンは砦でクーデルカの父を待ち、殺す機会を伺っていたのだろう。クーデルカを生きている様に見せかけて、ただクーデルカの父を続けた。クーデルカの父は、娘が生きていると勘違いをし、何年もブラックライカンに戦いを挑み続けたのだとか。

「クーデルカのお父さんどうなったの?」
「わからない……ブラックライカンとの戦いで体中に傷を負ってからは砦を訪れる事もなくなった」
「お父さんが可哀相なの……」
「そうね。だけど彼は良くやったと思うの。私は魂の状態で父の戦いを見続けてきた」
「クーデルカ。これから君の新しい人生が始まるんだ。俺達と生きよう」
「そうね、これもサシャと皆のお陰だわ。本当にありがとう……」

 クーデルカは涙を流しながらお礼を述べると、俺は彼女の体を抱き寄せた。自分の親がブラックライカンに攻撃される所を魂の状態で見続けてきた。大変な思いをしてきたのだろう。ルナはクーデルカの頭を撫でると、優しい笑みを浮かべた。

「クーデルカの父上は生きているのではないか?」
「そうかもしれないわね。いつか会いに生きたい……」
「うむ。今日はクーデルカの入団祝でもするか!」
「そうだね。キング、適当な場所を見つけたら野営の準備をしようか」
「ワカッタ」

 しばらく移動を続けると、森の中に開けた場所を見つけたので、俺達は早速野営の準備を始めた。キングとルナは水を汲みに行き、俺は土の魔法で家を作り上げた。ゲルストナーは料理をし、アイリーンはユニコーンに乗って野営地の周辺を探索した。魔物が潜んでいないか確認するためだ。クーデルカは俺の傍から離れようとしない。魂の状態で何年も一人で砦に居たんだ。きっと人間が恋しいのだろう。クーデルカは俺の体を後ろから抱きしめると、静かにすすり泣いた。

「大丈夫かい? 疲れているなら早めに休もうか」
「いいえ。私は大丈夫……こうしてまた生きられるなんて幸せだなと思ったの。ありがとう、サシャ」
「どういたしまして。これからは俺がクーデルカを守るよ。お父さんの代わりにね」
「頼りにしているわ。サシャ達がブラックライカンを倒した時、私は人生で味わった事も無い程の幸せを感じた。やっと開放されるんだって。そうしたらサシャが魔法で私を蘇らせてくれた」
「召喚魔法を応用して、魂を注いだんだよ。どうやら俺は素材から召喚するのが得意みたいなんだ」
「素晴らしい力ね。私は魔術師として、これからは皆を支えながら生きる事にするわ」

 ゲルストナーが料理を終えると、俺は鞄の中からワイバーンの頭骨を取り出した。ゲルストナーに頭骨を見せると、彼は満面の笑みを浮かべて頭骨に触れた。
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