31 / 188
第一章「冒険者編」
第三十一話「クーデルカの過去」
しおりを挟む
砦を出るとユニコーンとゲルストナーが駆けつけきた。ユニコーンはクーデルカの臭いを嗅ぐと、小さく頭を下げた。仲間として認めるという事だろうか。ゲルストナーにブラックライカンの討伐を伝えると、彼は自分の事の様に喜んだ。
「流石だな……幻獣を倒してしまうとは! それに、隣に居る女は魔族か? 魔族が人間の仲間になるとは信じられないな……俺はゲルストナー・ブラックだ。よろしくな」
「私はクーデルカ・シンフィールドよ」
「まずはこの場所を離れようか」
「うむ。直ぐに出発しよう」
俺達は馬車を走らせ、次の野営地を探す事にした。馬車の運転をキングに任せて、俺達はクーデルカと話し合う事についた。自分が召喚した相手だが、素性も全く分からない。キングとルナ、それにユニコーンが認めた魔族か……十分に信用出来る相手なのは確かだろう。まずはお互いに自己紹介をして知り合う必要がある。
「俺はさっきも名乗ったけど、幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガー。それから馬車を牽いているのは幻獣のユニコーン。手綱を握っているのが幻魔獣のキング」
「あたしはアイリーン・チェンバーズなの。サシャに命を助けられて一緒に旅をしているの」
「私はハーピーのルナ」
「ゲルストナーと呼んでくれ。戦士をしている」
「クーデルカ、どうして砦で殺されたのか。それから、なぜブラックライカンは君を守る様に地下に潜んでいたのか。色々教えてくれるかな?」
クーデルカは髪をかき上げて俺を見つめた。見れば見るほど美しい。彼女は俺の手を握ると、静かに語り始めた……。
「私が二十歳の時、砦で暮らしていた盗賊の首領との結婚が決まっていたの。結婚式の日には、大勢の魔族や人間の盗賊達が集まっていたわ。事件は結婚式の当日に起きたの。当時、魔族の長だった私の父には、休戦状態だった幻獣のライカン族が居たんだけど……参加者がお酒に酔って、騒ぎ始めた頃に、ブラックライカン率いる軍団が突然、結婚式会場を襲ったの」
「結婚式をブラックライカンに襲われたのか?」
「そうよ、ゲルストナー。私達はブラックライカンの軍団に皆殺しにされた。ただ一人、私の父を除いた参加者は全員命を落としたの。私はブラックライカンの闇の魔力によって魂を祭壇に封じ込められた」
「それで祭壇の上を漂っていたという訳か」
「そう。父は襲撃を受けて直ぐに逃げ出した。私の死も知らずに……きっと父は私がまだ生きていると思っていたのでしょう。父は私を取り戻すために何度もブラックライカンに挑んだのだけど、父一人ではブラックライカンに敵わなかった」
ブラックライカンは砦でクーデルカの父を待ち、殺す機会を伺っていたのだろう。クーデルカを生きている様に見せかけて、ただクーデルカの父を続けた。クーデルカの父は、娘が生きていると勘違いをし、何年もブラックライカンに戦いを挑み続けたのだとか。
「クーデルカのお父さんどうなったの?」
「わからない……ブラックライカンとの戦いで体中に傷を負ってからは砦を訪れる事もなくなった」
「お父さんが可哀相なの……」
「そうね。だけど彼は良くやったと思うの。私は魂の状態で父の戦いを見続けてきた」
「クーデルカ。これから君の新しい人生が始まるんだ。俺達と生きよう」
「そうね、これもサシャと皆のお陰だわ。本当にありがとう……」
クーデルカは涙を流しながらお礼を述べると、俺は彼女の体を抱き寄せた。自分の親がブラックライカンに攻撃される所を魂の状態で見続けてきた。大変な思いをしてきたのだろう。ルナはクーデルカの頭を撫でると、優しい笑みを浮かべた。
「クーデルカの父上は生きているのではないか?」
「そうかもしれないわね。いつか会いに生きたい……」
「うむ。今日はクーデルカの入団祝でもするか!」
「そうだね。キング、適当な場所を見つけたら野営の準備をしようか」
「ワカッタ」
しばらく移動を続けると、森の中に開けた場所を見つけたので、俺達は早速野営の準備を始めた。キングとルナは水を汲みに行き、俺は土の魔法で家を作り上げた。ゲルストナーは料理をし、アイリーンはユニコーンに乗って野営地の周辺を探索した。魔物が潜んでいないか確認するためだ。クーデルカは俺の傍から離れようとしない。魂の状態で何年も一人で砦に居たんだ。きっと人間が恋しいのだろう。クーデルカは俺の体を後ろから抱きしめると、静かにすすり泣いた。
「大丈夫かい? 疲れているなら早めに休もうか」
「いいえ。私は大丈夫……こうしてまた生きられるなんて幸せだなと思ったの。ありがとう、サシャ」
「どういたしまして。これからは俺がクーデルカを守るよ。お父さんの代わりにね」
「頼りにしているわ。サシャ達がブラックライカンを倒した時、私は人生で味わった事も無い程の幸せを感じた。やっと開放されるんだって。そうしたらサシャが魔法で私を蘇らせてくれた」
「召喚魔法を応用して、魂を注いだんだよ。どうやら俺は素材から召喚するのが得意みたいなんだ」
「素晴らしい力ね。私は魔術師として、これからは皆を支えながら生きる事にするわ」
ゲルストナーが料理を終えると、俺は鞄の中からワイバーンの頭骨を取り出した。ゲルストナーに頭骨を見せると、彼は満面の笑みを浮かべて頭骨に触れた。
「流石だな……幻獣を倒してしまうとは! それに、隣に居る女は魔族か? 魔族が人間の仲間になるとは信じられないな……俺はゲルストナー・ブラックだ。よろしくな」
「私はクーデルカ・シンフィールドよ」
「まずはこの場所を離れようか」
「うむ。直ぐに出発しよう」
俺達は馬車を走らせ、次の野営地を探す事にした。馬車の運転をキングに任せて、俺達はクーデルカと話し合う事についた。自分が召喚した相手だが、素性も全く分からない。キングとルナ、それにユニコーンが認めた魔族か……十分に信用出来る相手なのは確かだろう。まずはお互いに自己紹介をして知り合う必要がある。
「俺はさっきも名乗ったけど、幻魔獣の召喚士、サシャ・ボリンガー。それから馬車を牽いているのは幻獣のユニコーン。手綱を握っているのが幻魔獣のキング」
「あたしはアイリーン・チェンバーズなの。サシャに命を助けられて一緒に旅をしているの」
「私はハーピーのルナ」
「ゲルストナーと呼んでくれ。戦士をしている」
「クーデルカ、どうして砦で殺されたのか。それから、なぜブラックライカンは君を守る様に地下に潜んでいたのか。色々教えてくれるかな?」
クーデルカは髪をかき上げて俺を見つめた。見れば見るほど美しい。彼女は俺の手を握ると、静かに語り始めた……。
「私が二十歳の時、砦で暮らしていた盗賊の首領との結婚が決まっていたの。結婚式の日には、大勢の魔族や人間の盗賊達が集まっていたわ。事件は結婚式の当日に起きたの。当時、魔族の長だった私の父には、休戦状態だった幻獣のライカン族が居たんだけど……参加者がお酒に酔って、騒ぎ始めた頃に、ブラックライカン率いる軍団が突然、結婚式会場を襲ったの」
「結婚式をブラックライカンに襲われたのか?」
「そうよ、ゲルストナー。私達はブラックライカンの軍団に皆殺しにされた。ただ一人、私の父を除いた参加者は全員命を落としたの。私はブラックライカンの闇の魔力によって魂を祭壇に封じ込められた」
「それで祭壇の上を漂っていたという訳か」
「そう。父は襲撃を受けて直ぐに逃げ出した。私の死も知らずに……きっと父は私がまだ生きていると思っていたのでしょう。父は私を取り戻すために何度もブラックライカンに挑んだのだけど、父一人ではブラックライカンに敵わなかった」
ブラックライカンは砦でクーデルカの父を待ち、殺す機会を伺っていたのだろう。クーデルカを生きている様に見せかけて、ただクーデルカの父を続けた。クーデルカの父は、娘が生きていると勘違いをし、何年もブラックライカンに戦いを挑み続けたのだとか。
「クーデルカのお父さんどうなったの?」
「わからない……ブラックライカンとの戦いで体中に傷を負ってからは砦を訪れる事もなくなった」
「お父さんが可哀相なの……」
「そうね。だけど彼は良くやったと思うの。私は魂の状態で父の戦いを見続けてきた」
「クーデルカ。これから君の新しい人生が始まるんだ。俺達と生きよう」
「そうね、これもサシャと皆のお陰だわ。本当にありがとう……」
クーデルカは涙を流しながらお礼を述べると、俺は彼女の体を抱き寄せた。自分の親がブラックライカンに攻撃される所を魂の状態で見続けてきた。大変な思いをしてきたのだろう。ルナはクーデルカの頭を撫でると、優しい笑みを浮かべた。
「クーデルカの父上は生きているのではないか?」
「そうかもしれないわね。いつか会いに生きたい……」
「うむ。今日はクーデルカの入団祝でもするか!」
「そうだね。キング、適当な場所を見つけたら野営の準備をしようか」
「ワカッタ」
しばらく移動を続けると、森の中に開けた場所を見つけたので、俺達は早速野営の準備を始めた。キングとルナは水を汲みに行き、俺は土の魔法で家を作り上げた。ゲルストナーは料理をし、アイリーンはユニコーンに乗って野営地の周辺を探索した。魔物が潜んでいないか確認するためだ。クーデルカは俺の傍から離れようとしない。魂の状態で何年も一人で砦に居たんだ。きっと人間が恋しいのだろう。クーデルカは俺の体を後ろから抱きしめると、静かにすすり泣いた。
「大丈夫かい? 疲れているなら早めに休もうか」
「いいえ。私は大丈夫……こうしてまた生きられるなんて幸せだなと思ったの。ありがとう、サシャ」
「どういたしまして。これからは俺がクーデルカを守るよ。お父さんの代わりにね」
「頼りにしているわ。サシャ達がブラックライカンを倒した時、私は人生で味わった事も無い程の幸せを感じた。やっと開放されるんだって。そうしたらサシャが魔法で私を蘇らせてくれた」
「召喚魔法を応用して、魂を注いだんだよ。どうやら俺は素材から召喚するのが得意みたいなんだ」
「素晴らしい力ね。私は魔術師として、これからは皆を支えながら生きる事にするわ」
ゲルストナーが料理を終えると、俺は鞄の中からワイバーンの頭骨を取り出した。ゲルストナーに頭骨を見せると、彼は満面の笑みを浮かべて頭骨に触れた。
1
お気に入りに追加
1,403
あなたにおすすめの小説

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る
咲阿ましろ
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。
だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。
それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。
世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。
快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。
●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】
小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。
魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。
『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる