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第一章「冒険者編」
第三十話「魔族の魂と幻獣討伐の冒険者達」
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サキュバスの魂はゆっくりと俺に近づくと、心地良い魔力を放った。
『助けて……』
「え? 声が聞こえる!」
『私はブラックライカンに殺された魔族……』
魔族は透き通るような美しい声で俺の脳に直接話し掛けてきた。素材から召喚を試みれば、サキュバスを召喚する事は出来るだろう。魂を用いた召喚は初めてだが、きっと元の体に戻す事が出来るだろう。
「サシャ……タスケル」
「ルナもキングに賛成。助けてあげた方が良いと思うよ」
「そうか。ルナもキングもサキュバスを助けたいんだね」
幻魔獣の判断は信じる事にしている。命を預けて共に戦う仲間の判断だ。俺は直ちに召喚の準備を始めた。祭壇の上に召喚書を置き、召喚書の上にサキュバスの骨を載せる。骨の上に魂を置くと召喚の準備が整った。
両手から魔力を放出させて召喚書に注ぐと、召喚書からは氷を含む風が流れ出した。サキュバスの属性だろうか。室内の温度は瞬く間に下がり、魔力を注ぎ続けると、風の中からは一人の女性が現れた。緩やかにウェーブが掛かった紫色の髪に、透き通るような紫目。一糸まとわぬ姿で生まれたからか、俺は彼女の体に釘付けになった。白く美しい肌に豊満な胸。ルナと同等のスタイルの良さだ。キングは恥ずかしそうに目を覆うと、サキュバスは俺に近づいてきた。
「助けてくれてありがとう。私はクーデルカ・シンフィールドよ」
「俺はサシャ・ボリンガーだよ」
「またこうして生きられるなんて……本当に奇跡みたい。ありがとう。サシャ」
クーデルカは俺の体を強く抱くと、彼女の心地良い魔力を体に感じた。どうしてもクーデルカの体に目が行くが、クーデルカは柔和な笑みを浮かべて俺を見つめている。素晴らしい女性と出会えたみたいだ。
俺は鞄からローブを取り出してクーデルカに着せると、彼女はお礼を言って俺の頬に口づけをした。詳しい事情はここから出た後に聞く事にして、まずはブラックライカンの素材を回収しよう。ブラックライカンの爪を切り落とし、強い魔力感じる牙を抜く。それから夕食用に肉を切り取り、ブラックライカンが身に付けていた防具を回収する。
「そうだわ、私の装備がどこかにあるはず」
「装備?」
「そう。私が生前に身に着けていた物」
「探してみようか」
教会の奥には小さな部屋があり、宝箱がいくつも並んでいる。宝物庫だろうか。きっとブラックライカンが殺害した冒険者から奪った物だろう。宝箱には大量のお金やインゴット、宝石等が入っていた。目ぼしい物を鞄に仕舞うと、クーデルカは自分の装備を見つけた。
更に宝物庫を調べると、キングが偶然にも隠し部屋を見つけた。狭い室内には魔物の素材が置かれている。ドラゴンの頭骨だろうか? いや、これはワイバーンの頭骨だろう。以前魔物に関する書物で読んだ事がある。ワイバーンの頭骨を回収すると、クーデルカは自分の装備を身に付けた。ギルドカードでクーデルカの項目を確認してみよう。
『魔術師 LV43 クーデルカ・シンフィールド』
装備:アイスロッド 魔族の魔装 女神のサークレット
装飾品:氷の首飾り 霊力のルビーの腕輪
魔法:アイシクルレイン アイスフューリー ヒール マジックドレイン
効果:氷(氷属性の攻撃力上昇)魔装(防御力上昇、魔法防御力上昇)霊力(魔法効果上昇)
やはり氷関係の魔法が充実している。攻撃魔法と回復魔法を使いこなす魔術師なのだろう。レベルも非常に高い。クーデルカは懐からアイテムを取り出して俺に差し出した。
「サシャ。これは感謝の気持ちよ」
「これは……?」
「以前お父様から頂いた魔族のクリス、それから私の顔がモチーフになっているカメオよ」
「クリスにカメオか。頂いても良いのかい?」
「勿論」
クーデルカは短剣を俺の腰に差し、彼女の顔が彫られたカメオを俺の胸元に付けた。このカメオはクーデルカが成人を迎えた時に、母親から貰った物らしい。
「私の主であるあなたに、私のカメオを装備してほしいの」
「一応俺が主なんだよね。何だか複雑な気分だ……」
「あなたが私を召喚してくれたのだから、あなたは私の主なのよ」
「そういう事になるんだよね」
クーデルカは生前の記憶があるかもしれないが、俺が召喚したのだから、俺の召喚獣なのだろうか? 兎に角、俺の仲間だという事だ。宝物庫の物を全て回収したので、俺達はゲルストナーに元に戻る事にした……。
『助けて……』
「え? 声が聞こえる!」
『私はブラックライカンに殺された魔族……』
魔族は透き通るような美しい声で俺の脳に直接話し掛けてきた。素材から召喚を試みれば、サキュバスを召喚する事は出来るだろう。魂を用いた召喚は初めてだが、きっと元の体に戻す事が出来るだろう。
「サシャ……タスケル」
「ルナもキングに賛成。助けてあげた方が良いと思うよ」
「そうか。ルナもキングもサキュバスを助けたいんだね」
幻魔獣の判断は信じる事にしている。命を預けて共に戦う仲間の判断だ。俺は直ちに召喚の準備を始めた。祭壇の上に召喚書を置き、召喚書の上にサキュバスの骨を載せる。骨の上に魂を置くと召喚の準備が整った。
両手から魔力を放出させて召喚書に注ぐと、召喚書からは氷を含む風が流れ出した。サキュバスの属性だろうか。室内の温度は瞬く間に下がり、魔力を注ぎ続けると、風の中からは一人の女性が現れた。緩やかにウェーブが掛かった紫色の髪に、透き通るような紫目。一糸まとわぬ姿で生まれたからか、俺は彼女の体に釘付けになった。白く美しい肌に豊満な胸。ルナと同等のスタイルの良さだ。キングは恥ずかしそうに目を覆うと、サキュバスは俺に近づいてきた。
「助けてくれてありがとう。私はクーデルカ・シンフィールドよ」
「俺はサシャ・ボリンガーだよ」
「またこうして生きられるなんて……本当に奇跡みたい。ありがとう。サシャ」
クーデルカは俺の体を強く抱くと、彼女の心地良い魔力を体に感じた。どうしてもクーデルカの体に目が行くが、クーデルカは柔和な笑みを浮かべて俺を見つめている。素晴らしい女性と出会えたみたいだ。
俺は鞄からローブを取り出してクーデルカに着せると、彼女はお礼を言って俺の頬に口づけをした。詳しい事情はここから出た後に聞く事にして、まずはブラックライカンの素材を回収しよう。ブラックライカンの爪を切り落とし、強い魔力感じる牙を抜く。それから夕食用に肉を切り取り、ブラックライカンが身に付けていた防具を回収する。
「そうだわ、私の装備がどこかにあるはず」
「装備?」
「そう。私が生前に身に着けていた物」
「探してみようか」
教会の奥には小さな部屋があり、宝箱がいくつも並んでいる。宝物庫だろうか。きっとブラックライカンが殺害した冒険者から奪った物だろう。宝箱には大量のお金やインゴット、宝石等が入っていた。目ぼしい物を鞄に仕舞うと、クーデルカは自分の装備を見つけた。
更に宝物庫を調べると、キングが偶然にも隠し部屋を見つけた。狭い室内には魔物の素材が置かれている。ドラゴンの頭骨だろうか? いや、これはワイバーンの頭骨だろう。以前魔物に関する書物で読んだ事がある。ワイバーンの頭骨を回収すると、クーデルカは自分の装備を身に付けた。ギルドカードでクーデルカの項目を確認してみよう。
『魔術師 LV43 クーデルカ・シンフィールド』
装備:アイスロッド 魔族の魔装 女神のサークレット
装飾品:氷の首飾り 霊力のルビーの腕輪
魔法:アイシクルレイン アイスフューリー ヒール マジックドレイン
効果:氷(氷属性の攻撃力上昇)魔装(防御力上昇、魔法防御力上昇)霊力(魔法効果上昇)
やはり氷関係の魔法が充実している。攻撃魔法と回復魔法を使いこなす魔術師なのだろう。レベルも非常に高い。クーデルカは懐からアイテムを取り出して俺に差し出した。
「サシャ。これは感謝の気持ちよ」
「これは……?」
「以前お父様から頂いた魔族のクリス、それから私の顔がモチーフになっているカメオよ」
「クリスにカメオか。頂いても良いのかい?」
「勿論」
クーデルカは短剣を俺の腰に差し、彼女の顔が彫られたカメオを俺の胸元に付けた。このカメオはクーデルカが成人を迎えた時に、母親から貰った物らしい。
「私の主であるあなたに、私のカメオを装備してほしいの」
「一応俺が主なんだよね。何だか複雑な気分だ……」
「あなたが私を召喚してくれたのだから、あなたは私の主なのよ」
「そういう事になるんだよね」
クーデルカは生前の記憶があるかもしれないが、俺が召喚したのだから、俺の召喚獣なのだろうか? 兎に角、俺の仲間だという事だ。宝物庫の物を全て回収したので、俺達はゲルストナーに元に戻る事にした……。
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