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第一章「冒険者編」
第二十九話「砦の最深部で待つ者」
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防御力の高いゲルストナーがブラックウルフの一撃を受けていなかったら、もしかしたら仲間は殺されていたかもしれない。鍛え上げられた体に、パーティーで最も防御力の高い鎧を身に着けていたから即死は防げたのだろう。魔獣クラスの魔物にも、これ程までに強い魔物が存在したとは……。
俺はブラックウルフの牙を回収し、ブラックウルフを解体して肉を取った。今晩の夕食にするためだ。陣形は俺とルナが前衛としてキングを守り、アイリーンが遊撃として俺達をサポートする事になった。ゲルストナーが一人抜けるだけで、パーティーの防御力が大きく落ちた。改めて彼の強さを実感する。
魔物の気配を辿りながら、薄暗いジメジメした地下の通路を進む。地下にはいくつもの部屋があり、拷問に使う様な器具が置かれた部屋を見つけた。血の臭いと怨霊のような魔力を感じる。きっとここで人が殺されたのだろう。
拷問道具を見てみると、大ぶりの斧が立て掛けてあった。手に触れてギルドカードでアイテム名を確認する。武器の名称は処刑人の斧。只ならぬ力を感じたので、俺はマジックバッグに仕舞って持ち帰る事にした。やはりこの鞄は便利だ。鞄の口を広げれば、かなり大きな物でも仕舞う事が出来るからな。
更に通路を進むと、教会のような広間を見つけた。ここが最深部だろうか。白い石畳が敷かれている美しい空間には、祭壇が設置されており、祭壇の上には白骨化した死体が横たわっている。
教会に足を踏み入れた瞬間、爆発的な咆哮が轟いた。全身に刺すような強烈な魔力と、空間を震えさせる悍ましい魔物の声が響くと、俺の体は固まった。強さの次元が違う……俺が戦いを挑んで良い相手ではない。本能が逃げ出せと言っている。
教会の奥からはブラックウルフを二倍程大きくした様な人型の魔物が姿を現した。幻獣のブラックライカンだろう……長く伸びた爪は大勢の人間の血を吸っている様だ。まるでサーペントのレイピアの様な強い魔力を感じる。
ここで逃げ出す訳にはいかない。俺は最高の冒険者になると誓って村を出たんだ。俺は震える手でグラディウスを握り締め、戦いを挑んだ……。
グラディウスに魔力を込めて水平切りを放った。ブラックライカンは後退して俺の剣を回避すると、右手の爪に黒い魔力を纏わせて振り下ろした。瞬間、アイリーンの槍がブラックライカン右手を捕らえた。
アイリーンは敵の攻撃に合わせて精確に突きを放ち、ブラックライカンの手の甲を貫くと、怒り狂ったブラックライカンがアイリーンを標的に定めた。ルナは翼を開いて上空を舞い、魔力の刃を雨の様に降らせている。ルナの攻撃はブラックライカンの体に傷を付けているが、致命傷には至らない様だ。
キングは魔法のタイミングを計りながら後方で待機している。ブラックライカンはアイリーンに対して爪の一撃を放った。まずい……このままではアイリーンの回避が間に合わないだろう。俺はアイリーンの目の前に土の壁を作り上げた。
ブラックライカンの一撃が壁を砕くと、攻撃を阻まれたからだろうか、再び爆発的な咆哮を上げて俺を睨みつけた。ルナはレイピアを仕舞い、魔力で作り上げた弓を構えると、風の魔力を込めた矢を放った。ルナの魔法の矢はブラックライカンの肩を貫くと、ブラックライカンは大きく跳躍し、宙を舞うルナの体を掴んだ。
ルナは抵抗する事も出来ず、ブラックライカンの巨大な手の中で意識を失った。その時、背後から強烈な魔力を感じた。急いで振り返ると、キングが両手から巨大な炎を放出させた。周囲を燃やし尽くす程の爆発的な魔法は、ブラックライカンの右足を捕らえると、瞬く間に足を消滅させた。今が攻撃のチャンスだろう。俺は体内から魔力を掻き集め、地面に右手を付いて地面に注いだ。
ブラックライカンの足元から無数の土の槍が伸び、槍はブラックライカンを串刺しにした。これが俺の最高の攻撃魔法、アイアンメイデンだ。ブラックライカンは大量の血を流しながらルナを離すと、アイリーンが跳躍してブラックライカンの頭に飛び乗った。アイリーンが槍を脳天に突き立てると、ブラックライカンは息絶えた……。
地面に倒れるルナを起こし、ヒールポーションを飲ませると、ルナの傷はたちまち回復した。ブラックライカンを目の当たりにした時は、俺では到底敵うはずが無いと思ったが、仲間の力を借りてどうにか敵を討つ事が出来た。
祭壇からは俺を呼ぶ様に魔力が流れてくる。ブラックライカンが死んだ瞬間から、祭壇の魔力を強く感じる。祭壇の上には白骨化した死体があり、死体の近くには白い炎の様な物が漂っていた。
「何か浮いているね。これはなんだろう」
「鑑定の魔法を使ってみるね」
「頼むよ、アイリーン」
アイリーンが宙を漂う炎に魔力を注ぐと、炎はこの場所で命を落としたサキュバスの魂だという事が分かった。アイリーンの説明によると、肉体が死んでも魂が傍にあるのは、魂が現世に縛り付けられているからなのだとか……。
俺はブラックウルフの牙を回収し、ブラックウルフを解体して肉を取った。今晩の夕食にするためだ。陣形は俺とルナが前衛としてキングを守り、アイリーンが遊撃として俺達をサポートする事になった。ゲルストナーが一人抜けるだけで、パーティーの防御力が大きく落ちた。改めて彼の強さを実感する。
魔物の気配を辿りながら、薄暗いジメジメした地下の通路を進む。地下にはいくつもの部屋があり、拷問に使う様な器具が置かれた部屋を見つけた。血の臭いと怨霊のような魔力を感じる。きっとここで人が殺されたのだろう。
拷問道具を見てみると、大ぶりの斧が立て掛けてあった。手に触れてギルドカードでアイテム名を確認する。武器の名称は処刑人の斧。只ならぬ力を感じたので、俺はマジックバッグに仕舞って持ち帰る事にした。やはりこの鞄は便利だ。鞄の口を広げれば、かなり大きな物でも仕舞う事が出来るからな。
更に通路を進むと、教会のような広間を見つけた。ここが最深部だろうか。白い石畳が敷かれている美しい空間には、祭壇が設置されており、祭壇の上には白骨化した死体が横たわっている。
教会に足を踏み入れた瞬間、爆発的な咆哮が轟いた。全身に刺すような強烈な魔力と、空間を震えさせる悍ましい魔物の声が響くと、俺の体は固まった。強さの次元が違う……俺が戦いを挑んで良い相手ではない。本能が逃げ出せと言っている。
教会の奥からはブラックウルフを二倍程大きくした様な人型の魔物が姿を現した。幻獣のブラックライカンだろう……長く伸びた爪は大勢の人間の血を吸っている様だ。まるでサーペントのレイピアの様な強い魔力を感じる。
ここで逃げ出す訳にはいかない。俺は最高の冒険者になると誓って村を出たんだ。俺は震える手でグラディウスを握り締め、戦いを挑んだ……。
グラディウスに魔力を込めて水平切りを放った。ブラックライカンは後退して俺の剣を回避すると、右手の爪に黒い魔力を纏わせて振り下ろした。瞬間、アイリーンの槍がブラックライカン右手を捕らえた。
アイリーンは敵の攻撃に合わせて精確に突きを放ち、ブラックライカンの手の甲を貫くと、怒り狂ったブラックライカンがアイリーンを標的に定めた。ルナは翼を開いて上空を舞い、魔力の刃を雨の様に降らせている。ルナの攻撃はブラックライカンの体に傷を付けているが、致命傷には至らない様だ。
キングは魔法のタイミングを計りながら後方で待機している。ブラックライカンはアイリーンに対して爪の一撃を放った。まずい……このままではアイリーンの回避が間に合わないだろう。俺はアイリーンの目の前に土の壁を作り上げた。
ブラックライカンの一撃が壁を砕くと、攻撃を阻まれたからだろうか、再び爆発的な咆哮を上げて俺を睨みつけた。ルナはレイピアを仕舞い、魔力で作り上げた弓を構えると、風の魔力を込めた矢を放った。ルナの魔法の矢はブラックライカンの肩を貫くと、ブラックライカンは大きく跳躍し、宙を舞うルナの体を掴んだ。
ルナは抵抗する事も出来ず、ブラックライカンの巨大な手の中で意識を失った。その時、背後から強烈な魔力を感じた。急いで振り返ると、キングが両手から巨大な炎を放出させた。周囲を燃やし尽くす程の爆発的な魔法は、ブラックライカンの右足を捕らえると、瞬く間に足を消滅させた。今が攻撃のチャンスだろう。俺は体内から魔力を掻き集め、地面に右手を付いて地面に注いだ。
ブラックライカンの足元から無数の土の槍が伸び、槍はブラックライカンを串刺しにした。これが俺の最高の攻撃魔法、アイアンメイデンだ。ブラックライカンは大量の血を流しながらルナを離すと、アイリーンが跳躍してブラックライカンの頭に飛び乗った。アイリーンが槍を脳天に突き立てると、ブラックライカンは息絶えた……。
地面に倒れるルナを起こし、ヒールポーションを飲ませると、ルナの傷はたちまち回復した。ブラックライカンを目の当たりにした時は、俺では到底敵うはずが無いと思ったが、仲間の力を借りてどうにか敵を討つ事が出来た。
祭壇からは俺を呼ぶ様に魔力が流れてくる。ブラックライカンが死んだ瞬間から、祭壇の魔力を強く感じる。祭壇の上には白骨化した死体があり、死体の近くには白い炎の様な物が漂っていた。
「何か浮いているね。これはなんだろう」
「鑑定の魔法を使ってみるね」
「頼むよ、アイリーン」
アイリーンが宙を漂う炎に魔力を注ぐと、炎はこの場所で命を落としたサキュバスの魂だという事が分かった。アイリーンの説明によると、肉体が死んでも魂が傍にあるのは、魂が現世に縛り付けられているからなのだとか……。
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