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第一章「冒険者編」
第二十六話「騎士団の防衛力」
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俺は檻の鍵を破壊して娘達を救出した。十二人もの村娘が囚われており、中には獣人の姿もあった。猫と人間の中間種だろうか。茶色のふわふわした尻尾が生えており、頭部からは形の整った猫耳が生えている。年齢は十八歳程だろうか。
「助けてくれてありがとうなの」
「え? なの?」
「あ……これはあたしが生まれた地方の方言なの」
「あなたもアシュトバーン村の方ですか?」
「違うの。旅の途中で山賊達に襲われて閉じ込められていたの」
「そうだったんですね。皆さん、直ぐに村に戻りましょう」
俺達は娘達を連れて馬車に戻った。盗賊から奴隷を買おうとしていた奴隷商が村を襲う可能性もある。防衛手段を持たない村をどうにか守る手段は無いだろうか。やはり召喚獣に村を守って貰うのが良いだろう。
俺とルナは馬車の御者台に座り、アシュトバーン村に向けて馬車を走らせた。馬車の後方ではゲルストナーが娘達の体調を確認している。栄養失調になっている娘に対して、栄養価の高い食べ物を食べさせている。流石、熟練の育成士だ。ゲルストナー曰く、「魔物の育成も人間も育成も、技術的には大きな違いは無い」のだとか。
暫く馬車を走らせるとアシュトバーン村に到着した。馬車を村の中心まで走らせると、囚われていた村娘達が飛び出した。涙を流しながら家族と再開している。その様子を見ている猫耳の女は、一人で寂しそうに荷台に残っている。彼女の話によると、旅の途中で仲間を殺され、自分だけが盗賊に囚われたらしい。
村人達は安堵の表情を浮かべているが、安心するのはまだ早い。盗賊の取引相手である奴隷商がこの村を襲う可能性があるからだ。早急の村の防衛力を高めなければならない。俺は外部からの侵入を防ぐために、硬い土で城壁を作り、村を囲った。
見張り台を村の四隅に建て、スケルトンの頭骨を使って十体のスケルトンを新たに召喚した。盗賊達が使用していた武器をスケルトンに配り、四体は見張り台に、残りの六体は村を巡回して警備を始めた。ホワイトウルフ達も村の警護に加わり、村の防衛力は瞬く間に向上した。
それから俺は村人達から頼まれて、アシュトバーン村を騎士団の配下に入れる事にした。村の入り口に自分のステータスを記入した表札を立てる。盗賊や奴隷商などに襲われないようにするためだ。
『ボリンガー騎士団・アシュトバーン村拠点』
『管理者:幻魔獣の召喚士 LV85 サシャ・ボリンガー』
『村の平和を脅かす行為は、騎士団に対して宣戦布告をする行為とみなす』
「皆様。今日から我が騎士団がアシュトバーン村をお守りします。報酬は頂きません。盗賊や奴隷商から皆さんをお守りするのも、冒険者としての役目ですから」
「ありがとうございます……冒険者様」
「皆様のお役に立てるなら光栄です」
これで村の防衛は完璧だろう。高レベルの盗賊が村を襲撃すれば、ホワイトウルフやスケルトンでは対応出来ないだろうが、その時はフィッツ村のミノタウロスに頼み、アシュトバーン村の防衛に加わってもらう。わざわざ高レベルの召喚士が守る村を襲う者が居るとは思わないが……。
「サシャ、良い事したね」
「ああ。これも冒険者としての務め。ルナにも色々助けてもらったね。これからも俺達を支えてくれるかな」
「当たり前だよ。サシャは私が守る!」
「ありがとう。早くルナに追いつけるように努力するよ」
ゲルストナーもキングも満足そうな表情を浮かべている。俺達は戦闘の疲れもあって、今日は村に泊まる事にした。村の村長はどうしてもお礼をしたいと言い、村長の家でお祝いの宴が開かれた。
村長が乾杯の音頭を取ると、俺は村の料理と酒に舌鼓を打った。村人達は娘達が戻ってきたからだろうか、皆幸せそうに宴を楽しんでいる。会場の隅で一人だけ寂しそうに座る猫耳の女が居る。視線が合うと、彼女は俺の隣の席に座った。
「召喚士様。本当に感謝しているの。あたしはアイリーン・チェンバーズ」
「俺はサシャ・ボリンガーです。宜しくお願いします」
「敬語は使わなくても良いの」
「わかったよ。アイリーンって呼んでもいいかな?」
「勿論。あたしもサシャって呼ばせて貰うの」
アイリーンは握手を求めると、俺は彼女の手を握った。キングの様な優しい魔力を感じる。この魔力の強さはゲルストナーと同等、もしくはそれ以上なのではないだろうか。
「盗賊に捕まった時は、人生なんて良い事も何もないって思ったけど、サシャが助けてくれたから前向きに生きられそうなの」
「間に合ってよかったよ。アイリーンはこれからどうするんだい?」
「あたしは旅をしていたけど、仲間も殺されたし……目的もないの」
ルナは退屈そうに俺の膝の上に座ると、アイリーンがルナを見つめた。鎧の中に翼を仕舞っているが、ルナが人間ではない事に気がついたのだろう。ルナの翼は折りたためば鎧の中に隠す事も出来る。基本的には翼を人前で開く事はない。
「魔物……? 人間ではない気がするの」
「そうだよ。幻魔獣、ハーピー。名前はルナ」
「ルナはハーピーなの? どうりで強い魔力を感じると思った。だけど幻魔獣が仲間になるなんて信じられないの」
「そうだね。いつも強い仲間達に助けられて生きているよ」
アイリーンがルナを見つめると、ルナはアイリーンの頭を撫でた。ルナから他人に触れるなんて珍しい。ルナはアイリーンを抱きしめると、アイリーンは涙を流した。仲間を殺されて盗賊に誘拐されるなんて、随分大変な経験をしてきたんだな……。
「助けてくれてありがとうなの」
「え? なの?」
「あ……これはあたしが生まれた地方の方言なの」
「あなたもアシュトバーン村の方ですか?」
「違うの。旅の途中で山賊達に襲われて閉じ込められていたの」
「そうだったんですね。皆さん、直ぐに村に戻りましょう」
俺達は娘達を連れて馬車に戻った。盗賊から奴隷を買おうとしていた奴隷商が村を襲う可能性もある。防衛手段を持たない村をどうにか守る手段は無いだろうか。やはり召喚獣に村を守って貰うのが良いだろう。
俺とルナは馬車の御者台に座り、アシュトバーン村に向けて馬車を走らせた。馬車の後方ではゲルストナーが娘達の体調を確認している。栄養失調になっている娘に対して、栄養価の高い食べ物を食べさせている。流石、熟練の育成士だ。ゲルストナー曰く、「魔物の育成も人間も育成も、技術的には大きな違いは無い」のだとか。
暫く馬車を走らせるとアシュトバーン村に到着した。馬車を村の中心まで走らせると、囚われていた村娘達が飛び出した。涙を流しながら家族と再開している。その様子を見ている猫耳の女は、一人で寂しそうに荷台に残っている。彼女の話によると、旅の途中で仲間を殺され、自分だけが盗賊に囚われたらしい。
村人達は安堵の表情を浮かべているが、安心するのはまだ早い。盗賊の取引相手である奴隷商がこの村を襲う可能性があるからだ。早急の村の防衛力を高めなければならない。俺は外部からの侵入を防ぐために、硬い土で城壁を作り、村を囲った。
見張り台を村の四隅に建て、スケルトンの頭骨を使って十体のスケルトンを新たに召喚した。盗賊達が使用していた武器をスケルトンに配り、四体は見張り台に、残りの六体は村を巡回して警備を始めた。ホワイトウルフ達も村の警護に加わり、村の防衛力は瞬く間に向上した。
それから俺は村人達から頼まれて、アシュトバーン村を騎士団の配下に入れる事にした。村の入り口に自分のステータスを記入した表札を立てる。盗賊や奴隷商などに襲われないようにするためだ。
『ボリンガー騎士団・アシュトバーン村拠点』
『管理者:幻魔獣の召喚士 LV85 サシャ・ボリンガー』
『村の平和を脅かす行為は、騎士団に対して宣戦布告をする行為とみなす』
「皆様。今日から我が騎士団がアシュトバーン村をお守りします。報酬は頂きません。盗賊や奴隷商から皆さんをお守りするのも、冒険者としての役目ですから」
「ありがとうございます……冒険者様」
「皆様のお役に立てるなら光栄です」
これで村の防衛は完璧だろう。高レベルの盗賊が村を襲撃すれば、ホワイトウルフやスケルトンでは対応出来ないだろうが、その時はフィッツ村のミノタウロスに頼み、アシュトバーン村の防衛に加わってもらう。わざわざ高レベルの召喚士が守る村を襲う者が居るとは思わないが……。
「サシャ、良い事したね」
「ああ。これも冒険者としての務め。ルナにも色々助けてもらったね。これからも俺達を支えてくれるかな」
「当たり前だよ。サシャは私が守る!」
「ありがとう。早くルナに追いつけるように努力するよ」
ゲルストナーもキングも満足そうな表情を浮かべている。俺達は戦闘の疲れもあって、今日は村に泊まる事にした。村の村長はどうしてもお礼をしたいと言い、村長の家でお祝いの宴が開かれた。
村長が乾杯の音頭を取ると、俺は村の料理と酒に舌鼓を打った。村人達は娘達が戻ってきたからだろうか、皆幸せそうに宴を楽しんでいる。会場の隅で一人だけ寂しそうに座る猫耳の女が居る。視線が合うと、彼女は俺の隣の席に座った。
「召喚士様。本当に感謝しているの。あたしはアイリーン・チェンバーズ」
「俺はサシャ・ボリンガーです。宜しくお願いします」
「敬語は使わなくても良いの」
「わかったよ。アイリーンって呼んでもいいかな?」
「勿論。あたしもサシャって呼ばせて貰うの」
アイリーンは握手を求めると、俺は彼女の手を握った。キングの様な優しい魔力を感じる。この魔力の強さはゲルストナーと同等、もしくはそれ以上なのではないだろうか。
「盗賊に捕まった時は、人生なんて良い事も何もないって思ったけど、サシャが助けてくれたから前向きに生きられそうなの」
「間に合ってよかったよ。アイリーンはこれからどうするんだい?」
「あたしは旅をしていたけど、仲間も殺されたし……目的もないの」
ルナは退屈そうに俺の膝の上に座ると、アイリーンがルナを見つめた。鎧の中に翼を仕舞っているが、ルナが人間ではない事に気がついたのだろう。ルナの翼は折りたためば鎧の中に隠す事も出来る。基本的には翼を人前で開く事はない。
「魔物……? 人間ではない気がするの」
「そうだよ。幻魔獣、ハーピー。名前はルナ」
「ルナはハーピーなの? どうりで強い魔力を感じると思った。だけど幻魔獣が仲間になるなんて信じられないの」
「そうだね。いつも強い仲間達に助けられて生きているよ」
アイリーンがルナを見つめると、ルナはアイリーンの頭を撫でた。ルナから他人に触れるなんて珍しい。ルナはアイリーンを抱きしめると、アイリーンは涙を流した。仲間を殺されて盗賊に誘拐されるなんて、随分大変な経験をしてきたんだな……。
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