召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光

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第一章「冒険者編」

第五話「狩場を求めて」

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 冒険者ギルドの建物と隣接するように建つ木造の宿に入る。どうやらこの建物は冒険者ギルドが経営しているらしい。受付の男性に宿代の確認をすると、一泊10ゴールドで宿泊出来る事が分かった。朝食も料金に含まれるらしく、追加で4ゴールド支払えば夕食も食べられるのだとか。

 まずは一泊だけ泊まる事にした。どうやら宿の受付でもギルドカードが必要らしく、身分を証明した者だけが宿泊する事が出来るのだとか。カウンターの上に置かれている石版にギルドカードをかざす。すると石版は静かに輝き始め、石版には光の文字で俺のステータスが浮かんだ。

 代金を支払い、鍵を受け取って階段を上がる。部屋は二階の四号室だ。木製の扉を開き、室内に入る。日当たりが良い部屋で、広さは大体四畳程だろうか。少し狭いが、値段が安いのでこれくらいが妥当だろう。天井にはランプが付いており、ランプの中では魔法の炎が楽しそうに揺れている。家具は必要最低限の物だけで、シングルサイズのベッドとテーブルのみだ。

 室内には浴室もある。湯船にはガーゴイルの石像が設置されており、石像に手を触れるだけでお湯が流れ出す。火の魔法と水の魔法が掛かっているのだろう。きっとこの石像はマジックアイテムに違いない。

 剣とガントレットを外し、鞄からパンを取り出した。小腹がすいていたので、パンを一口齧った。キングが俺のパンを見つめていたので、小さく裂いてキングに渡すと、彼は嬉しそうにパンを食べ始めた。

 久しぶりにベッドに横になった。村を出てから北の街道を越え、墓地でキングと出会った。まさか俺が召喚士になるとは思わなかったが、キングとの出会いを大切にしながら、冒険者として生きていこう。それに、実力もないのにレベルだけが高くなってしまった。自分自身のレベルに見合う冒険者にならなければならない。

 だが、冒険の旅に出たのは正解だった。田舎の村で生まれてから、外の世界も知らずに、冒険者になる夢を叶える事も出来なかった。成人を迎えて直ぐに旅に出たのは、俺自身の視野を大きく広げるきっかけになった。墓地でのスケルトンとの戦闘もいい思い出だ。更に強くなるために、剣の腕を磨き、魔法を習得する必要がありそうだ。

 今日は早めに休む事にした。明日からもまた忙しくなるだろう。明日はキングと共に魔物を狩り、お金を稼がなければならないからな……俺はキングの小さな体を抱きしめながら眠りに就いた。


〈翌朝〉

 随分朝早くに目が覚めた。母と共に働いていた時の習慣だ。まずは朝食を食べてから、キングと共に狩りに出る。

「キング。朝ごはんを食べに行こうか」
「ゴハン……?」
「そう。食事だよ。ゴハンを食べないと動けないだろう?」
「ワカッタ……」

 キングはまだこの世界の常識や言葉を知らない様だ。ショートソードを腰に差し、ガントレットを身に付け、鞄を背負ってから部屋を出た。階段を下りて宿の一階に降りる。今は朝の六時だ。宿の一階は食堂兼受付だ。食堂に入ると、宿の主人が朝食を作っていた。

「昨日はよく眠れたかな?」
「はい。ゆっくり休めました」
「今ご飯を作ってるから、好きな席で座って待っていてくれ」
「分かりました」

 俺とキングは食堂の空いてる席に腰を掛けた。食堂には険者ギルドの犬耳のお姉さんが居た。目が合ったので手を振っておく。確か彼女はレベル21のシンディ・ブラフォードだ。しばらくすると宿屋の主人が料理を運んできた。久しぶりにパン以外の食事だ。

 今日のメニューは鶏肉の照り焼きだった。肉をナイフで切り、キングに差し出すと、彼は美味しそうに食べ始めた。俺達が食事をしていると、ギルドのお姉さんが隣の席に座った。

「おはよう、サシャ。今日は狩りに行くつもり?」
「おはようございます。ブラフォードさん! そうですね、今日はキングと共に狩りに行くつもりですよ。だけど、狩場が分からないので、町の周辺を見て回ろうかと思っています」
「それなら……町からほど近い位置に廃坑があるんだけど、どうかな? 私も駆け出しの
冒険者の頃は廃坑で狩りをしていたんだよ。サシャのレベルなら、相手が弱すぎて退屈かもしれないけど」
「いいえ。俺はまだ一度しか魔物と戦った事が無いので。廃坑というのはどんな魔物が湧くんですか?」
「アンデッド系の魔物を中心に、スライムやゴブリンなんかも出るわね。低レベルの魔物の巣になっているの。廃坑の入り口は、町の北口から出てすぐの所にあるわ」
「色々教えて下さってありがとうございます! ブラフォードさん!」
「どういたしまして。それから、私の事はシンディって呼んでくれるかな……?」

 シンディさんは茶色のモフモフした耳を恥ずかしそうに垂らしながら俺を見つめている。革製の鎧を装備しているが、防具の上からでも彼女の豊かな体つきが分かる。やはり人間とは違う生き物なのだろうか。尻尾を楽しそうに振りながら、彼女は俺の手を握った。

「シンディさん。それでは、俺達は廃坑で狩りをする事にしますね。また冒険者ギルドでお会いしましょう」
「ええ。いってらっしゃ」

 シンディさんに挨拶をすると、宿の主人に朝食のお礼を述べてから宿を出た。朝の町は早朝だと言うのに活気があり、冒険者達が旅の準備や防具の点検等をしている。行商人の数も多く、荷物の搬入や売買を行っている。朝から随分活気が良い町なんだな。

 フィッツ町の北口を出て廃坑に向う。暫く森を進むと廃坑の入り口が見えてきた。廃坑に勤務していた人が暮らしていた住宅だろうか。木造のボロ屋が四軒建っている。ボロ屋の中は暗くて見えないが、目ぼしいアイテムは無いだろう。更に奥に進むと廃坑の入り口を見つけた……。
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