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24 バレたので、告白!(2)
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*
同時刻。裏庭での言い争いを偶然目撃した生徒が、クリストファーの元に急いでやってきた。
「殿下! 大変です! ステラちゃんが!」
その男子生徒の話によると、リディアがステラという生徒を裏庭でいじめているとのこと。そんな話を信じるわけにはいかないが、王太子として確認しないわけにもいかず、クリストファーは裏庭に向かった。
すると、二人を遠巻きに見守る人だかりが数名。王太子の登場に気づいた者が避けて道を開けていく。その先には何やら言い合いをするリディアとステラがいた。
「何言ってるの? あのエンディングが最高なんじゃない!」
「そうですか? それより最初に笑ってくれるシーンがいいと思うけど」
「た、確かにそのシーンも素晴らしいわ」
「でしょでしょ? ちなみにもうクリアしましたからね」
「えー!? 見逃してしまったわ! 見たかった……」
好きな小説の話でもしているのか、二人で会話を楽しく繰り広げているように見える。時折意見の相違があって言い返したりするので、喧嘩だと間違えられたのだろう。
「リディ」
「「!!」」
声をかけた途端、二人が驚いてこちらを同時に向いた。盛り上がっていたのに止めてしまって申し訳ないが、野次馬に見られていたことにも気づいたようだ。リディアが少し羞恥の表情になる。クリストファーはその表情も可愛いと思った。
「リディにも仲の良い友人が出来たんだね。よかった」
「は、はい」
ステラが口を開きそうになったが、無言の笑顔で制圧する。余計なことを言われても困る。
「っ」
「あ、あの、クリス様?」
「リディ、私のことも構ってくれないと困るよ」
「え……? あ、あの」
「今日の放課後は王宮に招待しよう。久々に母上もリディに会いたがっていたからね」
「はい」
クリストファーの登場に戸惑っていたリディアも、王妃の話題を出すと、キリッと王太子の婚約者としての振る舞いに戻る。この切り替えがとても頑張っていて可愛らしい。
「さぁそろそろ午後の授業が始まるよ。一緒に行こう」
「は、はい。で、では、ステラさん、またお話しいたしましょう」
「はい。リディア様。よろしくお願いします」
ステラのことはなんとなく苦手だが、リディアの大切な友人だ。クリストファーは表立って邪魔するのは難しそうだなと心の中で今後の作戦を立てながら、リディアをエスコートしてその場を去った。
「めっちゃ牽制してきた。悪役令嬢、王太子様を攻略済みね……」
ステラがつぶやいた一言は、誰の耳にも届くことはなかった。
*
私がステラと打ち合わせをする時間は、意外にも苦労した。
ランチの時間は、クリス様が必ず一緒に過ごしたいと譲らないからだ。
以前ステラをランチに連れていった時、お兄様とキース様も含めて三人で嫌な顔をされてしまった。ステラも無理強いして好感度を下げたくないと、あれ以来生徒会室には寄り付かないのだ。
そうなると早朝か放課後だが、登下校をお兄様と共にしているし、最近クリス様もわざわざ公爵邸に迎えにきてくださるので、教室に入るまでは鉄壁のガード。王太子妃教育も放課後に詰まっていたりして、全然おしゃべりできなかった。
そうして私たちは同級生という設定を有効活用して、授業は常に一緒に受け、移動時間も打ち合わせの時間にすることにした。ステラはステラで攻略イベントをこなしたり、自分のレベル上げをしなければいけないので忙しいらしい。
「それにしてもクリス様、リディア様に執着しすぎじゃないですか?」
「そ、そうかしら?」
「だって友達とランチもしちゃダメとか、束縛しすぎ!」
「確かにそうかもしれないわね」
ちなみに、それがちょっと嬉しい私は、かなりおかしいのかもしれない。
「でも、王太子ルートも素敵なスチルがありましたよね! ほら、結婚式の」
「え、ええ」
エンディングの後、焼け残った小さな教会で、ヒロインとクリス様が結婚式をするシーンのスチルだ。
陽の光が差し込む教会が神秘的で、そして白いタキシードを着るクリス様が神々しくて。そう、その横には、かわいらしいヒロイン、ステラが立っているスチルだ。
チクリ
胸の痛みに戸惑う。ダメダメ、妬いちゃダメ。心のモヤモヤは気付かないフリをして、ステラとの会話を続ける。
「クリス様、本当完璧だし素敵ですよね。アラン様ルートにしようかと思っていたけど、迷うなぁ」
「今はどこまで進んでいるの?」
「まだ共通ルートです。今度の文化祭で分岐点になるの」
このゲーム、自分のレベル上げもしっかりしなくてはいけないせいか、共通ルート部分が長い。共通ルートを進めている間に、自分のレベルを上げ、各攻略対象の好感度を上げておくのだ。そして文化祭で各ルートに分岐する。
「だ、誰のルートに、進むの?」
「アラン様……か、クリス様かなぁ」
ぎくりとした。
クリス様、この間裏庭でステラと話した時、にっこりと笑っていたわ。他の女子生徒には全く興味なんて示さないのに。もしかしたらもう、ヒロインへの好感度は上がっているのかもしれない。
「だってキース様は私のこと邪険に扱うし、ディーン様なんて女性に対して恐怖心抱いちゃってるじゃないですか!? ガード固すぎて心折れますよ!」
「確かに。何故かしらね」
「絶対リディア様が色々変えたせいですよね」
「そ、そうかしら?」
むぅと膨れてみせるステラも可愛い。私が色々変えてしまったせいで、イベントが起こらなかったり攻略対象者の性格が違ったり、ゲーム通りじゃないことばかりのようだ。申し訳ない。が、頑張ってもらいたい。
「あ、そろそろ行かなくちゃ! またお話しましょう」
「が、頑張って」
ステラを見送りながら、彼女の言葉を思い出す。
『アラン様……か、クリス様かなぁ』
応援するといった手前、クリス様にはしないでなんていえない。でも、クリス様が他の誰かのものになると思うと、胸が苦しい。
裏庭で笑い合う二人を見てから、ずっと苦しい。だけど私はこの気持ちに気付かないフリをするしかなかった。
同時刻。裏庭での言い争いを偶然目撃した生徒が、クリストファーの元に急いでやってきた。
「殿下! 大変です! ステラちゃんが!」
その男子生徒の話によると、リディアがステラという生徒を裏庭でいじめているとのこと。そんな話を信じるわけにはいかないが、王太子として確認しないわけにもいかず、クリストファーは裏庭に向かった。
すると、二人を遠巻きに見守る人だかりが数名。王太子の登場に気づいた者が避けて道を開けていく。その先には何やら言い合いをするリディアとステラがいた。
「何言ってるの? あのエンディングが最高なんじゃない!」
「そうですか? それより最初に笑ってくれるシーンがいいと思うけど」
「た、確かにそのシーンも素晴らしいわ」
「でしょでしょ? ちなみにもうクリアしましたからね」
「えー!? 見逃してしまったわ! 見たかった……」
好きな小説の話でもしているのか、二人で会話を楽しく繰り広げているように見える。時折意見の相違があって言い返したりするので、喧嘩だと間違えられたのだろう。
「リディ」
「「!!」」
声をかけた途端、二人が驚いてこちらを同時に向いた。盛り上がっていたのに止めてしまって申し訳ないが、野次馬に見られていたことにも気づいたようだ。リディアが少し羞恥の表情になる。クリストファーはその表情も可愛いと思った。
「リディにも仲の良い友人が出来たんだね。よかった」
「は、はい」
ステラが口を開きそうになったが、無言の笑顔で制圧する。余計なことを言われても困る。
「っ」
「あ、あの、クリス様?」
「リディ、私のことも構ってくれないと困るよ」
「え……? あ、あの」
「今日の放課後は王宮に招待しよう。久々に母上もリディに会いたがっていたからね」
「はい」
クリストファーの登場に戸惑っていたリディアも、王妃の話題を出すと、キリッと王太子の婚約者としての振る舞いに戻る。この切り替えがとても頑張っていて可愛らしい。
「さぁそろそろ午後の授業が始まるよ。一緒に行こう」
「は、はい。で、では、ステラさん、またお話しいたしましょう」
「はい。リディア様。よろしくお願いします」
ステラのことはなんとなく苦手だが、リディアの大切な友人だ。クリストファーは表立って邪魔するのは難しそうだなと心の中で今後の作戦を立てながら、リディアをエスコートしてその場を去った。
「めっちゃ牽制してきた。悪役令嬢、王太子様を攻略済みね……」
ステラがつぶやいた一言は、誰の耳にも届くことはなかった。
*
私がステラと打ち合わせをする時間は、意外にも苦労した。
ランチの時間は、クリス様が必ず一緒に過ごしたいと譲らないからだ。
以前ステラをランチに連れていった時、お兄様とキース様も含めて三人で嫌な顔をされてしまった。ステラも無理強いして好感度を下げたくないと、あれ以来生徒会室には寄り付かないのだ。
そうなると早朝か放課後だが、登下校をお兄様と共にしているし、最近クリス様もわざわざ公爵邸に迎えにきてくださるので、教室に入るまでは鉄壁のガード。王太子妃教育も放課後に詰まっていたりして、全然おしゃべりできなかった。
そうして私たちは同級生という設定を有効活用して、授業は常に一緒に受け、移動時間も打ち合わせの時間にすることにした。ステラはステラで攻略イベントをこなしたり、自分のレベル上げをしなければいけないので忙しいらしい。
「それにしてもクリス様、リディア様に執着しすぎじゃないですか?」
「そ、そうかしら?」
「だって友達とランチもしちゃダメとか、束縛しすぎ!」
「確かにそうかもしれないわね」
ちなみに、それがちょっと嬉しい私は、かなりおかしいのかもしれない。
「でも、王太子ルートも素敵なスチルがありましたよね! ほら、結婚式の」
「え、ええ」
エンディングの後、焼け残った小さな教会で、ヒロインとクリス様が結婚式をするシーンのスチルだ。
陽の光が差し込む教会が神秘的で、そして白いタキシードを着るクリス様が神々しくて。そう、その横には、かわいらしいヒロイン、ステラが立っているスチルだ。
チクリ
胸の痛みに戸惑う。ダメダメ、妬いちゃダメ。心のモヤモヤは気付かないフリをして、ステラとの会話を続ける。
「クリス様、本当完璧だし素敵ですよね。アラン様ルートにしようかと思っていたけど、迷うなぁ」
「今はどこまで進んでいるの?」
「まだ共通ルートです。今度の文化祭で分岐点になるの」
このゲーム、自分のレベル上げもしっかりしなくてはいけないせいか、共通ルート部分が長い。共通ルートを進めている間に、自分のレベルを上げ、各攻略対象の好感度を上げておくのだ。そして文化祭で各ルートに分岐する。
「だ、誰のルートに、進むの?」
「アラン様……か、クリス様かなぁ」
ぎくりとした。
クリス様、この間裏庭でステラと話した時、にっこりと笑っていたわ。他の女子生徒には全く興味なんて示さないのに。もしかしたらもう、ヒロインへの好感度は上がっているのかもしれない。
「だってキース様は私のこと邪険に扱うし、ディーン様なんて女性に対して恐怖心抱いちゃってるじゃないですか!? ガード固すぎて心折れますよ!」
「確かに。何故かしらね」
「絶対リディア様が色々変えたせいですよね」
「そ、そうかしら?」
むぅと膨れてみせるステラも可愛い。私が色々変えてしまったせいで、イベントが起こらなかったり攻略対象者の性格が違ったり、ゲーム通りじゃないことばかりのようだ。申し訳ない。が、頑張ってもらいたい。
「あ、そろそろ行かなくちゃ! またお話しましょう」
「が、頑張って」
ステラを見送りながら、彼女の言葉を思い出す。
『アラン様……か、クリス様かなぁ』
応援するといった手前、クリス様にはしないでなんていえない。でも、クリス様が他の誰かのものになると思うと、胸が苦しい。
裏庭で笑い合う二人を見てから、ずっと苦しい。だけど私はこの気持ちに気付かないフリをするしかなかった。
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