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18 予想外れの、独占欲!(4)
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モヤモヤは汗と共に流し、スッキリ切り替えた私は、翌日中庭のベンチで一人、作戦を練っていた。もちろん友達をゲットするための作戦である。
私のように筋トレや剣術に興味がある令嬢を見つけるのは難しいだろう。だが、アラン様のファンならば簡単に見つかるはずだ。
(アラン様とヒロインの恋を見守る会! これだわ!)
ヒロインが誰を攻略したいのかは分からない。だが、アラン様との恋路を徹底的に応援してあげれば、上手くいくのではないかと考えたのだ。そして友達とキャッキャしながら見守り応援する! 我ながら名案である。
どのようにアラン様のファンを探そうか考えていたところに、思わぬ人物がやってきた。
「あ、あの!」
「!?」
透き通るような銀の長い髪をなびかせ、陶器のように白い肌に大きな紫の瞳はとても可愛らしい。さくらんぼのような唇を震わせながら、緊張した面持ちで話しかけてきたのは、見間違うことのない、ステラ・オールブライトだった。
(ヒロイン!!!!!)
「急に声をかけてしまってすみません。私、ずっと貴女とお話ししてみたくて……失礼を許してください!」
「え、ええと」
え!? こんなイベントあったっけ? 私、こんな可愛い子をいじめる予定なの? 小動物みたいでめちゃくちゃ可愛いんですけど! 私もこんな容姿で生まれ変わりたかった! 可愛い! 制服もとっても似合ってる。この子の可愛さを引き立てる為の可愛い制服なんだって痛感しちゃうわ……。
「あの……?」
「か、可愛い……」
「え?」
「いえ! あ、あの~、それで何かわたくしにご用かしら?」
なんとか取り繕ってみる。悪役令嬢っぽく振る舞えているかしら。いや、死にたくないなら、彼女には優しくしなくちゃいけないんだっけ。突然のイベントに驚きが大きく、動揺してしまう。
「私、ステラ・オールブライトっていいます! クリストファー殿下の婚約者のリディア様……ですよね?」
「ええ、そうよ」
身分が上の私から名乗ってもないのに名乗るなんて貴族の世界では御法度だ。その上、私がクリス様の婚約者だから話しかけているかのような話ぶりに、思わずイラッとする。
(出会った瞬間からこの子にイラつくのは、シナリオの強制力かしら)
「私、入学してからクリストファー殿下とまだお会いしたことがなくて……。どんなお方なのか知りたいなって」
「!?」
それってつまり、ヒロインはクリス様を狙っているってこと? クリス様ルートに行きたいの? でも入学式からもう随分日にちが経っているのに、まだ出会えてもいないなんて。確か、入学式のオープニングで出会えるはずだけど、私が色々変えちゃったせいかしら。
ともかく転生者とはいえ公爵令嬢。しっかりと淑女モードで回答する。
「クリス様もこの学園に通われていますから、いつかお会いできると思いますわ。生徒の代表として入学式でもお話しされていましたし、ご立派な勇姿を私達生徒が見れる機会はこれからもあるかと……」
「うーん、そういうことじゃないんですよね。仲良くなりたくって」
(はぁ!? 私という婚約者がいるのに仲良くなりたいってどういうことよ!)
そう思わず反論したくなったが、そんなことをこんな人目のつく場所で言ったら大変だ。あっという間に、私が平民の(超可愛い)生徒をいじめていると噂になってしまう。危ない危ない。お母様の淑女教育の賜物で、脳内会議の模様も全く顔に出さず、私はにっこりと笑った。
「何故、仲良くなりたいんですの?」
「どうしてって……。えーっと、色々な方々とお知り合いになることは、素敵なことかなって、思って」
ヒロインとはいえ平民が王族と知り合いたいだなんて! なんて大胆な方なのかしら。
いや、そういうシナリオの世界だったわ。アラン様はもちろん、お兄様やキース様とのイベントはこなしているのかしら。ヒロインには是非ともアラン様を攻略してもらいたいのに!
(……そうだわ!)
「ステラさん、わたくし、とっても良い案を思い付きましたの」
悪役令嬢である私は、淑女らしく微笑んだ。
モヤモヤは汗と共に流し、スッキリ切り替えた私は、翌日中庭のベンチで一人、作戦を練っていた。もちろん友達をゲットするための作戦である。
私のように筋トレや剣術に興味がある令嬢を見つけるのは難しいだろう。だが、アラン様のファンならば簡単に見つかるはずだ。
(アラン様とヒロインの恋を見守る会! これだわ!)
ヒロインが誰を攻略したいのかは分からない。だが、アラン様との恋路を徹底的に応援してあげれば、上手くいくのではないかと考えたのだ。そして友達とキャッキャしながら見守り応援する! 我ながら名案である。
どのようにアラン様のファンを探そうか考えていたところに、思わぬ人物がやってきた。
「あ、あの!」
「!?」
透き通るような銀の長い髪をなびかせ、陶器のように白い肌に大きな紫の瞳はとても可愛らしい。さくらんぼのような唇を震わせながら、緊張した面持ちで話しかけてきたのは、見間違うことのない、ステラ・オールブライトだった。
(ヒロイン!!!!!)
「急に声をかけてしまってすみません。私、ずっと貴女とお話ししてみたくて……失礼を許してください!」
「え、ええと」
え!? こんなイベントあったっけ? 私、こんな可愛い子をいじめる予定なの? 小動物みたいでめちゃくちゃ可愛いんですけど! 私もこんな容姿で生まれ変わりたかった! 可愛い! 制服もとっても似合ってる。この子の可愛さを引き立てる為の可愛い制服なんだって痛感しちゃうわ……。
「あの……?」
「か、可愛い……」
「え?」
「いえ! あ、あの~、それで何かわたくしにご用かしら?」
なんとか取り繕ってみる。悪役令嬢っぽく振る舞えているかしら。いや、死にたくないなら、彼女には優しくしなくちゃいけないんだっけ。突然のイベントに驚きが大きく、動揺してしまう。
「私、ステラ・オールブライトっていいます! クリストファー殿下の婚約者のリディア様……ですよね?」
「ええ、そうよ」
身分が上の私から名乗ってもないのに名乗るなんて貴族の世界では御法度だ。その上、私がクリス様の婚約者だから話しかけているかのような話ぶりに、思わずイラッとする。
(出会った瞬間からこの子にイラつくのは、シナリオの強制力かしら)
「私、入学してからクリストファー殿下とまだお会いしたことがなくて……。どんなお方なのか知りたいなって」
「!?」
それってつまり、ヒロインはクリス様を狙っているってこと? クリス様ルートに行きたいの? でも入学式からもう随分日にちが経っているのに、まだ出会えてもいないなんて。確か、入学式のオープニングで出会えるはずだけど、私が色々変えちゃったせいかしら。
ともかく転生者とはいえ公爵令嬢。しっかりと淑女モードで回答する。
「クリス様もこの学園に通われていますから、いつかお会いできると思いますわ。生徒の代表として入学式でもお話しされていましたし、ご立派な勇姿を私達生徒が見れる機会はこれからもあるかと……」
「うーん、そういうことじゃないんですよね。仲良くなりたくって」
(はぁ!? 私という婚約者がいるのに仲良くなりたいってどういうことよ!)
そう思わず反論したくなったが、そんなことをこんな人目のつく場所で言ったら大変だ。あっという間に、私が平民の(超可愛い)生徒をいじめていると噂になってしまう。危ない危ない。お母様の淑女教育の賜物で、脳内会議の模様も全く顔に出さず、私はにっこりと笑った。
「何故、仲良くなりたいんですの?」
「どうしてって……。えーっと、色々な方々とお知り合いになることは、素敵なことかなって、思って」
ヒロインとはいえ平民が王族と知り合いたいだなんて! なんて大胆な方なのかしら。
いや、そういうシナリオの世界だったわ。アラン様はもちろん、お兄様やキース様とのイベントはこなしているのかしら。ヒロインには是非ともアラン様を攻略してもらいたいのに!
(……そうだわ!)
「ステラさん、わたくし、とっても良い案を思い付きましたの」
悪役令嬢である私は、淑女らしく微笑んだ。
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