愛は、ここに。

汐崎えみや

文字の大きさ
上 下
4 / 11

04.破滅への誘惑

しおりを挟む


単刀直入に言う。ムラムラしている。

シィルは梨人に自分のものになれとか言っておきながら、一向に手を出す素振りを見せない。いっそこっちから襲ってやろうかとも考えたが、梨人は襲うより襲われたい。強引に奪われたいのだ。



「リヒトはシィル様のこと好きなの?」

特殊性癖の同類ではなかったがお互いの性癖をオープンにし合い、理解を深め、友情を育んだ梨人とリェイダルは、もはや長年一緒にバカやってきた幼なじみのごとく、互いに遠慮なくタメ口を叩きリェイダルの私室で茶をしばくまでになっていた。

「かわいいとは思うけどぉ~……」

あんまり生態に詳しくない女子高生のノリの雰囲気で恋バナに興じていたところへ欲求不満を暴露した梨人に、リェイダルはテーブルに両肘でほお杖ついたぶりっ子ポーズでニヤニヤしている。

「えぇ~? シィル様がかわいい~?」
「かわいいじゃ~ん。え、かわいくない?」
「そりゃ、あれだ。リヒト、きみ、よっぽど大事にされてるんだねえ~」
「大事に?」
「シィル様は本当にリヒトのこと好きみたい~」
「えぇ~そうかなあ~~?」

梨人が今ひとつ信じられない理由は。

「好きならセックスしたくない?」

これに尽きる。梨人はまともな恋愛経験などないが、好きな相手には自然とセックスを求めるものだと思っている。だって、べつに好きではない相手でも、生理的嫌悪感さえなければ、身体を重ねられるものなのだ。少なくとも梨人はそうだった。それが、好きな相手という、たった一人へと性欲の矢印が集中なんかしてみろ。もう、抱き合わずにはいられないんじゃないの? セックスしたくて仕方ないんじゃないの? 獣のように貪りたいんじゃないの? 知らんけど。

「リヒトは?」

リェイダルはニヤニヤしてるのに、口元には笑みを浮かべているのに、瞳の奥は笑っていない。

「リヒトはシィル様とセックスしたい?」
「したい」

即答だった。なんせムラムラしている。梨人の身体は犯されたくて疼いている。

「それは、シィル様が好きだから?」

それともーーと、リェイダルは人差し指で梨人の鼻先を押した。

「セックスが好きだから?」

梨人は押し潰された自身の鼻先を見ようとして寄り目になったまま、沈黙を保った。


答えは、明白だった。


「リヒトがそう思ってるうちは、シィル様は手ぇ出さないと思うよ」





◇◇◇





梨人がシィルのことを好きじゃないから手を出さない?
シィルは梨人のことが好きらしいのに?
梨人は今までさんざん好きでもない相手とセックスしてきたのに?

「ヤればいいじゃん……」

少なくとも、梨人は抱かれたいと思っているのに。

「…………まあ、相手は……シィルじゃなきゃだめ、なわけじゃ……ないんだけど……」

それがいけないのか?
よく、わからない。

養父に犯されたあの日、梨人は歪んでしまった。
治し方はわからず、むしろ悪化させることばかりしてきた。
もう、手遅れなのかもしれない。
梨人の歪さは、どんなに手を入れても元通り綺麗に丸くはならないのかもしれない。

「鬱だな」

考えれば考えるほど沈んでいく。するとあら不思議。オナニーが捗る。

自室のどでかいベッドに胡座をかいて、ムラムラを解消するため自家発電に励む。でも、今は、一人寂しく右手とよろしくやるより、誰かとセックスがしたい! 犯されたい!

「はい、どーぞー」
「リヒトさーー……まっ!?」

ノックされたので自慰を続けたまま入室を許可すれば、梨人の世話係である赤毛の青年がぎょっとして固まった。みるみる全身真っ赤になる。見開いた目が、ぽろりとこぼれ落ちそうだった。

「なんかあった?」

いつまでも凍りついたまま用件を告げる気配がないので、リェイダルから融通してもらった潤滑油の瓶をしげしげと眺めながら水を向けてやる。

「ーーぁ、あの、そのっ、はい! 伝達事項がひとつ!」

脚をM字に開き、勃起した性器の先端から潤滑油をとろりと垂らして、尻の狭間まで伝い落ちた液体を指先に絡める。

「シィル様がっ、」

中指で、そっと濡れた窄まりを撫でた。梨人自身はさんざんアナルセックスの経験がある。でも、この身体はまだまっさらだ。指一本、入れたことがない。受け入れるための心構えは完璧だ。あとは、身体を躾けるだけ。

「公務でっ、外つ国に! 赴かれっ、て、いた、シィル様がっ、」

くにくに、孔の周りを指先で押して、余計な力が抜けたところでそっと挿し込む。

「んっ」

思わず、声が漏れた。潤滑油を足して、ゆっくりと中指を引く。入り口付近で小刻みに抜き差しして、ぐっと奥へ。

「シィル様がっ、今夜っ、お戻りになられる、とっ!」
「わかっ、た……っん、ぁ、」

喉を反らして、中を探り、感じるポイントを手繰り寄せる。こっちかな? ここ? もうちょい右?

「ぁ……っ!」

見つけた。この身体は、ここが気持ちいい。

「ぁ……んぁ……っ、は……っ、ん……!」

何度も繰り返し刺激して、キケルの身体に快感を覚えさせる。ここ。ここが、あんたの身体のいいところ。俺を悦ばせるための、スイッチ。

指を二本に増やし、押して、捏ねて、引っ掻いて。もう片方の手はだらだら先走りをこぼす性器を性急にしごき立てる。

「あ、ァ……あっ、う……ふ……っ、ん……あぁ……っ」

夢中になって快感を追い、前も後ろも責め立てて、追い込んで追い込んで、ぎゅっと自分の指を食い締めながら勢いよく白濁を吐き出した。荒く息を繰り返して、ゆっくり整えていき、指を抜く。拭くものを探して顔をあげたら、存在を忘れ去っていた赤毛の青年が食い入るように梨人を見つめていた。バキバキに見開いた目は獰猛な光を宿し、両手は自身を抑え込むように固く拳を握って、身体の中心はテントを張ってズボンに染みをつくっている。全身から、梨人に対する劣情をこれでもかというほど滲ませていた。

「は、はは……!」

口角が吊り上がるのが、梨人自身にもよくわかった。

「ヤりたい……?」

赤毛の青年に向かって、大きく開脚する。両手で尻たぶを掴んで、その奥を見せつけるように、左右に開いてみせた。

「犯したいんだろ……?」

視姦されている快感に、ゆるりと性器が勃ちあがってくる。

「おいで」

赤毛の青年が唾を飲み込む音が、大きく響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

週末とろとろ流されせっくす

辻河
BL
・社会人カップルが週末にかこつけて金曜夜からいちゃいちゃとろとろセックスする話 ・愛重めの後輩(廣瀬/ひろせ)×流されやすい先輩(出海/いずみ) ・♡喘ぎ、濁点喘ぎ、淫語、ローター責め、結腸責めの要素が含まれます。

カントな男娼は4人の主人に愛される

白亜依炉
BL
「君に、俺たちの子を孕んでほしい」 高級娼婦の子として生まれたルイ(ルウ)は、 終わりのない男娼としての日々を静かに受け入れ、諦めながら過ごしていた。 「この生活は死ぬまで終わらない」。 そう考えていた彼にある日突然『身請け』の話が舞い込む。 しかも、それは当人の知らぬところで既に成立していて…… 貴族階級の商家跡取り息子4兄弟 × カントボーイな元・男娼 「世継ぎのために子供を産んでほしい」と頼まれ、なかば強制的に始まった4兄弟との同棲。 妊娠させたいだけの冷ややかな契約婚かと思えばなぜか4人とも優しくて…??? そんな感じのカントボーイのお話です。 なんか最近ずっと男性妊娠ものを書いてる気がする。 趣味なのでどうか許してください。楽しんでもらえたらhappy. 娼館や諸々の階級制度についてなどは ふんわりご都合設定で形にしてますので、 いっそファンタジーとして見てもらった方が多分楽しいです。 カントボーイがいる世界だからね。 pixiv・アルファポリスで活動しています。 双方とも随時更新・投稿予定。 ――【注意書き】―― ※この作品は以下の要素が含まれます※ 〇全体を通して〇 カントボーイ・男性妊娠・未成年者との性行為・輪姦 〇話によっては〇 攻め以外との性行為・ ※この作品は現実での如何なる性的搾取をも容認するものではありません。 ※注意書きは随時加筆修正されます。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

大好きな先輩に言いなり催眠♡

すももゆず
BL
R18短編です。ご注意ください。 後輩が先輩に催眠をかけて、言うこと聞かせていろいろえちなことをする話。最終的にハッピーエンドです。 基本♡喘ぎ、たまに濁点喘ぎ。 ※pixivでも公開中。

生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた

キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。 人外✕人間 ♡喘ぎな分、いつもより過激です。 以下注意 ♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり 2024/01/31追記  本作品はキルキのオリジナル小説です。

涙は流さないで

水場奨
BL
仕事をしようとドアを開けたら、婚約者が俺の天敵とイタしておるのですが……! もう俺のことは要らないんだよな?と思っていたのに、なんで追いかけてくるんですか!

イケメン変態王子様が、嫌われ者の好色暴君王にドスケベ雄交尾♡で求婚する話

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
他国の王様に惚れた変態王子様が、嫌われ者でヤリチンのおっさん国王を、ラブハメ雄交尾♡でメス堕ちさせて求婚する話。 ハイテンションで人の話を聞かない変態攻めが、バリタチだった受けを成り行きでメス堕ちさせちゃうアホエロです。 ・体臭描写 ・デブ専描写 ・受けが攻めに顔面騎乗&アナル舐め強要 ・受けのチンカス・包茎描写 ・マジカルチンポ/即堕ち などの要素が含まれます。 ノンケ向けエロでたまに見る、「女にケツ穴舐めさせる竿役」ってメス堕ち適正高いよな……ガチデブ竿役が即オチするとこが見たいな……って思ったので書きました。 攻め…アホでスケベな変態青年。顔だけはイケメン。デブ専、臭いフェチ、ヨゴレ好きのド変態。 受け…バリタチの竿役系ガチデブおっさん。ハゲでデブで強面、体臭もキツい嫌われ者だが、金や権力で言いなりにした相手を無理矢理抱いていた。快楽にクッソ弱い。 試験的に連載形式にしていますが、完結まで執筆済。全7話、毎日18時に予約投稿済。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

処理中です...