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01.あのシドイェスカ様【捧げられし花テオエル】
しおりを挟むテオエルは幼少期から違和感を覚えていた。
なんか、こう……違うなーと、思っていた。変だと感じていた。問題は、変なのは自分か世界かということだ。
シュルテルマイヤー中の孤児院から美しい男児だけが選抜され集められたという神殿孤児院の顔ぶれが、なんか、おかしい。えっその子も美形に含んでいいんですかという顔立ちの子が、当然の顔をして混ざっているのだ。テオエルはどちらかと言うと、その子らの仲間だった。テオエルは絶望するほど不細工ではないが、慢心するほど美形でもない。極々平凡な顔立ちなのだ。
テオエルよりもよほど美しい者がいるのに、何故か神殿孤児院一の美形と持て囃され妬まれる。テオエルが。
なんで?
美醜の基準が全くわからんが??
この世界の美醜の基準は全くもって謎だが、テオエルの美醜感覚がこの世界と合わない理由はわかっている。テオエルが所謂転生者だからだ。地球という星の日本と呼ばれる国で大学生まで生きた記憶がある。その前世での基準に基づき美醜を判断するから、この世界の美醜感覚と合わないのである。
「可哀想にな、テオエル」
孤児仲間達が、同情の眼差しを向けてくる。
少なからずテオエルの美しさを妬んでいた者も、今回ばかりは哀れみを抱くようだ。
「あのシドイェスカ様の生贄に選ばれるなんて」
「ついてないな、テオエル」
「今この中で成人してるの、テオエルだけだもんな」
「同情するよ」
「あと一週間先だったら、ガブルとシスも成人して、選ばれない希望も持てたのにな」
しかし無情にも、今日、今すぐ必要だと言われて、たまたま成人しているのがテオエル一人だった。
「どうしよう……僕、大丈夫かな……っ?」
涙目で顔をぐっしゃぐしゃにして不安がるテオエルに、孤児仲間達は揃って首を振った。
「あのシドイェスカ様だぞ」
「あのシドイェスカ様だもんな」
「そう。あのシドイェスカ様」
「あのシドイェスカ様に限って」
「誰もシドイェスカ様のこと知らないだろ!」
「テオエルだって知らないだろ」
「でも、『あのシドイェスカ様』って有名だしね」
「うう……」
『あのシドイェスカ様』とは。
捧げられた生贄が次々精神異常を来しているという噂で有名な、恐ろしい神人のことである。
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