可憐な少女よりガチムチおじさんが圧倒的に性被害に遭う恐ろしい世界に迷い込んだ

汐崎えみや

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触れてこようとする翡翠色の手を、掴む。

「ちょっと待て。あんた、俺を1日貸し切ったのか? なんで?」

本当に、本気でわけがわからなかった。

「セノ、だく、したい」
「?? 抱けばいいじゃねえか」
「???」

それじゃあとばかりに伸ばされる腕を、再び掴み直して阻止する。

「いや、そうだけど。そうなんだが、違う」

ユルシィもハテナを飛ばしまくっているが、疑問符を並べ立てたいのは瀬野の方である。

「あんな大金払って貸し切りなんかしなくたって、いつでも抱けるだろ」

わざわざ瀬野の個室まで来て、これみよがしに平田が数えていた大金は、ユルシィの財布から出てきたものだったのだ。あんなもの。ユルシィなら、瀬野を抱くためだけにあんな金額を支払わなくたって、よかったのに。

「せい、うる、しごと。セノは、ぷろ。ただではたらく、よくない。しごとには、たいか、はらうもの」
「俺はあんたに抱かれるのを仕事だなんて思わない」
「…………わかる、する」

ユルシィは何故かしゅんと肩を落とした。

「セノ、ていきてき、だかれる、しないとくるしい。だから、私にだく、される、してた。いまは、しごとで、ていきてき、だかれる、してる。くるしくない。私にだかれる、しなくて、いい。私、だく、ひつようない」

そうだ。ユルシィが瀬野を抱く必要はなくなった。

「でも、俺はずっと、ユルシィに抱かれたかったんだよ」

押し込めて、抑圧していた言葉が、口から次々溢れ出す。

「抱きしめられるのも、抱かれるのも、抱かれないのも、苦しい。あんたは、俺が苦しむのを可哀想と思って抱いてくれてたし、俺が苦しまずに済むならと『タナカ』を紹介してくれたけど、ずっと苦しいよ。苦しいまんまだよ。あんたがただ優しくて親切な警察官ってだけで、そこにある俺への好意が、俺と同じじゃないってこと、苦しくて、苦しくて、ずっと、つらいんだ。ーー俺は、ユルシィのことが好きだから……!」

衝動のままにぶちまけた瀬野を、ユルシィは無言で見つめた。紅い光が戸惑うように揺れ動く。

「???」

そして、ユルシィは折れるんじゃないかというほど首を横に曲げた。なんだその反応。返答を待つ時間が、瀬野にはひどく長く感じられた。

「セノ、私、好き?」
「……そうだ」
「私、セノ、好き」
「???」

瀬野は片眉を吊り上げた。すぐには言葉の意味を理解できなかった。しかめっ面で、ユルシィの顔を睨めつけるように見つめる。ユルシィはさらに首を傾げた。

「私、いつ、セノをだく、ただのしんせつ、いう、した?」

瀬野は真顔になった。

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