可憐な少女よりガチムチおじさんが圧倒的に性被害に遭う恐ろしい世界に迷い込んだ

汐崎えみや

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「はぁへえぇえ~~…………そんで、恋を認めたから職務放棄ってか!」

出勤しておきながら客は取らないと言ってベッドにうつ伏せた瀬野へ、平田からの口撃が刺さった。

瀬野は言い訳もせず、むっすりと黙り込んだまま、そばの椅子に腰掛け札を数える平田をじっとりと見やった。繰り返し数えられているお札は、結構な枚数だ。

「あ、これ? 今日1日あんたを貸し切った客が置いてったよ」
「は!?」

がばっと身を起こす。

「今日は客取らねえって言って……!」
「それ、今日だけ?」

風俗店の店長は働かないキャストに容赦がなかった。

「まじで今日1日自覚した恋に悶々としたら、明日からは切り替えて他の奴とセックスできんの? どのみちヤらなきゃなんないなら、今日ヤるのも明日ヤるのも一緒じゃない? ねえ? 違う? なあ?」
「でも……!」

それ以上、何も言い返せなかった。力なく拳を握り、項垂れる。

「ま、客が到着するまで時間あるから、せいぜい悶々としな~」

数えた札を懐に忍ばせ、平田は手を振って退室した。






恋心を認めた上で、ユルシィ以外の相手と性行為ができるのか?

肉体的にはできる。悔しいが、できるだろう。
でも精神的にはきっとつらい。
相手にユルシィを重ねて、こんなんじゃないって苦しむ。自分に触れているのがユルシィでないことに胸を痛める。
ユルシィに抱かれた経験があるから。本物を知っているからこそ、余計に違いに耐えられないだろう。

こんな気持ちで、客を取るなんてできっこない。
やっぱり無理だ。断ろう。
仕事として、金銭のやり取りがある以上、プロとしてセックスしなければならない。不手際なんかがあったら、瀬野だけでなく店の評判にも傷がつく。
ーー断ろう。

でも、今日断って、明日からは?

今、こんなにも無理だと思っているのに、一晩経ったら、あっさり他の相手と寝れるもんなのか?

無理だろ。無理だ。できる気がしない。どうすればーー

悶々と思考の迷宮を彷徨っているところへ、ノックの音が響いた。
客が来てしまった。
まだ全然、何も決まっていないのに。
いや、断ろう。とりあえず、今日のところは。お引き取り願おう。すみません、ごめんなさいーー

「ユルシィ……?」






「ユルシィ……?」

間抜けな声が出た。

迎えに来てくれたのか?
今日一日瀬野を貸し切ったという客はどうなった……?
平田さんが気をきかせてくれた??

混乱に、薄く口を開いたまま固まる。

ベッドに座り込む瀬野の目の前に、ドアを閉めたユルシィが膝をついた。

「きょう、いちにち、セノ、かしきる、した」

今日1日、セノを貸し切ったーーそう、言ったのか?


「きょう、いちにち、セノ、私のもの」


ーーは?
再び、間抜けな声が、漏れた。

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