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しおりを挟む「ルタ、おこ?」
夕食を終え、ルタが風呂へ向かうと、ユルシィがこそっと瀬野に聞きにきた。
「おこ」
簡潔に返答する。ルタはユルシィが帰ってきてから、夕食中もずっとぷりぷりしていたのだ。
「ユルシィ!」
瀬野とユルシィのこそこそ話に被せるように、風呂場からルタが声を張る。
「今日はセノにおやすみのキスをしてください! 口にです! 熱烈に! 情熱的に愛を交わして朝まで絡み合うがいいです! おやすみなさい!」
バンッとガラス戸を閉める音。
シャワーの水音。
静まり返るリビング。
「…………ユルシ、」
「セノ」
ユルシィは腕を組み、首を捻って紅い光を複雑に絡ませた。
「きす、くちをつける、あってる?」
急に何を言い出すのか。
「……あぁ」
「きす、する、あい、かわす? なぜ?」
「……なぜ? 愛し合ってる者同士は、キスをすると……幸せに、なる……から?」
「きす、とは、しあわせ?」
一体何が彼の心に引っ掛かったのか。数瞬考えをめぐらせてーー
「ユルシィもしかして、」
キスしたことないのではーーと、聞こうとした口を塞がれた。
つるつるのゼリーに唇を押し当てている感覚。
「ん?」
首を傾げたユルシィが、もう一度触れてくる。
ただくっつけているだけで、感覚的にはこちらからは唇かどうかもわからない。でも、じわじわと、身体の奥から湧き出て、胸に広がっていく熱の流れを感じる。
至近距離にある2つの紅い光が、追いかけっこをするように高速旋回していた。
「これが、きす……」
顔を離したユルシィが、きゅっと抱きしめてきた。
声音には、確かな感動が混じっていた。
ああ……好きだ……。
ユルシィに惹かれている。
もう、認めるしかない。
そうだよ。好きだよ。悪いか。
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