可憐な少女よりガチムチおじさんが圧倒的に性被害に遭う恐ろしい世界に迷い込んだ

汐崎えみや

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外を出歩く時、必ず手を繋ぐのは、そうしないと危ないからだってこと、わかっている。もうすぐ44になるおっさん相手に何言ってんだと思うかもしれないが、むしろ、だからこそこの世界では危険なのだ。
人間なら10代少女より40代男性の方が圧倒的に性的に狙われやすいという、イカれた世界なのだから。

「セノ、げんきない。いやなきゃく、くる、した?」

首を振った。

「けがする、した? いたい?」

苦しい。

働きだしてから、ユルシィには抱かれていない。
当たり前だ。ユルシィが瀬野を抱いたのは、定期的にセックスしないと瀬野が苦しむからだ。今はその条件をクリアしているから、わざわざユルシィが瀬野を抱く必要はない。

苦しかった。

「ユルシィ、」

苦しくて、苦しくて、縋りついた。

「ユルシィ、抱いて……抱いてくれ……!」
「セノ……っ?」
「ユルシィ、ユルシィ……っ」
「セ、セノっ、おちつく……っ、おちつく、してっ」

往来でこんなことして、注目が集まるのはわかっていた。それでも自分を止められない。衝動が止まらない。
どうだっていい。ただ、抱いてほしい。

翡翠色の巨体にしがみついていた腕を、通りすがりの人外生物に握られた。強く、引っ張られる。

「******」

そいつが何か言った瞬間、ユルシィが怒りで紅い光をはちゃめちゃに旋回させた。

「***っ!!」

鋭い言葉を投げつけて、返事も聞かずに瀬野の腕を引く。
ずしん、ずしん、怒りでぷんすかしながらユルシィは近くのホテルに瀬野を連れ込んだ。
シンプルな内装の部屋で、優しくベッドに座らされる。
ユルシィはまだ気が立っているのか、ぷんすこぷんすこ室内を歩き回った。

「何怒ってる?」

少し落ち着いた瀬野が尋ねると、ユルシィはどすどすカーペットを踏み鳴らしながら、近づいてきた。

「あいつ、私、あいてしないなら、じぶん、やらせろ、いった! いくら? かね、はらう、いった!」
「なんで怒る?」

同じ質問を繰り返されたと思ったらしい。
ユルシィは固まり、大きく首を傾げる。
確かに似たような言葉になったが、意味は違う。

瀬野は今日だって、会員制風俗店のキャストとして、金と引き換えに身体を売った。

「それと、さっきのあいつが金払って俺を抱くのと、何が違う?」

絶句するユルシィに、畳み掛ける。

「でも俺は、ユルシィから金は取らないよ。だから、抱けよ」






ユルシィは抱かなかった。

その代わり、自宅で1人待つルタに外泊の連絡をして、瀬野を両腕で抱きしめて眠った。

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