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06.
しおりを挟む1日で最も憂鬱な時間がやってきた。風呂だ。
いつもの入浴担当が、瀬野の身体を性的な手つきで撫で回す。汚れを落とすふりをして執拗に乳首を捏ねくり、腹筋の割れ目をなぞって、下腹部に触れてくる。
瀬野は、歯を食いしばって耐えた。
反抗しない方がさっさと終わると学習したのだ。それに、今は、ルタが。性被害を受けている瀬野とはじめて目が合った時、青褪めて視線を逸らすことしかできなかったルタが。今では瀬野を気にかけてリーラの言語で何かしら大声を張るようになってきた。現に、今もこうして身体を触られている瀬野を指差し、自分を洗う人外生物に必死に何事かを訴えている。
「ルタ……いけない……大丈夫だ、ルタ、だから……」
瀬野は恐ろしかった。無理矢理触れられて強制的に射精を促されることよりも、矛先が幼い少女に向かってしまうことの方が。人外生物に比べて人間はか弱く、非力だ。軽く腕を掴まれただけで、もうびくともしない。体格の良い成人男性である瀬野ですら、そうなのだ。華奢な未成年の少女など、彼らはいともたやすく手籠めにできる。
「ルタ…………ーールタっ!」
とうとう、ルタを洗っていた人外生物が手を出した。ほおを打ったのだ。彼らにとっては軽くぺしっと叩いたつもりでも、非力な少女は大袈裟なほど豪快に倒れ伏す。
「ルタ!」
最近は従順だった人間が突然大声をあげてびっくりしたのか、瀬野が勢いよく立ち上がっても、咄嗟に拘束されなかった。ほおを押さえてうずくまるルタのもとへ駆け寄り、薄い肩を抱き寄せる。
「大丈夫か!? ルタ」
「平気……セノは、大丈夫ですか?」
「平気じゃないだろ。あぁ……赤くなってる。痛いな。ごめんな」
「なぜ、セノが謝るですか」
「だって、何言ってたかはわからんかったけど、たぶん、俺のせいだろ」
「違います」
強い眼差しだった。打たれた痛みに涙の膜を張っていても、芯の強さを感じさせる、まっすぐな瞳。
「違います、セノ。私が。私がもう、見ないふりをしたくないだけです」
「ルタ…………」
強い娘だった。こんなにも細く薄っぺらい身体に、固い意志を宿している。
そんな意志の強い瞳が、不意に揺れた。目を見開いて、瀬野の腕に縋り付く。
「どうした? ルタ……?」
「やっぱりさっさと決めてしまおう……」
瀬野の腕にひしとしがみついたまま、ルタの目は会話を交わす人外生物2体に向いている。
「この娘はどうする……人間の女、それも子どもなど……よっぽどの変態しか…………やはり、この男から…………ーーっ」
うわ言のように口走るルタは、ひゅっと息をのんだ。小さな顔を青褪めさせて、瀬野を振り返る。
「彼らはセノに性技を仕込んで売るつもりです!」
話がついたのか、会話していた人外生物2体が、彼らのやり取りが漏れていることにも気づかず近づいてくる。
「はじめからそのつもりで店に出し! セノを気に入った客の中で一番高い金額を提示した相手に売り飛ばすっ!」
「*****」
「**、*」
「やめ……っ」
「ルタ!」
逃げる間もなかった。
あっという間に捕獲され、なすすべもなく洗い場から連れ出される。
「セノ! セノ……っ!」
「***!」
「ぅ゙ーっ! ゔぅーっ!」
「ルタ……」
人外生物達にとって誤算だったのは、おそらくルタの存在だろう。
彼女は、引き剥がそうとする人外の怪力に一切屈せずに、瀬野にしがみついて意地でも離れなかったのだ。
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