可憐な少女よりガチムチおじさんが圧倒的に性被害に遭う恐ろしい世界に迷い込んだ

汐崎えみや

文字の大きさ
上 下
5 / 35

05.

しおりを挟む


「おはよう」
「お、は、よ、ぉ」
「こんにちは」
「こにちは」
「こんばんは」
「こばんわ」

瀬野の言葉を復唱して、何が楽しいのかルタはくすくす笑う。43のおっさんには、少女の純真な笑顔は眩しかった。

「セノ~……私、きた~…………」

店内に入ってくる前から、ショーウィンドウ越しにこちらの様子をうかがっている巨体には気づいていた。でもなんだか、待たされたこれまでの時間がおもしろくなくて、素知らぬふりをしていた。そんな意地も、しょんぼりと巨体を丸めておずおず声をかけられたりなんかしたら、あっさり吹き飛ぶ。

「遅えよ、ユルシィ!」

顔をあげて、ぺしっと翡翠色の肌を叩けば、ユルシィが嬉しげにそわそわと身体を揺らす。

「え~、ごめん~? 怒る、した?」
「いいよ。ちゃんと来たから、許す」
「またくる、いった」
「そうだな」
「ぜったい、いった」
「わかったわかった。まあ座れよ」

自分達も座っているソファを勧めると、黙ってにこにこ成り行きを見守っていたルタを間に挟んで、ユルシィも腰を下ろした。

「アィヴェフ」

じっと見上げてくるルタに、ユルシィがリーラの挨拶を告げる。ルタもにこやかに同じ言葉を返した。ユルシィは顎を人差し指と親指で挟んで首を捻ったかと思うと、次いで長々とルタにリーラの言葉を投げかけた。ルタは動じた様子もなく、応じる。何度かやり取りがあった後、ユルシィはほうと感嘆の息を吐いた。

「セノ、このこ、すごい。私のことば、わかる、してる。リーラのげんご、おぼえる、してる」
「そうなのか!?」

二人のやり取りの雰囲気から、感じてはいた。会話が、噛み合っていると。同じ言語の応酬が、成立していると。それでも改めて聞くと、この少女が、異なる世界の人間が、人外生物の言語を、教えてくれる相手などいなかっただろうに、会話が成り立つほど習得しているというのは驚愕に値する。

「すごいな……」
「*******、*、***」
「*******、****ーー******、**」

ユルシィがリーラの言語で尋ね、ルタが同じ言語で答える。それをまたユルシィが拙い日本語に訳してくれ、瀬野が整理すると、こうなる。

ーールタ達の民族は、聞いたことのない言語を話者の様々な動作や表情、口の動き、その単語や文章を使う状況などから判断して、理解することに長けている。


それは、突如射した一筋の光だった。



「じゃあ、俺と喋ってれば、いずれは日本語も、わかるように……なる……?」


結果、いずれどころじゃなかった。






「私はルタです。16歳の女です。ジャマルケスという国の最東端にある小さな村の少数民族です。言語を習得することに長けています。よろしくお願いします」

ばりばり日本語で自己紹介をこなすルタは、ユルシィよりよっぽど流暢に喋った。

「ルタ、すごい。すごいね、ルタ。ね、セノ」
「……そうだな」


ユルシィとルタの初対面から、半月も経っていなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...