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第2章

18.光の矢に射貫かれる

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「何考えてる」
「本気ですか?」
「まあ、いいんでない?」
「私が口を出すことじゃない」
「ミユキくんが決めたなら、それでいいんじゃないかな」

シェロリアとツォット以外は賛成票ということで、御幸を入れて賛成四、反対二で可決。玲奈が反対だったとしても、賛成票の方が多いので、可決。決まり。

「よっしゃ、ジェイス、行こ!」

ジェイスは呆れたように嘆息して、頭を振った。







「まじ? ウケるな」

兄がこれから男との二度目のセックスに挑むことを知った妹の反応はそれだけだった。全然ウケてなかったし、なんなら真顔だった。でも、そっとローションを差し入れてくれた。これで賛成五。

御幸の部屋に入ると、ここまで気丈に振る舞っていたジェイスは、気が抜けたようにベッドに腰を下ろした。深くため息を吐く。御幸はジェイスの開いた膝の間に立って、気休めのキスを贈った。眼鏡が邪魔で、取り上げてサイドテーブルに置く。再び口づけると、ジェイスの腕が腰を抱いてきた。唾液から伝わってくる毒素を意識して浄化しながら、ジェイスのうなじを撫でる。スーツの襟から胸元に手のひらを差し入れ、肩をなぞった。ネクタイを取ってしまう。ジェイスが上着を脱ぎ、床にそっと落とした。

「……っは、」
「ジェイス、勃ってる……?」
「きみも……」
「御幸」

ジェイスの濡れた唇を人差し指でなぞって、繰り返す。

「御幸」
「……ミユキ」

よくできましたと、押し付けるだけのキスをする。両手で顔を固定して、額に、目蓋に、鼻先に、頬に、唇に。唇にだけは、何度も。ついばむように。繰り返し。何がおかしかったのか、ジェイスの頬が緩み、身体を震わせる。

「何笑ってんの」
「いや、」
「なあにー?」
「ああ……なんだか、おかしくて」
「俺のキスが変だってか? 悪かったな童貞で」
「いや、まるで愛し合う者同士の行為みたいで、おかしくなっただけです。これは、そんなんじゃないのに」
「じゃあ愛してよ」

ジェイスが固まった。

「今この時だけ、俺を愛してみて。俺も、そうする」

返事を聞かずに、唇を合わせる。舌を差し入れ歯列をなぞると、迎え入れられて激しく舌が絡まった。股の中心が痛いほど熱を持つ。シャツの内側にジェイスの手が侵入し、背中を撫で、肩甲骨の形を確かめる。背骨を下へたどり、ウエストゴムから差し込まれた手のひらが、尻の丸みを掴んだ。回すように揉み、下着ごとボトムスを引き下ろされる。勃起した性器が引っ掛かって、ばちんと跳ねた。膝下でぐちゃっとなったボトムスと下着を、脚を動かしてさらに下ろし、完全に抜き去る。邪魔なそれらを蹴飛ばして、御幸はジェイスの腿に向かい合うようにして乗った。両腕をジェイスの首に回し、神経質そうな男の顔を覗き込む。

「俺の顔見えてる?」
「さすがにこの距離なら見えますよ」
「俺、視力良いからさ。眼鏡が必要な視界ってどんな感じよって、ちょっと、気になる」
「目が悪くて良いことなんて、何もありません」
「そりゃそうだ」
「現に、僕は眼鏡を掛けていても、きみの顔がちゃんと見えていなかったらしい」
「ん?」
「案外かわいい顔してますね、ミユキ」

ジェイスは、からかうように笑った。

「な、な……」
「照れたんですか?」
「ジェイスってそういうこと言っちゃうんだあ……」
「何か問題でも?」
「いや、意外……だけど、良い方の、意外だった」
「なんですかそれ」

今度は、純粋に。
ピュアな笑顔を、ジェイスは浮かべた。
御幸は、何かにーーそう、ジェイスがドリムとの戦闘で見せた、光の矢のようなものに、胸を貫かれたような気がした。
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