男子校に入学しても絶対そっち側には行かないって思っていたのに、助けてくれた先輩が気になってます

天冨七緒

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脳内元カレと対決中

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昨日起きた事などすっかり忘れ、先輩の腕の中を存分に満喫した。
先輩の腕の中にいると幸福に満たされる。

「今日は帰るんだろ?」

「…ぅん」

この腕から出たくないという思いから先輩の胸に顔を埋める。
背中をポンポンと子供をあやすように俺の不安を取り除こうとしてくれる。
もう大丈夫なのに、俺の事を気にしてくれるのが伝わる。
先輩は何度も俺を救ってくれた。
そんな人の側にずっといたいと思ってしまうのは仕方がないと思う。

「送ってやるよ」

「んっ先輩が、家まで送ってくれんの?」

「ああ」

嬉しい。
指で先輩の唇に触れ口付けを交わした。
朝の挨拶にしてはちょっぴり濃厚な口付けをした。

「先輩、おはよっ」

「あぁ」




今日は昨日の雨が嘘のように快晴だった。
先輩がうちに来るってだけで気分が上がる。
昨日のイヤなことも綺麗さっぱり忘れられそう。
帰る準備~。
あ゛ーしまった、昨日雨に濡れて風呂場に直行して脱ぎ散らかした制服が…。
これは酷い、家帰ったら洗濯しないと。
なので、仕方がないから先輩の服を借りよう。
うん、仕方ない仕方ない。
ふふふ~ん。
今回は忘れ物がないように何度も確認した。
携帯も制服も先輩の家の鍵も持ったから大丈夫。
お昼を一緒に食べてのんびりしてから俺の家に。
初めてだ、先輩が家に来るの。
浮かれている俺とは違い先輩は辺りを見回している。
何をそんなに気にしているんだろう?

「ねぇ、先輩誰か探してるの?」

「んぁっいやなんでもねぇ」

「ふーん」

何?元カレとか?元カレとの想い出の場所とか?それともこの辺に住んでんの?
俺が疑いの目で見ているのに、全く気付かないなんて。
そんなにその人が気になるの?
俺といるの見られたくないの?
ん゛ー。

「先輩っ」

「ん?」

俺の方を漸く向いた先輩に背伸びしてキスをした。
ここが外とか今はどうでもよかった。
先輩を元カレになんて奪われたくない。
今は俺の彼氏なんだから。
舌を絡め深くなるキス。
先輩も先輩の舌も離したくない。
夏休み初日の真っ昼間の道で堂々とキスしてしまうなんて、自分でもどうかしてるって思う。
けど、先輩の元カレに見せ付けることが出来るならそんなのどうでもいい。
今はもう先輩は俺の、誰にも渡さない。
唇が離れそうになれば追いかけた。
腰に手を回され俺の気が済むまで続いた。
終わりが近づけば軽く啄むようなキスを送った。

「この辺なのかよ?」

「?」

「昨日変態が出たって言ってたよな?」

「………」

すっかり忘れてた。
先輩はもしかしてずっとそれを気にしてたの?
元カレじゃなくて?

「居たのか?そいつ」

…居ません。

「………」

答えられない…なんて答えればいい?
俺が作り上げた先輩の元カレに嫉妬している間、先輩は俺を心配してくれていた。

「…ぅうん、居ない。大丈夫」

「そうか」

気まずくなってしまった。
イヤっ俺が勝手に勘違いして気まずくなっているだけ。
先輩ごめんなさい。
再び俺の家に向かうため歩きだした。
急に静かになった俺の頭をポンポンと撫でてくれた。
先輩の優しさが今は申し訳ない。
俺、先輩を疑っちゃったのに。
さっきまでよりちょっとだけ近くを歩いた。
邪魔にならない程度に気持ち近寄り先輩の服の裾を掴んだ。
先輩が立ち止まり顎を取られた。
この後の展開は予想するまでもなく自然と目を閉じた。
家までもうすぐでご近所さんに見られちゃうという心配が頭を過ったが、先輩のキスを受け止めた。

「俺がいるから心配すんな」

そんなイケメン台詞を囁かれた。
あんな男の事なんて記憶の彼方なのに、先輩は俺のために。
俺はなんて邪な男なんだ、心配してくれる先輩が嬉しくて家に着いたらエッチ出来ないかな?なんて考えてる。
もう、先輩とエッチしたくて堪らない。
もう一回キスしてくれないかな?って。
気付けばもうすぐ家だ。
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