男子校に入学しても絶対そっち側には行かないって思っていたのに、助けてくれた先輩が気になってます

天冨七緒

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見つけちゃった

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旧校舎。
歩いて歩いてやっと見つけた彼は旧校舎の一番奥非常口に近いあの部屋にいた。
あの日この場所にいた人は俺が探しているあの人だった。
今日も部屋の中には彼ともう一人。
相手はこの前の人と違う気がしなくもない。
助けてくれたあの人には恋人がいた。
別に悲しくなんて無い。
御礼がしたくて探してただけだから。
あの人に恋人がいようが俺には関係ない。
俺は傷ついてなんかない。

ゆらゆらと覚束ない足取りで教室へ戻った。
あの部屋から出てくるあの人達には逢いたくなかった。
御礼はまた今度。
旧校舎ではなく、旧校舎に向かう途中とかで声を……。
分かってるこれ以上行くと彼等と鉢合わせしてしまうかもしれないと頭のなかでは分かっているのに、行ってしまう。
またあの二人のあんな光景なんて見たくない。
先輩は毎日ではないがほぼ昼休みはこの空き部屋に居るようだ。
そして、ここに来る人とそういうことをしている。
それでも恋人関係ではないみたいだ。
俺を助けてくれた人は色んな人とそういうことをする人だった。
幻滅したのに、少し気になる。
ほんのちょっとだけ。
あの人の事を忘れて考えないようにしようとすればする程、考えてしまう。
意識してしまう。
二年生の人達とすれ違うとき先輩が居るんじゃないかと探してしまう。
そんな偶然はほとんどやってこなかった。

今日もあの空き部屋へ着いてしまった。
最近では、昼休みに空き部屋に来ることが日課になってしまった。
中を覗くと誰も居なかった。
そういうことをしてしている先輩を見なくて良かったような、先輩を見ることが出来ず残念なような。良くわからない。

「おい、入るなら入れよ」

後ろを振り向くとあの先輩がいた。
突然の事で声も出ず先輩をじっと見上げていた。

「覗き魔」

「な、ち違います」

先輩は俺を押し退け空き部屋へ入っていった。
俺は一瞬入るのを躊躇った。
いつも廊下から見ているだけだったあの部屋に入ろうとしている。
先輩は日が当たる所に腰を下ろしていた。
勇気を出して部屋へ入った。

「今日は珍しくお一人なんですね」

まずった。
こんな嫌み言うつもりはなかったのに。

「あ?ならお前とする?」

「な、な、なに言ってるんですか。しませんよ」

先輩の言葉に動揺して顔や首の熱が上がるのを感じた。

「あ~そっ」

俺なんて興味無さげな感じで先輩は横になってしまった。
会話も致し方なくしているだけというのが伝わってくる。
先輩の視界に全く入ることが出来ていないのが分かる。

「寝ちゃうんですか」

「ああ」

ちょっと残念。
勇気を出して部屋へ入って漸く先輩と会話が出きると思ったのに。
俺の事なんて空気のように扱うので先輩の近くまで行き腰をおろした。

「膝、膝枕しましょうか?」

話したいけどなんて声かけていいのか混乱する頭で突拍子も無いことを口にしてしまった。

「……」

何も話してくれなくなってしまった。
やっぱり膝枕なんて間違ったのかな?
この沈黙に耐えられない。

「俺、弟がいるんでよく膝枕してあげるんです。弟は甘えん坊だから手を繋いだりして。フフたまに一緒に寝たりするんてすよ」

「弟はいくつだよ」

あっ、答えてくれた。
嬉しい。

「中学三年生で来年うちを受験するって今頑張ってるんです」

「中三で手を繋いで一緒に寝る。ヤベェだろ」

「何がです?」

「何がって、中三の男が兄貴と手繋ぎって」

「うちの凛に会ったら分かります。とっても可愛いんだから」

「ふーん」

「逢わせませんけどね」

先輩が話してくれるのが嬉しくてつい凛の事まで。凛の事は嘘じゃないけど、凛に逢わせたくない。先輩が俺よりも凛を気に入ってしまったらと不安から焦ってしまった。

「んあ?」

「大事な弟ですから、俺から見ても可愛いのに先輩には見せられません」

本当だけど、凛と逢ってほしくない。
先輩が凛に興味を持って欲しくない。
凛を守る振りして本当は俺自身を守ったのかも。

「あっそ」

ゴロンと向きを変えて先輩が俺の膝に頭を乗せてくれた。
嬉しい。
なかなか懐かない猫が頭を撫でさせてくれたみたいな。
ツンデレさんだ。
俺の癖なのか、凛を膝枕する時のように先輩の頭を撫で撫でしていた。

今日って凄く良い天気だったんだね。
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