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スピンオフ ステファニー

ローニャ 久しぶりのお店

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ケーキ大会が行われる日、久し振りに私は木材店で働いていた。
今までは大会に出場する為のケーキに専念していたので、約二ヶ月ぶりの出勤となる。

「ローニャっ」

周囲を切り裂くように名前を呼ばれ、振り向けば楽器職人のストランドバリトンさんが勢いよく近づいてくるので咄嗟に私は後ずさっていた。
以前までは身なりも整えていたのに今は無精髭に髪もボサボサで、この二ヶ月で何が起きたのか心配に思うも、近付かれると怖かった。

「曲を聴かせてください」

「へっ?」

予想と違うのか、予想通りなのか、ストランドバリトンさんからはいつもの「曲を聴かせてください」だった。

「新曲をっ新曲を教えてくださいっ」

「やっちょっと…」

あまりのストランドバリトンさんの形相に怖くなる。

「本当に最近は見てません」

「貴女なら…」

「やめてっ」

ストランドバリトンさんの音楽への情熱は狂気を帯びていた。

やだ…怖い…それ以上近寄らないでっ。

「やめろっローニャから離れろっ」

…やはりこういう時に現れてくれるのは、ドリュアスさんだ。

「俺は彼女にっ」

「お前はローニャから曲を盗み、貴族達に自分が作曲したと披露しているようだな」

「えっ?」

貴族…披露…

「ローニャが貴族達と関わりがないから気付かれないと踏んで演奏会を開いては多額の寄付やら貰っているんだろ?特定の貴族には特別に新曲を披露すると言っているそうじゃないか」

あっだから私に新曲を聴いてきたんだ…
そう言えばストランドバリトンさんは最初からずっと私の曲にしか興味がなかった…
そう言うことなのか…

転生者ってどこのジャンルでも利用されるのね…

「…お前には関係ないだろ?ローニャ頼むよ、今度子爵家で披露することになったんだ。俺の人生が掛かってるんだよっ」

「他人の手柄で自分の人生を委ねるな」

「うるせぇっなっ、頼むよ俺とローニャの仲じゃないかっなっ?」

仲って、私達はそんな親しい仲ではない。
一方的に曲を提供させられていただけ…

「もう最近は見てないんですっ」

「ウソ言うなよっ、本当は有るんだろ?俺が発表して有名になったらあんたにも金を払うよっ。だから、なっ?」

「本当にありませんっ」

「ストランドバリトン、今後は兄貴か親父さんと取引する。お前は二度と来るなっ」

ドリュアスさんに引き摺られるようにストランドバリトンさんは店の外へ追い出された。
暫くの間ストランドバリトンさんの叫び声が聞こえていたが、静かになってもドリュアスさんは戻って来ない。
怖いとは思ったが、確認の為に外に顔を出したが二人の姿はなかった。

「ドリュアスさん…大丈夫だったかな?」
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