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異変
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あれから数日、俺はエストレヤの側を離れず様態を見続けた。
どこの世界でも出産は大変ではあるが、一週間や二週間で生まれるこちらの世界では気を抜くといつの間にかエストレヤの魔力を吸い付くし倒れていることが何度かあった。
片時も離れず側にいたつもりだが、俺の一瞬の隙を見逃さないのか油断をついてくる。
ベルを渡し合図してくれと頼んだが、エストレヤもベルに手を伸ばすが間に合わないことが多々あった。
慌てながらも魔力を注ぎ込み、エストレヤが回復すると眠りについてしまう。
側にいてもエッチな事をする暇がなかった。
俺に凭れて気持ち良さそうに眠るエストレヤにイタズラしたいと考えるも、魔力の消費により気絶してしまう姿を見ると邪な考えは鳴りを潜めた。
エストレヤの腹を擦ると少し膨らんでいるように感じた。
もともと細い奴だったので、腹のぽっこりが可愛く見える。
「んっんん…ふぅん」
起きたか?
エストレヤは身動ぎ後ろから抱き締める俺を見つけ微笑んだ。
寝ぼけているのか、再び眠りにつこうと瞼をゆっくり閉じるので、眠るのかと見つめていると瞼が開き振り返る。
唇が薄く開きエストレヤの視線が俺の唇に注がれていた。
エストレヤの身体が伸び唇が触れた。
「んっんぁむっんんふぁんんんっん」
エストレヤから奪われるようにキスが始まり応えていくも、突然身体からごっそりと魔力が抜けていった。
唇を離すと目眩のように視界が揺れ何かマズイと感じ、ベルに手を伸ばすが掴み損ねた…。
それでも床に落ち、音が響き渡った。
この事に誰か気付いてくれたら…。
バタバタバタ
「……ン…ア……ラン…アティ…ラン…」
「んっ…ぁ…エス……ヤは?」
「エストレヤ様は大丈夫だ…アティラン、もうすぐだ…起きられるか?」
もうすぐ…とは何が?と聞かなくても雰囲気で分かった。
俺は声を出す体力すらも惜しみ、軽く頷くだけでエストレヤは俺の横で呼吸を荒くしていた。
魔力が足りていないと判断し、鈍い身体でエストレヤに魔力を注ぎ始めた。
エストレヤの横に座りながら魔力を流し続けると、エストレヤも俺のズボンを握りしめながら必死に耐えていた。
暫く流し続けると魔力を跳ね返され、態勢を崩してしまった。
「アティラン大丈夫か?」
「…はぃ」
「魔力は充分だ、アティランもうすぐだが受け止められるか?」
俺を起こしながら父さんが告げる。
魔力を注ぐ事に集中するあまりエストレヤの格好に気付かなかったが、エストレヤの下半身には大きく清潔な布が掛けられズボンとパンツは脱がされていた。
生まれるところは女性と同じなのだろう。
受け止めると言うことは覗かなければならない。
だから、父さんは俺に確認を取ったのだろう。
「俺がする。」
父さんに支えられながらベッドから下り、布の中を覗いた。
固く閉じられていたが、次第に広がり淡く光だしている。
ゆっくり光に包まれた何かが現れだした。
俺の両手程の大きさの光が手のひらに舞い降りた。
暖かくあり、重さを感じた。
淡い光は色濃くなら赤ん坊を見ることは出来なかった。
大切に抱えながら、布から顔を出した。
「「「「おぉっ」」」」
光に包まれた赤ん坊を確認すると歓声が上がる。
「エストレヤ様に…」
「はぃ」
俺はエストレヤの横に移動し、生まれたばかりの赤ん坊を見せた。
光が徐々に淡くなり赤ん坊が姿を表した。
光が消えると「んぎゃぁあんっぎゃぁああああ」と泣き出した。
「…アティが泣いてるからつられちゃったんだよ。」
エストレヤにちゃかされ、頬を触ると俺は目から涙が流れていた。
「気付かなかった。」
「アティ…」
「エストレヤも泣いてんぞ。」
俺を笑いながらエストレヤも涙を流し始めた。
「アティが泣くから…」
「そうだな…エストレヤ…ありがとう…頑張ったな…」
涙を堪えるも余計に涙が溢れ声が震える。
「…ぅん」
「二人ともよく頑張ったな、顔を拭きなさい。」
見兼ねた父さんにタオルを渡され、多くの人間に見守られながら俺達の子供が生まれた。
出産には間に合わなかったが、イグニス侯爵夫妻が到着した。
普段なら言い合うも、涙目の…号泣する俺を見て侯爵は無言で肩を叩き俺は何度も頷くしか出来なかった。
どこの世界でも出産は大変ではあるが、一週間や二週間で生まれるこちらの世界では気を抜くといつの間にかエストレヤの魔力を吸い付くし倒れていることが何度かあった。
片時も離れず側にいたつもりだが、俺の一瞬の隙を見逃さないのか油断をついてくる。
ベルを渡し合図してくれと頼んだが、エストレヤもベルに手を伸ばすが間に合わないことが多々あった。
慌てながらも魔力を注ぎ込み、エストレヤが回復すると眠りについてしまう。
側にいてもエッチな事をする暇がなかった。
俺に凭れて気持ち良さそうに眠るエストレヤにイタズラしたいと考えるも、魔力の消費により気絶してしまう姿を見ると邪な考えは鳴りを潜めた。
エストレヤの腹を擦ると少し膨らんでいるように感じた。
もともと細い奴だったので、腹のぽっこりが可愛く見える。
「んっんん…ふぅん」
起きたか?
エストレヤは身動ぎ後ろから抱き締める俺を見つけ微笑んだ。
寝ぼけているのか、再び眠りにつこうと瞼をゆっくり閉じるので、眠るのかと見つめていると瞼が開き振り返る。
唇が薄く開きエストレヤの視線が俺の唇に注がれていた。
エストレヤの身体が伸び唇が触れた。
「んっんぁむっんんふぁんんんっん」
エストレヤから奪われるようにキスが始まり応えていくも、突然身体からごっそりと魔力が抜けていった。
唇を離すと目眩のように視界が揺れ何かマズイと感じ、ベルに手を伸ばすが掴み損ねた…。
それでも床に落ち、音が響き渡った。
この事に誰か気付いてくれたら…。
バタバタバタ
「……ン…ア……ラン…アティ…ラン…」
「んっ…ぁ…エス……ヤは?」
「エストレヤ様は大丈夫だ…アティラン、もうすぐだ…起きられるか?」
もうすぐ…とは何が?と聞かなくても雰囲気で分かった。
俺は声を出す体力すらも惜しみ、軽く頷くだけでエストレヤは俺の横で呼吸を荒くしていた。
魔力が足りていないと判断し、鈍い身体でエストレヤに魔力を注ぎ始めた。
エストレヤの横に座りながら魔力を流し続けると、エストレヤも俺のズボンを握りしめながら必死に耐えていた。
暫く流し続けると魔力を跳ね返され、態勢を崩してしまった。
「アティラン大丈夫か?」
「…はぃ」
「魔力は充分だ、アティランもうすぐだが受け止められるか?」
俺を起こしながら父さんが告げる。
魔力を注ぐ事に集中するあまりエストレヤの格好に気付かなかったが、エストレヤの下半身には大きく清潔な布が掛けられズボンとパンツは脱がされていた。
生まれるところは女性と同じなのだろう。
受け止めると言うことは覗かなければならない。
だから、父さんは俺に確認を取ったのだろう。
「俺がする。」
父さんに支えられながらベッドから下り、布の中を覗いた。
固く閉じられていたが、次第に広がり淡く光だしている。
ゆっくり光に包まれた何かが現れだした。
俺の両手程の大きさの光が手のひらに舞い降りた。
暖かくあり、重さを感じた。
淡い光は色濃くなら赤ん坊を見ることは出来なかった。
大切に抱えながら、布から顔を出した。
「「「「おぉっ」」」」
光に包まれた赤ん坊を確認すると歓声が上がる。
「エストレヤ様に…」
「はぃ」
俺はエストレヤの横に移動し、生まれたばかりの赤ん坊を見せた。
光が徐々に淡くなり赤ん坊が姿を表した。
光が消えると「んぎゃぁあんっぎゃぁああああ」と泣き出した。
「…アティが泣いてるからつられちゃったんだよ。」
エストレヤにちゃかされ、頬を触ると俺は目から涙が流れていた。
「気付かなかった。」
「アティ…」
「エストレヤも泣いてんぞ。」
俺を笑いながらエストレヤも涙を流し始めた。
「アティが泣くから…」
「そうだな…エストレヤ…ありがとう…頑張ったな…」
涙を堪えるも余計に涙が溢れ声が震える。
「…ぅん」
「二人ともよく頑張ったな、顔を拭きなさい。」
見兼ねた父さんにタオルを渡され、多くの人間に見守られながら俺達の子供が生まれた。
出産には間に合わなかったが、イグニス侯爵夫妻が到着した。
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