【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒

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リーヴェス アフェーレ

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部屋から出ず、あれから何日経ったのだろう。

朝を迎え食事が運ばれ陽が沈み、輪郭をぼやかす暗闇となっていく。
顔を会わせるのは使用人のみ、会話という会話もない。
私は何を間違えたんだ?

アティランは私の事を思っている。

何故、誰も分からないんだ?
誰がどうみてもアティランは私の事を思っているじゃないか…。
周囲が勝手に勘違いし婚約解消させておきながら、全ての責任は私に有ると押し付けた。
これが我が国の中枢貴族と王かと思うと、呆れてものも言えなかった。
私は彼らに言いくるめられたのではなく、呆気に取られたのだ。
もう少し他人の心の機微に気付いて欲しいものだ。

公爵も少しは息子に関心を持つべきだ。

アティランが優秀だからと放任しすぎた結果、アティランと私が被害を被ることに。
アティランは誰も頼らなかったのではなく、このような仕打ちに一人耐えていたんだな。

私がもっと早くに気付いていれば…。

長い間時間を無駄にしてしまった。
だが、これからは違う。
アティランを守れるのは私だけだ、もう少しだけ耐えてくれ。
そうすれば私達は一緒になれる。
アティラン、もう気付いていると思うが私はお前を愛しているんだ。
昔から、私ですら気付かないうちに…いやもしかしたら一目惚れだったのかもしれない。
だが、素直になれない私はアティランを突き放し続けた。
それでもそんな私にアティランは付き合い続けてくれていたんだな。

今更ながら、アティランの愛を実感する。

私が酷い対応を続けても、見捨てる事無く注意してくれていた。
アティランは優しいんだな。
憂鬱であるはずなのに、アティランを思い出す度に幸せな気分になっていく。
生徒会に入ったのも、きっと私の為なのだろう。

私の役に立ちたい、私の側にいたい、そんな気持ちから…。

私は考えが足りていなかったな。
アティランは健気にも私との距離を詰めようとしてくれていたのに、私は嫉妬してほしさに他の奴と…。
過去の自分に説教してやりたい。
アティランを大切にしろ離すな、でないと物語の波乱のような展開になるぞと。

…そうか、私達は今乗り越えるべき壁を目の前にしているのだろう。

観劇等でも恋愛する二人には必ず障害が現れ、それを乗り越えてこそ真実の愛に辿り着けるというものだ。
私とアティランは今、真実の愛の為に障害を乗り越えようとしているのか。
もしかしたら、父も公爵も態とあんな風に言ったのかもしれない。
この程度の事を乗り越えられないようじゃ、未来の王と王妃にはなれないと試されているんだ。

そうだ、私達は今試されているんだ。

やはり父も公爵も私達に期待しているんだな。
周囲の意図に気付き私も冷静になった。
私の様子が変わったことが父にも伝わり、学園復帰が認められた。

やはり私の考えた通りだった。

察しの良いアティランも、今ごろ気付いているはず。
卒業までに私達の関係を戻し他国に発表しなければならない。
本来であれば卒業と同時に結婚式である。
いくらアティランが優秀であっても時間が足りないだろう。
学園復帰もギリギリのタイミングだ。
父も公爵も間に合うと私たちを信じているに違いない。
これ以上期待を裏切るわけには行かない。
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