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リーヴェス アフェーレ
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私は正面からそいつに立ち向かった。
「いつまでアティランを苦しめるつもりだ?」
「苦しめ…る?」
何も分からない顔をしているところを見ると、本当に気付いていないんだな。
自分がアティランの荷物になっていることを。
私がハッキリと伝えなければ。
「アティラン程の男がお前の側にいるのは国のためにもアティラン自身の為にもならないのは分かっているだろ?早くアティランを解放しろ。」
「…解放…」
「もう、充分だろ?」
思い出はつくったはずだ。
早く私に返せ。
「…ゃです…アティと別れたくない。」
ふざけるなっ。
「お前なんががアティと呼ぶなっ。」
テーブルの上にあった誰かの飲み掛けかのグラスが目につき、奴に掛けていた。
いくら不快な相手でも感情に任せしていいことではなかった。
「エストレヤ」
アティランの声に更に心拍数が上がった。
違うんだ…これは…。
だが、アティランは私を見ずに奴しか見ていなかった。
こんなことまでした私をアティランは責めることもなく通りすぎていく。
「待て。」
アティランの腕を掴むも払い除けられた…。
初めての体験だった。
「…話がある。」
「俺にはない。」
アティランは振り返ることなく告げ、歩いて行ってしまった。
こんなに怒るなんて思ってもみなかった。
今までアティランは感情を見せなかったのでこんな扱いを受けるなんて想像が出来ていなかった。
置いていかないでくれ…。
何も出来ず、アティランの後ろをついて行くしか出来なかった。
「…アティラン。」
聞こえていないはずはない。
ただ、私の話など聞きたくないのだろう…。
間違えてしまった。
それでも諦めきれず後ろを歩いた。
「…グラキエス…話がある。」
「…俺にはねぇよ。」
「少しでいいんだ…。」
「断る。」
「…そいつが…着替えている間だけ…。」
「その前に言うことあんだろ?」
「………」
漸く足を止め振り向いてくれた。
が、アティランの目は鋭く心臓を突き刺す痛みだった。
彼への謝罪…。
「わかんねぇのか?」
「………」
分かっている…。
王族としての矜持が私を邪魔をする。
「エストレヤに謝罪しねぇ限り話しなんかねぇよ。」
「………」
…分かっている…が…。
よりにもよってそいつに謝罪…。
悔しさで一杯だった。
「…ぼ、僕は」
「黙ってろ。」
アティランの声は本気だった。
「……飲み物を…掛けたことは…悪いと思ってる。」
「……「思ってる」じゃねぇだろ?」
「……すまなかった。」
漸く謝罪は出来ても、頭は下げることは出来なかった。
「…ぃぇっ…はぃ。」
「…少しでいいんだ…。」
謝罪はした…それでもだめなのか?
「………」
「あの…僕一人で着替えてくるから…。」
「控え室は突き当たりの左の扉だ、グラキエス私達は王族専用の控え室に…」
彼にも私達の場所を伝えた。
「断る。」
「…ぇっ」
だめ…なのか?
「エストレヤの隣の控え室じゃだめなのかよ?」
「…防音が…」
「そんなに重要な話かよ?」
「…あぁ。」
「この部屋は?王族専用って上の階だろ?面倒だ、ここでいいだろ?エストレヤの部屋からも遠いし良いだろ?」
「……分かった。」
話が出来るなら場所は何処でも良かった。
「エストレヤ…すぐに来いよ。」
「ぅん…んっんふぅんっんんっんぁむっんん」
アティランは私に見せつけるようにそいつとキスをした。
漸く「彼」と思えるようになったのに、そんな姿を見せられたら憎くてたまらない。
「俺はお前の婚約者だから。」
「…ぅん」
婚約者…アティランはそいつを安心させる為に言ったのだろうが、私の心も抉った。
使用人が到着し、そいつは遠く離れた部屋へと案内された移動した。
「いつまでアティランを苦しめるつもりだ?」
「苦しめ…る?」
何も分からない顔をしているところを見ると、本当に気付いていないんだな。
自分がアティランの荷物になっていることを。
私がハッキリと伝えなければ。
「アティラン程の男がお前の側にいるのは国のためにもアティラン自身の為にもならないのは分かっているだろ?早くアティランを解放しろ。」
「…解放…」
「もう、充分だろ?」
思い出はつくったはずだ。
早く私に返せ。
「…ゃです…アティと別れたくない。」
ふざけるなっ。
「お前なんががアティと呼ぶなっ。」
テーブルの上にあった誰かの飲み掛けかのグラスが目につき、奴に掛けていた。
いくら不快な相手でも感情に任せしていいことではなかった。
「エストレヤ」
アティランの声に更に心拍数が上がった。
違うんだ…これは…。
だが、アティランは私を見ずに奴しか見ていなかった。
こんなことまでした私をアティランは責めることもなく通りすぎていく。
「待て。」
アティランの腕を掴むも払い除けられた…。
初めての体験だった。
「…話がある。」
「俺にはない。」
アティランは振り返ることなく告げ、歩いて行ってしまった。
こんなに怒るなんて思ってもみなかった。
今までアティランは感情を見せなかったのでこんな扱いを受けるなんて想像が出来ていなかった。
置いていかないでくれ…。
何も出来ず、アティランの後ろをついて行くしか出来なかった。
「…アティラン。」
聞こえていないはずはない。
ただ、私の話など聞きたくないのだろう…。
間違えてしまった。
それでも諦めきれず後ろを歩いた。
「…グラキエス…話がある。」
「…俺にはねぇよ。」
「少しでいいんだ…。」
「断る。」
「…そいつが…着替えている間だけ…。」
「その前に言うことあんだろ?」
「………」
漸く足を止め振り向いてくれた。
が、アティランの目は鋭く心臓を突き刺す痛みだった。
彼への謝罪…。
「わかんねぇのか?」
「………」
分かっている…。
王族としての矜持が私を邪魔をする。
「エストレヤに謝罪しねぇ限り話しなんかねぇよ。」
「………」
…分かっている…が…。
よりにもよってそいつに謝罪…。
悔しさで一杯だった。
「…ぼ、僕は」
「黙ってろ。」
アティランの声は本気だった。
「……飲み物を…掛けたことは…悪いと思ってる。」
「……「思ってる」じゃねぇだろ?」
「……すまなかった。」
漸く謝罪は出来ても、頭は下げることは出来なかった。
「…ぃぇっ…はぃ。」
「…少しでいいんだ…。」
謝罪はした…それでもだめなのか?
「………」
「あの…僕一人で着替えてくるから…。」
「控え室は突き当たりの左の扉だ、グラキエス私達は王族専用の控え室に…」
彼にも私達の場所を伝えた。
「断る。」
「…ぇっ」
だめ…なのか?
「エストレヤの隣の控え室じゃだめなのかよ?」
「…防音が…」
「そんなに重要な話かよ?」
「…あぁ。」
「この部屋は?王族専用って上の階だろ?面倒だ、ここでいいだろ?エストレヤの部屋からも遠いし良いだろ?」
「……分かった。」
話が出来るなら場所は何処でも良かった。
「エストレヤ…すぐに来いよ。」
「ぅん…んっんふぅんっんんっんぁむっんん」
アティランは私に見せつけるようにそいつとキスをした。
漸く「彼」と思えるようになったのに、そんな姿を見せられたら憎くてたまらない。
「俺はお前の婚約者だから。」
「…ぅん」
婚約者…アティランはそいつを安心させる為に言ったのだろうが、私の心も抉った。
使用人が到着し、そいつは遠く離れた部屋へと案内された移動した。
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