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リーヴェス アフェーレ
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学園パーティー前日、私は偶然にも媚薬を手に入れた。
偶然だ、偶然。
使うかどうかは分からないが学園パーティーの当日、ポケットにしのばせていた媚薬を眺めた。
私はこれを使ってしまうのか…。
これを使ってしまえばアティランはきっと私を軽蔑するだろう…。
それでも私は…。
入場までの時間を控え室に一人悩んでいた。
パーティーの開始が近付くにつれ、あの図々しい平民が纏わりつくようになったので誰も入れないよう見張りもつけた。
ソファに一人寛いでいると、入場が始まったのか合図があった。
王族は最後なので、焦る必用はない。
こんこんこん
ノックの合図でそろそろ私の順番を知る。
媚薬は…控え室に置いておいた。
持っていると誘惑に負け使ってしまいそうだったから…。
入場の扉前に行くと、アティランが入場していく姿を目撃した。
あれをエスコート…。
私は一人で入場した。
視線であの二人を探すも、二人は私に背を向けたまま一切こちらを見ることはなかった。
アティランはいつもこんな気分だったのか?
拍手や羨望の眼差しを受けるも、心地の良いものではなく中央まで歩けば人が遠ざかっていく。
私の視界にはあの二人しか居なかった。
どんなに近付いてもアティランは私に気付かなかった。
二人のじゃれあう後ろ姿…。
「お前は何をしているんだ?」
声をかけるつもりは無かったが、今すぐにでも二人を引き剥がしたかった。
振り向くアティランの瞳が漸く私を見た。
「ん?婚約者と戯れてる。」
視線は再び私から外れた。
「ん゛っ…少しは控えたらどうなんだっ公爵家ともあろう者が、はしたないっ」
過去の私に説教しているように、アティランは変わってしまった。
「ここは学園だろ?細けぇことはいいじゃねぇかよ。」
「…言葉使いも直すべきでは?」
ぶっきらぼうを感じつつも、以前より会話が出来ていた。
言葉使いも態度も隙の無い完璧な振る舞いではなく、人間味がある。
もっと話したい。
「もし気になるんなら俺に話しかけるのは辞めた方がいいな。」
…話し…掛けるな…ということなのか?
話したいと思っていたのは私だけ…なのか…。
「…ダンスそいつとするのか?」
「そいつって誰か分からねぇけど、ダンスは婚約者とするつもりだ。」
私が「そいつ」と言った時のアティランの目は鋭かった。
そんな目で見られたのは初めてだ。
私の知らないアティランを知るのは嬉しいが知る切っ掛けがあれだと思うと…。
それからアティランの意識から私が消え、そいつの首に夢中になっていた。
止めろっ。
私を観ろっ。
「ぉい…おいっ…聞こえないのか……何故だ…。」
「何故って婚約者だからだろ?」
「…私とは…」
「お前の相手はあそこにいるピンク頭だろ?…あいつ待ってんぞ。」
あそこと言いながら頭で指すなんて、私の知らないアティランだ。
視線で誰の事かを確認するも、思った通りの人物が期待した眼差しで私を見ていた。
そんな奴どうでもいい。
学園長の挨拶から始まり楽団による音楽に変わった。
一曲目のダンスはいつも私で、 視界に捉えた平民がそわそわと私を見ている姿があった。
アティランは壁際まで移動し私とする気は無いと言われているようだった。
注目される中、私は控え室へと戻っていき、後ろから平民が着いてくるも振り返ることはなかった。
途中、生徒会の者が「一曲目のダンスの準備をお願いします」と声をかけられたが断った。
今の私はアティラン以外とする気はなかった。
二階から見下ろすと一曲目の大役はアティランとあれが担っていた。
私の次に爵位の高い者といえば確かにアティランだ。
だからって…。
アティラン、お前はいつもダンスはしないだろうがっ。
これでは私が二人を御膳立てしたみたいじゃないか。
何なんだっ。
食い入るように二人のダンスを見続けた。
そして盛大な拍手の中、二人は唇を重ねた。
手すりを握る手に力が入る。
アイツの所為だアイツの…本当に邪魔だな。
退場する際もあいつを抱き抱えるように去っていった。
たかが、侯爵家の人間の分際でアティランに抱き抱えられるなんて…。
壁際に移動しても二人の距離は親密すぎている。
「いつも見られていると言うことを忘れてはいけない。」
昔、アティランに言われた言葉だった。
なのにお前は…。
二人を視線で追った。
アティランがそいつから離れたのを確認して急いで奴の所へ向かった。
偶然だ、偶然。
使うかどうかは分からないが学園パーティーの当日、ポケットにしのばせていた媚薬を眺めた。
私はこれを使ってしまうのか…。
これを使ってしまえばアティランはきっと私を軽蔑するだろう…。
それでも私は…。
入場までの時間を控え室に一人悩んでいた。
パーティーの開始が近付くにつれ、あの図々しい平民が纏わりつくようになったので誰も入れないよう見張りもつけた。
ソファに一人寛いでいると、入場が始まったのか合図があった。
王族は最後なので、焦る必用はない。
こんこんこん
ノックの合図でそろそろ私の順番を知る。
媚薬は…控え室に置いておいた。
持っていると誘惑に負け使ってしまいそうだったから…。
入場の扉前に行くと、アティランが入場していく姿を目撃した。
あれをエスコート…。
私は一人で入場した。
視線であの二人を探すも、二人は私に背を向けたまま一切こちらを見ることはなかった。
アティランはいつもこんな気分だったのか?
拍手や羨望の眼差しを受けるも、心地の良いものではなく中央まで歩けば人が遠ざかっていく。
私の視界にはあの二人しか居なかった。
どんなに近付いてもアティランは私に気付かなかった。
二人のじゃれあう後ろ姿…。
「お前は何をしているんだ?」
声をかけるつもりは無かったが、今すぐにでも二人を引き剥がしたかった。
振り向くアティランの瞳が漸く私を見た。
「ん?婚約者と戯れてる。」
視線は再び私から外れた。
「ん゛っ…少しは控えたらどうなんだっ公爵家ともあろう者が、はしたないっ」
過去の私に説教しているように、アティランは変わってしまった。
「ここは学園だろ?細けぇことはいいじゃねぇかよ。」
「…言葉使いも直すべきでは?」
ぶっきらぼうを感じつつも、以前より会話が出来ていた。
言葉使いも態度も隙の無い完璧な振る舞いではなく、人間味がある。
もっと話したい。
「もし気になるんなら俺に話しかけるのは辞めた方がいいな。」
…話し…掛けるな…ということなのか?
話したいと思っていたのは私だけ…なのか…。
「…ダンスそいつとするのか?」
「そいつって誰か分からねぇけど、ダンスは婚約者とするつもりだ。」
私が「そいつ」と言った時のアティランの目は鋭かった。
そんな目で見られたのは初めてだ。
私の知らないアティランを知るのは嬉しいが知る切っ掛けがあれだと思うと…。
それからアティランの意識から私が消え、そいつの首に夢中になっていた。
止めろっ。
私を観ろっ。
「ぉい…おいっ…聞こえないのか……何故だ…。」
「何故って婚約者だからだろ?」
「…私とは…」
「お前の相手はあそこにいるピンク頭だろ?…あいつ待ってんぞ。」
あそこと言いながら頭で指すなんて、私の知らないアティランだ。
視線で誰の事かを確認するも、思った通りの人物が期待した眼差しで私を見ていた。
そんな奴どうでもいい。
学園長の挨拶から始まり楽団による音楽に変わった。
一曲目のダンスはいつも私で、 視界に捉えた平民がそわそわと私を見ている姿があった。
アティランは壁際まで移動し私とする気は無いと言われているようだった。
注目される中、私は控え室へと戻っていき、後ろから平民が着いてくるも振り返ることはなかった。
途中、生徒会の者が「一曲目のダンスの準備をお願いします」と声をかけられたが断った。
今の私はアティラン以外とする気はなかった。
二階から見下ろすと一曲目の大役はアティランとあれが担っていた。
私の次に爵位の高い者といえば確かにアティランだ。
だからって…。
アティラン、お前はいつもダンスはしないだろうがっ。
これでは私が二人を御膳立てしたみたいじゃないか。
何なんだっ。
食い入るように二人のダンスを見続けた。
そして盛大な拍手の中、二人は唇を重ねた。
手すりを握る手に力が入る。
アイツの所為だアイツの…本当に邪魔だな。
退場する際もあいつを抱き抱えるように去っていった。
たかが、侯爵家の人間の分際でアティランに抱き抱えられるなんて…。
壁際に移動しても二人の距離は親密すぎている。
「いつも見られていると言うことを忘れてはいけない。」
昔、アティランに言われた言葉だった。
なのにお前は…。
二人を視線で追った。
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