152 / 177
リーヴェス アフェーレ
しおりを挟む
学園パーティー前日、私は偶然にも媚薬を手に入れた。
偶然だ、偶然。
使うかどうかは分からないが学園パーティーの当日、ポケットにしのばせていた媚薬を眺めた。
私はこれを使ってしまうのか…。
これを使ってしまえばアティランはきっと私を軽蔑するだろう…。
それでも私は…。
入場までの時間を控え室に一人悩んでいた。
パーティーの開始が近付くにつれ、あの図々しい平民が纏わりつくようになったので誰も入れないよう見張りもつけた。
ソファに一人寛いでいると、入場が始まったのか合図があった。
王族は最後なので、焦る必用はない。
こんこんこん
ノックの合図でそろそろ私の順番を知る。
媚薬は…控え室に置いておいた。
持っていると誘惑に負け使ってしまいそうだったから…。
入場の扉前に行くと、アティランが入場していく姿を目撃した。
あれをエスコート…。
私は一人で入場した。
視線であの二人を探すも、二人は私に背を向けたまま一切こちらを見ることはなかった。
アティランはいつもこんな気分だったのか?
拍手や羨望の眼差しを受けるも、心地の良いものではなく中央まで歩けば人が遠ざかっていく。
私の視界にはあの二人しか居なかった。
どんなに近付いてもアティランは私に気付かなかった。
二人のじゃれあう後ろ姿…。
「お前は何をしているんだ?」
声をかけるつもりは無かったが、今すぐにでも二人を引き剥がしたかった。
振り向くアティランの瞳が漸く私を見た。
「ん?婚約者と戯れてる。」
視線は再び私から外れた。
「ん゛っ…少しは控えたらどうなんだっ公爵家ともあろう者が、はしたないっ」
過去の私に説教しているように、アティランは変わってしまった。
「ここは学園だろ?細けぇことはいいじゃねぇかよ。」
「…言葉使いも直すべきでは?」
ぶっきらぼうを感じつつも、以前より会話が出来ていた。
言葉使いも態度も隙の無い完璧な振る舞いではなく、人間味がある。
もっと話したい。
「もし気になるんなら俺に話しかけるのは辞めた方がいいな。」
…話し…掛けるな…ということなのか?
話したいと思っていたのは私だけ…なのか…。
「…ダンスそいつとするのか?」
「そいつって誰か分からねぇけど、ダンスは婚約者とするつもりだ。」
私が「そいつ」と言った時のアティランの目は鋭かった。
そんな目で見られたのは初めてだ。
私の知らないアティランを知るのは嬉しいが知る切っ掛けがあれだと思うと…。
それからアティランの意識から私が消え、そいつの首に夢中になっていた。
止めろっ。
私を観ろっ。
「ぉい…おいっ…聞こえないのか……何故だ…。」
「何故って婚約者だからだろ?」
「…私とは…」
「お前の相手はあそこにいるピンク頭だろ?…あいつ待ってんぞ。」
あそこと言いながら頭で指すなんて、私の知らないアティランだ。
視線で誰の事かを確認するも、思った通りの人物が期待した眼差しで私を見ていた。
そんな奴どうでもいい。
学園長の挨拶から始まり楽団による音楽に変わった。
一曲目のダンスはいつも私で、 視界に捉えた平民がそわそわと私を見ている姿があった。
アティランは壁際まで移動し私とする気は無いと言われているようだった。
注目される中、私は控え室へと戻っていき、後ろから平民が着いてくるも振り返ることはなかった。
途中、生徒会の者が「一曲目のダンスの準備をお願いします」と声をかけられたが断った。
今の私はアティラン以外とする気はなかった。
二階から見下ろすと一曲目の大役はアティランとあれが担っていた。
私の次に爵位の高い者といえば確かにアティランだ。
だからって…。
アティラン、お前はいつもダンスはしないだろうがっ。
これでは私が二人を御膳立てしたみたいじゃないか。
何なんだっ。
食い入るように二人のダンスを見続けた。
そして盛大な拍手の中、二人は唇を重ねた。
手すりを握る手に力が入る。
アイツの所為だアイツの…本当に邪魔だな。
退場する際もあいつを抱き抱えるように去っていった。
たかが、侯爵家の人間の分際でアティランに抱き抱えられるなんて…。
壁際に移動しても二人の距離は親密すぎている。
「いつも見られていると言うことを忘れてはいけない。」
昔、アティランに言われた言葉だった。
なのにお前は…。
二人を視線で追った。
アティランがそいつから離れたのを確認して急いで奴の所へ向かった。
偶然だ、偶然。
使うかどうかは分からないが学園パーティーの当日、ポケットにしのばせていた媚薬を眺めた。
私はこれを使ってしまうのか…。
これを使ってしまえばアティランはきっと私を軽蔑するだろう…。
それでも私は…。
入場までの時間を控え室に一人悩んでいた。
パーティーの開始が近付くにつれ、あの図々しい平民が纏わりつくようになったので誰も入れないよう見張りもつけた。
ソファに一人寛いでいると、入場が始まったのか合図があった。
王族は最後なので、焦る必用はない。
こんこんこん
ノックの合図でそろそろ私の順番を知る。
媚薬は…控え室に置いておいた。
持っていると誘惑に負け使ってしまいそうだったから…。
入場の扉前に行くと、アティランが入場していく姿を目撃した。
あれをエスコート…。
私は一人で入場した。
視線であの二人を探すも、二人は私に背を向けたまま一切こちらを見ることはなかった。
アティランはいつもこんな気分だったのか?
拍手や羨望の眼差しを受けるも、心地の良いものではなく中央まで歩けば人が遠ざかっていく。
私の視界にはあの二人しか居なかった。
どんなに近付いてもアティランは私に気付かなかった。
二人のじゃれあう後ろ姿…。
「お前は何をしているんだ?」
声をかけるつもりは無かったが、今すぐにでも二人を引き剥がしたかった。
振り向くアティランの瞳が漸く私を見た。
「ん?婚約者と戯れてる。」
視線は再び私から外れた。
「ん゛っ…少しは控えたらどうなんだっ公爵家ともあろう者が、はしたないっ」
過去の私に説教しているように、アティランは変わってしまった。
「ここは学園だろ?細けぇことはいいじゃねぇかよ。」
「…言葉使いも直すべきでは?」
ぶっきらぼうを感じつつも、以前より会話が出来ていた。
言葉使いも態度も隙の無い完璧な振る舞いではなく、人間味がある。
もっと話したい。
「もし気になるんなら俺に話しかけるのは辞めた方がいいな。」
…話し…掛けるな…ということなのか?
話したいと思っていたのは私だけ…なのか…。
「…ダンスそいつとするのか?」
「そいつって誰か分からねぇけど、ダンスは婚約者とするつもりだ。」
私が「そいつ」と言った時のアティランの目は鋭かった。
そんな目で見られたのは初めてだ。
私の知らないアティランを知るのは嬉しいが知る切っ掛けがあれだと思うと…。
それからアティランの意識から私が消え、そいつの首に夢中になっていた。
止めろっ。
私を観ろっ。
「ぉい…おいっ…聞こえないのか……何故だ…。」
「何故って婚約者だからだろ?」
「…私とは…」
「お前の相手はあそこにいるピンク頭だろ?…あいつ待ってんぞ。」
あそこと言いながら頭で指すなんて、私の知らないアティランだ。
視線で誰の事かを確認するも、思った通りの人物が期待した眼差しで私を見ていた。
そんな奴どうでもいい。
学園長の挨拶から始まり楽団による音楽に変わった。
一曲目のダンスはいつも私で、 視界に捉えた平民がそわそわと私を見ている姿があった。
アティランは壁際まで移動し私とする気は無いと言われているようだった。
注目される中、私は控え室へと戻っていき、後ろから平民が着いてくるも振り返ることはなかった。
途中、生徒会の者が「一曲目のダンスの準備をお願いします」と声をかけられたが断った。
今の私はアティラン以外とする気はなかった。
二階から見下ろすと一曲目の大役はアティランとあれが担っていた。
私の次に爵位の高い者といえば確かにアティランだ。
だからって…。
アティラン、お前はいつもダンスはしないだろうがっ。
これでは私が二人を御膳立てしたみたいじゃないか。
何なんだっ。
食い入るように二人のダンスを見続けた。
そして盛大な拍手の中、二人は唇を重ねた。
手すりを握る手に力が入る。
アイツの所為だアイツの…本当に邪魔だな。
退場する際もあいつを抱き抱えるように去っていった。
たかが、侯爵家の人間の分際でアティランに抱き抱えられるなんて…。
壁際に移動しても二人の距離は親密すぎている。
「いつも見られていると言うことを忘れてはいけない。」
昔、アティランに言われた言葉だった。
なのにお前は…。
二人を視線で追った。
アティランがそいつから離れたのを確認して急いで奴の所へ向かった。
21
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる