【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒

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リーヴェス アフェーレ

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連休が明け、父から報告があった。

「アティラン グラキアスとエストレヤ イグニスが婚約した。」

頭を殴れたような衝撃で、言葉もなく立ち尽くしてしまった。

「こうなることが分かっていただろ?何故大切にしなかった?」

「………」

「新たな婚約者は決めておく。」

父は私の返事を待たず部屋を出ていった。

アティランが私の婚約者に戻ることはないのか?
どうして…。
学園に足を踏み入れると誰もが二人の婚約について噂していた。

アティラン、なぜ私を裏切った?

そんなにもあいつが良かったのか…私より?
どうしてだ…。
それからは悪夢のような日々が続いた。
食堂も中庭も二人は人目を気にせず戯れて、次第に私の居場所は無くなり出した。

アティランが第一王妃と考え、第二妃を狙っていた者達は優秀なアティランの後釜は無理だと早々に婚約を決め始めたと…。

生徒会は基本私がいなくても滞りなく進んでいた所、謹慎を短い間に数度受けたので完全に私はいない者になっていた。
私に近付いてくるのは状況を正しく判断できない、あの平民だけだった。

誰もが私を腫れ物扱いしているのを気付いていないのか?

この平民さえ現れなければこんなことにはならなかったのに…。
この愚かな平民は本当に私に愛され、妃に迎えられると考えているのか?
なんの教養も知識も後ろ楯も何もない人間が王族に嫁げるとでも?
どれだけ頭の中が空っぽなんだ。
身なりも平民の中では整っているのかもしれないが、アティランの足元にも及ばない。

よくそれで張り合おうと思ったものだ無謀にも程がある。

こんな者に振り回されるなんて…私が一番愚か者だな…。
もうすぐ学園パーティーが行われる。
アティランをエスコートすると決めた時には手遅れか…。
最近では隣に絡み付く平民の声を遮断する能力を身に付けた。
今も学園パーティーについて発言しているが私の耳には全く聞こえてはこなかった。

全ては雑音に過ぎなかった。

偶然生徒会の人間がアティランに話し掛ける場に遭遇し、咄嗟に隠れながら二人の会話を聞いた。

「俺は生徒会にも興味はないし、無理に記憶を戻したいとも思っていない。」

「…っ…」

「過去の俺に助けられたとか忘れていいから。」

「…そんな…」

そんな簡単に忘れられるものじゃない…。

「じゃあな。」

「…アフェーレ…殿下の…事は…?」

私の事…。

私の名前が出たことで無意識に身をのりだしアティランを確認した。

「…覚えてねぇな、何一つ。」

覚えてない…。
今のアティランにとって私はその程度…。

「殿下が別の人と婚約しても?」

「良いんじゃねぇの?」

………。

「…っ…」

「俺も婚約者居るからな。」

「………」

「話、それだけなら行くぜ?」

………。

アティランは生徒会にも来なければ過去の記憶にも未練がない…。
私に婚約者が決まろうと興味もない…。

あまりの衝撃にふらふらと歩いていた。
私が誰と婚約しようと誰と結婚しようとアティランは気にしない…。

なんであいつなんだ?

私が欲しかったアティランと私がしたかった恋愛をしている。
何年も一緒にいた私ではなく、そこら辺にいた奴に私は負けた…。
なんの取り柄もなさそうな…つまらない奴に…私は負けたのか…。
あいつが私からアティランを奪った。
私のアティランを返せ。

返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ。
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