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眠り続ける エストレヤ イグニス
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公爵様に肩を叩かれるまで僕はアティの側から離れなかった。
離れたくない。
アティが目覚めた時に傍にいられないことの方が怖い…。
僕は知ってる…。
グラキエス様が記憶を失くし初めて会ったのが僕…それで僕を気に入ってくれた。
僕はただ運が良かっただけ…。
もし、アティがまた記憶を失くしても最初に僕を見てくれれば…。
だがら、僕はアティの傍を離れたくなかった。
狡くても卑怯者でもいい、アティを離したくない。
アティはもう僕のだから、誰にも渡さない。
「アティランは公爵家に遷す。」
「ダメだ王宮で保護する。」
アフェーレ王子の突然の宣言に公爵様も驚いているように見えた。
「何故王宮です?アティランは、もう貴方の婚約者ではありませんよ。」
「記憶が戻れば、そちらも戻すのが当然だ。」
アティは…アフェーレ王子の婚約者に戻る…。
「私は許可できない。」
「王族に意見するのか?」
僕はもう公爵様とアフェーレ王子の会話に口を挟むことが出来なかった。
「アティランが記憶喪失になった原因をお忘れですか?」
「あれは事故だ、故意ではない。」
「それだけではありませんよね?」
「何が言いたい?」
「婚約者に戻しアティランをどうするつもりですか?」
「いずれは結婚し、共に国の繁栄に努めるつもりだ。」
「その為にアティランを利用しようと?」
「そのような言い方は相応しくない。アティランとなら共に国を支えられると判断したまでだ。」
「アフェーレ王子には別の方がいらっしゃるのではありませんか?」
「私の隣に相応しいのはアティランだ。」
「そうですね…あの方は全てにおいて劣っていますからね。政務をこなせるとは思えない。記憶を失ってもアティランは優秀です、あの方の代わりに優秀な人材が傍に必要と言うわけですね。」
「アティランが居れば他の者を傍に置くことはない。」
「…我々にそれを信じろと?」
「私を疑っているのか?」
「いえ、信じたいのですが…信じる要素が思い出せないんですよ。アティランの誕生日も社交デビューの日も私が共におりましたし、学園に入学した際もアティランは誰に頼ることがなかったと記憶しています。」
「……それは、互いに忙しかったんだ。」
「報告によると、アフェーレ王子は忙しいのにも関わらず有る特定の人物と常に共にしていると聞いておりますが。」
「…なにか勘違いしているんじゃないか?あれはただの…協力者だ。」
「協力者ですか?構わないんですよ、王族であれば側室の一人や二人認められています。しかし、私が許せないのは暴力を振るわれたことです。」
「…側室など設けることは考えていない…それに…あれは…本当に事故なんだ…。」
「事故ですか…その後のアティランの容態を尋ねることは一切有りませんでしたね。」
公爵の追求に王子は次第にしどろもどろになりだした。
「…それは…。」
「…アフェーレ王子の気遣いは有りがたいのですが、アティランは公爵家で保護しますのでご心配無く。」
「………」
二人の会話は終了し、アティは公爵家で療養することに決まった。
アティが運ばれている時のアフェーレ王子の表情は青白く、本当にアティを心配しているように見えた。
アフェーレ王子はアティの事をどう思っているんだろう?
アティも公爵様も能力だけを見込まれ婚約者となったと語っていたけど、今のアフェーレ王子を見ると本当にアティの事を…。
だけど、それだとフレルト様との関係が…。
アティが記憶喪失になった時、アフェーレ王子とフレルト様は一緒にいて常に二人は身体を寄せ有っていたと噂になっていた。
噂が全て真実ではないにしろ、その場に二人がいたのは確かなのだろう。
なのに、アティが記憶喪失になってから王子とフレルト様を一緒に見ることはなくなった。
そもそもアフェーレ王子も僕やアティも学園を休むことが多かったのもある。
色々有って、たまたま二人を見ていなかったのかも…。
…二人が別れたということはないよね?
別れていたら…。
もしかして…だから、アフェーレ王子はアティと婚約し直したいって事なのかな?
その後、目覚めていないアティは公爵家に遷され、公爵様のご厚意により僕は公爵家に滞在することになった。
アティは公爵家の自身の部屋で眠り続けている。
目立った傷もなく、本当に眠っているだけだった。
記憶の方は本人が目覚めてからじゃなきゃ分からない…。
アティが目覚めない事も、今までの僕達を覚えていないかも知れない事も不安で不安で仕方がなかった。
「アティ…僕の事、忘れないで。」
眠るアティにキスをした。
観劇では眠り続ける愛する人にキスをすると真実の愛で目覚めるものなのに、アティは僕のキスでは起きなかった。
「アティ…起きて…僕の事…好きじゃないの?…アティ…。」
離れたくない。
アティが目覚めた時に傍にいられないことの方が怖い…。
僕は知ってる…。
グラキエス様が記憶を失くし初めて会ったのが僕…それで僕を気に入ってくれた。
僕はただ運が良かっただけ…。
もし、アティがまた記憶を失くしても最初に僕を見てくれれば…。
だがら、僕はアティの傍を離れたくなかった。
狡くても卑怯者でもいい、アティを離したくない。
アティはもう僕のだから、誰にも渡さない。
「アティランは公爵家に遷す。」
「ダメだ王宮で保護する。」
アフェーレ王子の突然の宣言に公爵様も驚いているように見えた。
「何故王宮です?アティランは、もう貴方の婚約者ではありませんよ。」
「記憶が戻れば、そちらも戻すのが当然だ。」
アティは…アフェーレ王子の婚約者に戻る…。
「私は許可できない。」
「王族に意見するのか?」
僕はもう公爵様とアフェーレ王子の会話に口を挟むことが出来なかった。
「アティランが記憶喪失になった原因をお忘れですか?」
「あれは事故だ、故意ではない。」
「それだけではありませんよね?」
「何が言いたい?」
「婚約者に戻しアティランをどうするつもりですか?」
「いずれは結婚し、共に国の繁栄に努めるつもりだ。」
「その為にアティランを利用しようと?」
「そのような言い方は相応しくない。アティランとなら共に国を支えられると判断したまでだ。」
「アフェーレ王子には別の方がいらっしゃるのではありませんか?」
「私の隣に相応しいのはアティランだ。」
「そうですね…あの方は全てにおいて劣っていますからね。政務をこなせるとは思えない。記憶を失ってもアティランは優秀です、あの方の代わりに優秀な人材が傍に必要と言うわけですね。」
「アティランが居れば他の者を傍に置くことはない。」
「…我々にそれを信じろと?」
「私を疑っているのか?」
「いえ、信じたいのですが…信じる要素が思い出せないんですよ。アティランの誕生日も社交デビューの日も私が共におりましたし、学園に入学した際もアティランは誰に頼ることがなかったと記憶しています。」
「……それは、互いに忙しかったんだ。」
「報告によると、アフェーレ王子は忙しいのにも関わらず有る特定の人物と常に共にしていると聞いておりますが。」
「…なにか勘違いしているんじゃないか?あれはただの…協力者だ。」
「協力者ですか?構わないんですよ、王族であれば側室の一人や二人認められています。しかし、私が許せないのは暴力を振るわれたことです。」
「…側室など設けることは考えていない…それに…あれは…本当に事故なんだ…。」
「事故ですか…その後のアティランの容態を尋ねることは一切有りませんでしたね。」
公爵の追求に王子は次第にしどろもどろになりだした。
「…それは…。」
「…アフェーレ王子の気遣いは有りがたいのですが、アティランは公爵家で保護しますのでご心配無く。」
「………」
二人の会話は終了し、アティは公爵家で療養することに決まった。
アティが運ばれている時のアフェーレ王子の表情は青白く、本当にアティを心配しているように見えた。
アフェーレ王子はアティの事をどう思っているんだろう?
アティも公爵様も能力だけを見込まれ婚約者となったと語っていたけど、今のアフェーレ王子を見ると本当にアティの事を…。
だけど、それだとフレルト様との関係が…。
アティが記憶喪失になった時、アフェーレ王子とフレルト様は一緒にいて常に二人は身体を寄せ有っていたと噂になっていた。
噂が全て真実ではないにしろ、その場に二人がいたのは確かなのだろう。
なのに、アティが記憶喪失になってから王子とフレルト様を一緒に見ることはなくなった。
そもそもアフェーレ王子も僕やアティも学園を休むことが多かったのもある。
色々有って、たまたま二人を見ていなかったのかも…。
…二人が別れたということはないよね?
別れていたら…。
もしかして…だから、アフェーレ王子はアティと婚約し直したいって事なのかな?
その後、目覚めていないアティは公爵家に遷され、公爵様のご厚意により僕は公爵家に滞在することになった。
アティは公爵家の自身の部屋で眠り続けている。
目立った傷もなく、本当に眠っているだけだった。
記憶の方は本人が目覚めてからじゃなきゃ分からない…。
アティが目覚めない事も、今までの僕達を覚えていないかも知れない事も不安で不安で仕方がなかった。
「アティ…僕の事、忘れないで。」
眠るアティにキスをした。
観劇では眠り続ける愛する人にキスをすると真実の愛で目覚めるものなのに、アティは僕のキスでは起きなかった。
「アティ…起きて…僕の事…好きじゃないの?…アティ…。」
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