124 / 177
覗きました…その…ごめんなさい…ネイビーブルーの者です
しおりを挟む
男爵家の僕は爵位の中でも当然下位だけど、男爵の中でも下位であり部屋は二人部屋だった。
相手は男爵家の人だけど余り仲良くはない。
部屋に戻ると彼と二人きりになり、なんとなく上下関係が生まれていたのでなるべく構内にいて良いギリギリの時間まで校舎をうろうろしていた。
図書館や教室は高位貴族の方々と鉢合わせることがあり居心地が余り良くない。
僕はなるべく誰ともか変わる事なく一人でいたかった。
そこでようやく見つけたのが個別室だった。
個別室に来る人は少なく、例え居たとしても使っている部屋を覗く者は居ない。
今日も僕は一人ギリギリまで個別室で時間を過ごすつもりだった。
いつも使っていた部屋の扉が少し空いていたので、先客が居るのかと深く考えず隙間から覗いてしまった。
普段なら覗きなんてしないのに、なんで覗いてしまったんだ…。
部屋からは「あんっんんぁん」と聞きなれない声が聞こえた。
叫び声とも違う種類の声に犯罪?と不審に思い中の様子を真剣に覗いてしまった。
誰かがソファに倒され衣服が剥ぎ取られていく。
強姦?
あまりの恐怖に足も動けず声も喉に張り付き叫ぶことも出来なかった。
助けてあげたいのに身体が強張って、僕の思いどおりに動いてくれない。
彼を助けたいのに弱虫の僕には何も出来なかった。
「んっんふぅんんっんっ…アティんっんやぁんそれっ」
「香油がねぇんだ。」
「ん~んっ」
「次は用意しておく。」
「んっ…ふぁっ…んっもっ…してっ。」
「まだ、だめ解れてないだろ。」
「ん~ん゛っん~」
彼らの会話に疑問が生まれた。
襲われていると思っていた子から「もう、して」と催促していたからだ。
拒絶の言葉ではなく求める発言に困惑した。
僕の聞き間違いなのだろうか…。
良く見ようと二人の顔を確認するも覆い被さっている人の後ろ姿しか分からなかった。
覆い被さっている人の髪色はプラチナブロンド…この学園にはとても珍しい髪色。
そしてソファで顔を隠しているが押し倒された彼の髪色は燃えるように赤い髪色だった。
僕は知っている。
いや、僕だけでなくこの学園にいる者なら全員が知っているであろう婚約者達だ。
彼らの名は、グラキエス様とイグニス様だ。
今現在この学園の噂は彼ら中心に回っている。
グラキエス様は王子の婚約解消に記憶喪失、その後イグニス様との婚約。
そして二人の親密すぎる距離。
誰もが驚き困惑し目を離すことが出来ない二人。
グラキエス様の変わり様や、イグニス様の妖艶な表情。
そして、厳格すぎる学園での心を乱すような情景。
婚約者に対しても距離を取り潔癖すぎるような風潮があったのは、王子とグラキエス様を見て多くの人たちが手本にしていたからだ。
それが浸透しきっている中での二人の関係はとても刺激が強かった。
誰の目も気にせず抱き合い唇を重ね合う二人。
このような行動が許されるのか頭が追い付かなかった。
確かに教師からその様な注意を受けたことはないが、高位貴族のグラキエス様と王子を手本にするのが暗黙の了解だった。
その手本が崩れ、グラキエス様は…。
僕には婚約者も恋人もいないから、イチャつく事に対して何も思わなかったし深くは考えていなかったけど…。
こんな光景を偶然見てしまい、学園でこんなこと…風紀がぁなんて考える余裕はなかった。
僕は先程以上に身体が硬直し声もでなかった…というより出さないよう必死だった。
「何見てんの?」
「ひゃっん゛ん゛ん゛ん゛ん゛。」
突然後ろからの声に叫び声をあげそうになった。
「声だしたらバレちゃうよ。」
背後にいる人物に口を覆われ叫び声はなんとか押さえ、部屋の中にいる二人にも気付かれずにすんだ。
「んんんん。」
「んーおっ…へぇ~」
中を覗き見るこの人の目は何だかイヤらしかった。
こんな人に二人の情事を見せて良いのか?
僕が引き剥がすべき?
「………」
「あの二人の情事を盗み見してたの?」
「ちっちがっ」
それはあんたでしょ。
「どっちに興味があるの?冷血公爵?それとも性悪侯爵?」
「違いまっ…。」
変なことを言われ小声ではなくなりそうになり、再び口を塞がれた。
バレた?
「んああ゛んん゛っん」
確認の為に聞き耳をたてれば中から艶っぽい声に意識を持っていかれ、部屋の様子を覗いてしまった。
色白の細くて長い脚がグラキエス様の身体に絡み付く。
僕は知らない行為だけど、グラキエス様の動きも卑猥に見えてくる。
あのグラキエス様が…。
「いつまでもここで見てるわけにはいかねぇぞ。」
この男の言う通りだった。
「来いよ。」
硬直していた僕を扉から離し、男の人が静かに扉を閉める所を眺めていた。
誘導されるように見知らぬ男に肩を抱かれながら隣の個別室に入っていた。
鉛のように動かなかった脚が動くようになっていたことに気付き、更にこの男に抱き寄せられている現状を理解した。
「ちょっあのぉ…」
「ん?」
「離れて。」
僕よりも二十センチは背が高く、身体の大きい彼の胸を押し退けた。
「んで、なんで覗きなんか?」
「覗きなんて…」
誤解だ、僕は覗くつもりじゃなかった。
「覗いてたろ?」
「違うっ扉が開いてて。」
「…開いてた?」
「開いてたんです。」
「………」
目の前の男の人は、疑った目で僕を見てる。
きっと僕が扉を開けて覗いたって思われてる。
違うのに。
本当に扉は開いてたのっ。
「それであの二人の行為を覗き続けたのか?」
「…ビックリして…脚が動かなくなっちゃって…。」
「ふぅん」
「本当ですっ。」
嘘じゃないのに、必死になればなるほど自分でも嘘っぽく感じる。
「ふぅん。」
「なっ何ですか………ぁっ」
距離を詰められ後ずさるも、壁に遮られ逃げ場を失い状況確認で男から視線を外し隙を見せてしまい、顔の横に手をつかれ相手の顔が近付いていた。
怖くて首をすくめて顔を背けた。
「…ひゃん」
男が怖くて顔を背けると、無防備になった首を舐められてへんな声出してしまった。
「同じ事してみる?」
耳元で囁くように言われる。
混乱している頭では言葉の意味を理解するのに時間が掛かってしまった。
返事を出来ずにいると、僕のものが突然刺激を受けた。
何が起きたのか確認するとズボンの上から大きな手で覆われている。
「あっあっやっやめっ」
「固くなってる。」
「…あっ…あっ…こっ…」
「二人の見て興奮してたんだろ?」
「…ちがぃます。」
「ホントに?」
「んぁっんん。」
僕の言葉を否定するように、僕のを確りと握られた。
僕自身気付いていなかったが、確かに僕のものは固く反応し主張している。
「素直になれよ。」
「…やめっ…んっ」
男の顔が首元にあり息が掛かる。
腕と顔で左右を塞がれ僕のモノも人質に取られ逃げられない。
「良い匂いだな。」
「や…やめて…ください。」
この場から解放されたくて、男にお願いするしかなかった。
「ん~こういうことに興味があるんじゃないのか?」
「ごめんなさい。」
「なんで謝るんだよ。」
「もう…覗かないから…。」
許してください。
「そんなに怖がんなよ、気持ち良くなろうぜ。」
「……こわっい…」
つい本当の言葉を口にしてしまった。
「怖くねぇよ…したことあんだろ?」
「………」
したことって何を?
貴族は貞節を重んじられるから、婚約者のいない僕が…そんなことしたことない。
…自慰の事?
「ねぇのか?」
自慰の事だとしても…。
「………」
そんなこと恥ずかしくて答えられない。
「誰かに触れられるのは?」
誰かに触れられたことなんてないっ。
勢いよく僕は首を振った。
「そっか。」
男は僕の答えに楽しんでいるように思えた。
「来いよ。」
男の手に引っ張られ、ソファの背凭れに寄り掛かる男に後から抱きしめられ、再び僕のモノを握られた。
相手の手が僕のに触れると予感していたことなのに「ぁん」と啼いてしまった。
本当なら逃げたかったが、相手が急に暴力とか振るうんじゃないかと怖くて大人しく男の腕の中にいた。
「気持ちいいのを追いかけてれば良い。」
無理矢理なはずなのに男の声を優しいと感じてしまった。
片腕で僕の事を抱きしめて、もう片方の手で握られる。
布越しなので触られている感覚はあるが、なんか…もどかしい。
「直接触って良い?」
直接?
直接って僕のを触るってこと?
「………」
どうしてこんなこと?
「触りたいんだけどダメ?」
「………」
ダメ?
ダメじゃない…って思っている自分がいる。
どうして?怖いって思ってるのに…手が優しいから?
…どうしよう…。
返事をせず悩んでいたら、ズボンに手を掛けられパンツの中にするりと手が入っていった。
「ぁっ…」
逃げ場のないパンツの中で呆気なく囚われ、握る強弱をつけ扱かれる。
他人の手を知らないそこは、恥ずかしいくらい簡単に反応を強め僕はいつの間にか僕を拘束している男の腕にしがみついていた。
「パンツから出して良い?」
パンツから出す?
ってどういう意味だ?
パンツから出す…。
…だめっ、見られちゃうと思い僕は慌てて首を振った。
「ならパンツの中に出す?気持ち悪くないか?」
パンツの中に出す…?
パンツの中に出す…あっあれを?あれを出すってこと?
それは…ちょっとヤダ。
ここは学園だし、寮まで距離有るし漏らしたみたいで恥ずかしい。
「…どうしよう…。」
「パンツから出してイッた方が気持ちいいぜ。」
「………」
「見られんのが恥ずかしいのか?」
「ん」
「皆同じだろ?」
ふと男のものを背中に感じ反応して固くなっているのがわかった。
「俺のも見る?」
反射的に首を振った。
他人のなんて見たことないし…怖くて観ることができない。
「そっ、残念。見たかったらいつでも言えよ。」
「………」
この人の事がわからない。
なぜそんなことを言うのか。
言ったら見せてくれるの?
僕達ってどういう関係?
「なぁ、パンツから出すぞ?」
返答に困っていると、僕の許可無しにズボンとパンツが下ろされてしまった。
「ぁっ…見ないで。」
「止めて」ではなく「見ないで」と言っていた。
「皆同じだから気にすんなよ……チュッ」
首筋にキスされた。
なんでキス?
どうして僕にキスするの?
わかんない。
どういう事?
外気に触れ露出しているのを体感し、次第に脚が内股になっていく。
男は僕のを包み込み、摘まんだり先端をグリグリしたりと様々な刺激を与えてくる。
自分でするより気持ちいい。
「だっめ…でちゃ…。」
「出せよ。」
人に見られてイクなんてしたことないし、見せるもんじゃないよね?
婚約者でもない人に…そんなこと出来ない…恥ずかしい。
僕が必死に我慢していると、摘まむ手に力が込められ爪まで使い痛みのような刺激に翻弄される。
男の腕に縋り付き「あぁん」とイッてしまった。
「はぁはぁはぁはぁ」
呼吸が乱れる。
初めて他人の手でイカされ更に…見られてしまった…。
「気持ちよかった?」
後から確り抱きしめられ顔が近くにあり、僕はいつの間にか後ろの男に完全に体重を預けていた。
急な展開についていけず、素直に「うん」と頷いてしまった。
僕のものを握っていた手が僕の放ったものを掬い取り、何が起こるのか先の読めない展開に男の手を追っていた。
男の指が綺麗だなぁと眺めながら何をするが見続けると、相手の顔が視界に入る。
この人…こんなに格好良かったんだ。
グレーの髪に瞳。
口が色っぽいな…え?
「だめっ…ぁっ」
男は僕の目の前で僕の出したものがついた指を舐めた。
「………」
あんなものは舐めるものじゃないのに…。
あまりの出来事に止めたかったのに男の唇を見つめてしまっていた。
「…お前名前は?」
名前…僕の名前…頭が理解できない状況でも、今自分の名前は答えてはいけない気がするのはなんとなくわかった。
けど、知って欲しいという思いもあった。
なんでだろう…。
僕は無理矢理されたのに…。
きっと、学園に通って名前を聞かれるなんて久しぶりだったからだ。
かろうじて貴族に引っ掛かっている僕なんて、ちゃんとした貴族からしたら認めない存在で興味すらもたれない。
この学園で僕の名前を知っている人は両手…いや片手くらいかもしれない。
「………」
「良いのか?公爵家と侯爵家の情事を覗いてたってバラされても。」
男に絆されたわけじゃないけど、気を許してしまった所を途端に脅された。
やっぱり信じちゃいけなかったんだ…。
この人は悪い人…。
「…っカ…カラン ベヌスタ…です。」
観念し名前を名乗った。
これがどういう事になるかはまだ想像できないが、良くないことだと言うのは理解していた。
「カランね、カラン明日もここに来いよ。」
初対面なのに下の名前?
「…それはっ…」
明日も今日のように?
「あの二人には黙っててやるよ。」
「………はい。」
僕は頷くしかなかった。
二人とはグラキエス様とイグニス様のことだろう。
そんな二人の情事を覗いてしまいましたなんて…彼ら二人は高位貴族。
雲の上のような人達の情事を盗み見たなんて知られたら…。
僕はもうこの人から逃げられなくなった。
「じゃあ明日。」
男は僕を置いて出ていった。
はしたなく僕のものは露出したままだ。
どうしてこうなってしまったの?
僕はただ、一人になりたくて来ただけなのに…。
僕のが先にあの場所を使ってたのに…。
いつも部屋に入ろうとしたら先客がいて動けずにいただけなのに…。
どうしてこんな目に…。
知らないうちに涙がこぼれた。
家族意外の人に名前を呼ばれたのに嬉しいことはなく、恐怖だけだった。
相手は男爵家の人だけど余り仲良くはない。
部屋に戻ると彼と二人きりになり、なんとなく上下関係が生まれていたのでなるべく構内にいて良いギリギリの時間まで校舎をうろうろしていた。
図書館や教室は高位貴族の方々と鉢合わせることがあり居心地が余り良くない。
僕はなるべく誰ともか変わる事なく一人でいたかった。
そこでようやく見つけたのが個別室だった。
個別室に来る人は少なく、例え居たとしても使っている部屋を覗く者は居ない。
今日も僕は一人ギリギリまで個別室で時間を過ごすつもりだった。
いつも使っていた部屋の扉が少し空いていたので、先客が居るのかと深く考えず隙間から覗いてしまった。
普段なら覗きなんてしないのに、なんで覗いてしまったんだ…。
部屋からは「あんっんんぁん」と聞きなれない声が聞こえた。
叫び声とも違う種類の声に犯罪?と不審に思い中の様子を真剣に覗いてしまった。
誰かがソファに倒され衣服が剥ぎ取られていく。
強姦?
あまりの恐怖に足も動けず声も喉に張り付き叫ぶことも出来なかった。
助けてあげたいのに身体が強張って、僕の思いどおりに動いてくれない。
彼を助けたいのに弱虫の僕には何も出来なかった。
「んっんふぅんんっんっ…アティんっんやぁんそれっ」
「香油がねぇんだ。」
「ん~んっ」
「次は用意しておく。」
「んっ…ふぁっ…んっもっ…してっ。」
「まだ、だめ解れてないだろ。」
「ん~ん゛っん~」
彼らの会話に疑問が生まれた。
襲われていると思っていた子から「もう、して」と催促していたからだ。
拒絶の言葉ではなく求める発言に困惑した。
僕の聞き間違いなのだろうか…。
良く見ようと二人の顔を確認するも覆い被さっている人の後ろ姿しか分からなかった。
覆い被さっている人の髪色はプラチナブロンド…この学園にはとても珍しい髪色。
そしてソファで顔を隠しているが押し倒された彼の髪色は燃えるように赤い髪色だった。
僕は知っている。
いや、僕だけでなくこの学園にいる者なら全員が知っているであろう婚約者達だ。
彼らの名は、グラキエス様とイグニス様だ。
今現在この学園の噂は彼ら中心に回っている。
グラキエス様は王子の婚約解消に記憶喪失、その後イグニス様との婚約。
そして二人の親密すぎる距離。
誰もが驚き困惑し目を離すことが出来ない二人。
グラキエス様の変わり様や、イグニス様の妖艶な表情。
そして、厳格すぎる学園での心を乱すような情景。
婚約者に対しても距離を取り潔癖すぎるような風潮があったのは、王子とグラキエス様を見て多くの人たちが手本にしていたからだ。
それが浸透しきっている中での二人の関係はとても刺激が強かった。
誰の目も気にせず抱き合い唇を重ね合う二人。
このような行動が許されるのか頭が追い付かなかった。
確かに教師からその様な注意を受けたことはないが、高位貴族のグラキエス様と王子を手本にするのが暗黙の了解だった。
その手本が崩れ、グラキエス様は…。
僕には婚約者も恋人もいないから、イチャつく事に対して何も思わなかったし深くは考えていなかったけど…。
こんな光景を偶然見てしまい、学園でこんなこと…風紀がぁなんて考える余裕はなかった。
僕は先程以上に身体が硬直し声もでなかった…というより出さないよう必死だった。
「何見てんの?」
「ひゃっん゛ん゛ん゛ん゛ん゛。」
突然後ろからの声に叫び声をあげそうになった。
「声だしたらバレちゃうよ。」
背後にいる人物に口を覆われ叫び声はなんとか押さえ、部屋の中にいる二人にも気付かれずにすんだ。
「んんんん。」
「んーおっ…へぇ~」
中を覗き見るこの人の目は何だかイヤらしかった。
こんな人に二人の情事を見せて良いのか?
僕が引き剥がすべき?
「………」
「あの二人の情事を盗み見してたの?」
「ちっちがっ」
それはあんたでしょ。
「どっちに興味があるの?冷血公爵?それとも性悪侯爵?」
「違いまっ…。」
変なことを言われ小声ではなくなりそうになり、再び口を塞がれた。
バレた?
「んああ゛んん゛っん」
確認の為に聞き耳をたてれば中から艶っぽい声に意識を持っていかれ、部屋の様子を覗いてしまった。
色白の細くて長い脚がグラキエス様の身体に絡み付く。
僕は知らない行為だけど、グラキエス様の動きも卑猥に見えてくる。
あのグラキエス様が…。
「いつまでもここで見てるわけにはいかねぇぞ。」
この男の言う通りだった。
「来いよ。」
硬直していた僕を扉から離し、男の人が静かに扉を閉める所を眺めていた。
誘導されるように見知らぬ男に肩を抱かれながら隣の個別室に入っていた。
鉛のように動かなかった脚が動くようになっていたことに気付き、更にこの男に抱き寄せられている現状を理解した。
「ちょっあのぉ…」
「ん?」
「離れて。」
僕よりも二十センチは背が高く、身体の大きい彼の胸を押し退けた。
「んで、なんで覗きなんか?」
「覗きなんて…」
誤解だ、僕は覗くつもりじゃなかった。
「覗いてたろ?」
「違うっ扉が開いてて。」
「…開いてた?」
「開いてたんです。」
「………」
目の前の男の人は、疑った目で僕を見てる。
きっと僕が扉を開けて覗いたって思われてる。
違うのに。
本当に扉は開いてたのっ。
「それであの二人の行為を覗き続けたのか?」
「…ビックリして…脚が動かなくなっちゃって…。」
「ふぅん」
「本当ですっ。」
嘘じゃないのに、必死になればなるほど自分でも嘘っぽく感じる。
「ふぅん。」
「なっ何ですか………ぁっ」
距離を詰められ後ずさるも、壁に遮られ逃げ場を失い状況確認で男から視線を外し隙を見せてしまい、顔の横に手をつかれ相手の顔が近付いていた。
怖くて首をすくめて顔を背けた。
「…ひゃん」
男が怖くて顔を背けると、無防備になった首を舐められてへんな声出してしまった。
「同じ事してみる?」
耳元で囁くように言われる。
混乱している頭では言葉の意味を理解するのに時間が掛かってしまった。
返事を出来ずにいると、僕のものが突然刺激を受けた。
何が起きたのか確認するとズボンの上から大きな手で覆われている。
「あっあっやっやめっ」
「固くなってる。」
「…あっ…あっ…こっ…」
「二人の見て興奮してたんだろ?」
「…ちがぃます。」
「ホントに?」
「んぁっんん。」
僕の言葉を否定するように、僕のを確りと握られた。
僕自身気付いていなかったが、確かに僕のものは固く反応し主張している。
「素直になれよ。」
「…やめっ…んっ」
男の顔が首元にあり息が掛かる。
腕と顔で左右を塞がれ僕のモノも人質に取られ逃げられない。
「良い匂いだな。」
「や…やめて…ください。」
この場から解放されたくて、男にお願いするしかなかった。
「ん~こういうことに興味があるんじゃないのか?」
「ごめんなさい。」
「なんで謝るんだよ。」
「もう…覗かないから…。」
許してください。
「そんなに怖がんなよ、気持ち良くなろうぜ。」
「……こわっい…」
つい本当の言葉を口にしてしまった。
「怖くねぇよ…したことあんだろ?」
「………」
したことって何を?
貴族は貞節を重んじられるから、婚約者のいない僕が…そんなことしたことない。
…自慰の事?
「ねぇのか?」
自慰の事だとしても…。
「………」
そんなこと恥ずかしくて答えられない。
「誰かに触れられるのは?」
誰かに触れられたことなんてないっ。
勢いよく僕は首を振った。
「そっか。」
男は僕の答えに楽しんでいるように思えた。
「来いよ。」
男の手に引っ張られ、ソファの背凭れに寄り掛かる男に後から抱きしめられ、再び僕のモノを握られた。
相手の手が僕のに触れると予感していたことなのに「ぁん」と啼いてしまった。
本当なら逃げたかったが、相手が急に暴力とか振るうんじゃないかと怖くて大人しく男の腕の中にいた。
「気持ちいいのを追いかけてれば良い。」
無理矢理なはずなのに男の声を優しいと感じてしまった。
片腕で僕の事を抱きしめて、もう片方の手で握られる。
布越しなので触られている感覚はあるが、なんか…もどかしい。
「直接触って良い?」
直接?
直接って僕のを触るってこと?
「………」
どうしてこんなこと?
「触りたいんだけどダメ?」
「………」
ダメ?
ダメじゃない…って思っている自分がいる。
どうして?怖いって思ってるのに…手が優しいから?
…どうしよう…。
返事をせず悩んでいたら、ズボンに手を掛けられパンツの中にするりと手が入っていった。
「ぁっ…」
逃げ場のないパンツの中で呆気なく囚われ、握る強弱をつけ扱かれる。
他人の手を知らないそこは、恥ずかしいくらい簡単に反応を強め僕はいつの間にか僕を拘束している男の腕にしがみついていた。
「パンツから出して良い?」
パンツから出す?
ってどういう意味だ?
パンツから出す…。
…だめっ、見られちゃうと思い僕は慌てて首を振った。
「ならパンツの中に出す?気持ち悪くないか?」
パンツの中に出す…?
パンツの中に出す…あっあれを?あれを出すってこと?
それは…ちょっとヤダ。
ここは学園だし、寮まで距離有るし漏らしたみたいで恥ずかしい。
「…どうしよう…。」
「パンツから出してイッた方が気持ちいいぜ。」
「………」
「見られんのが恥ずかしいのか?」
「ん」
「皆同じだろ?」
ふと男のものを背中に感じ反応して固くなっているのがわかった。
「俺のも見る?」
反射的に首を振った。
他人のなんて見たことないし…怖くて観ることができない。
「そっ、残念。見たかったらいつでも言えよ。」
「………」
この人の事がわからない。
なぜそんなことを言うのか。
言ったら見せてくれるの?
僕達ってどういう関係?
「なぁ、パンツから出すぞ?」
返答に困っていると、僕の許可無しにズボンとパンツが下ろされてしまった。
「ぁっ…見ないで。」
「止めて」ではなく「見ないで」と言っていた。
「皆同じだから気にすんなよ……チュッ」
首筋にキスされた。
なんでキス?
どうして僕にキスするの?
わかんない。
どういう事?
外気に触れ露出しているのを体感し、次第に脚が内股になっていく。
男は僕のを包み込み、摘まんだり先端をグリグリしたりと様々な刺激を与えてくる。
自分でするより気持ちいい。
「だっめ…でちゃ…。」
「出せよ。」
人に見られてイクなんてしたことないし、見せるもんじゃないよね?
婚約者でもない人に…そんなこと出来ない…恥ずかしい。
僕が必死に我慢していると、摘まむ手に力が込められ爪まで使い痛みのような刺激に翻弄される。
男の腕に縋り付き「あぁん」とイッてしまった。
「はぁはぁはぁはぁ」
呼吸が乱れる。
初めて他人の手でイカされ更に…見られてしまった…。
「気持ちよかった?」
後から確り抱きしめられ顔が近くにあり、僕はいつの間にか後ろの男に完全に体重を預けていた。
急な展開についていけず、素直に「うん」と頷いてしまった。
僕のものを握っていた手が僕の放ったものを掬い取り、何が起こるのか先の読めない展開に男の手を追っていた。
男の指が綺麗だなぁと眺めながら何をするが見続けると、相手の顔が視界に入る。
この人…こんなに格好良かったんだ。
グレーの髪に瞳。
口が色っぽいな…え?
「だめっ…ぁっ」
男は僕の目の前で僕の出したものがついた指を舐めた。
「………」
あんなものは舐めるものじゃないのに…。
あまりの出来事に止めたかったのに男の唇を見つめてしまっていた。
「…お前名前は?」
名前…僕の名前…頭が理解できない状況でも、今自分の名前は答えてはいけない気がするのはなんとなくわかった。
けど、知って欲しいという思いもあった。
なんでだろう…。
僕は無理矢理されたのに…。
きっと、学園に通って名前を聞かれるなんて久しぶりだったからだ。
かろうじて貴族に引っ掛かっている僕なんて、ちゃんとした貴族からしたら認めない存在で興味すらもたれない。
この学園で僕の名前を知っている人は両手…いや片手くらいかもしれない。
「………」
「良いのか?公爵家と侯爵家の情事を覗いてたってバラされても。」
男に絆されたわけじゃないけど、気を許してしまった所を途端に脅された。
やっぱり信じちゃいけなかったんだ…。
この人は悪い人…。
「…っカ…カラン ベヌスタ…です。」
観念し名前を名乗った。
これがどういう事になるかはまだ想像できないが、良くないことだと言うのは理解していた。
「カランね、カラン明日もここに来いよ。」
初対面なのに下の名前?
「…それはっ…」
明日も今日のように?
「あの二人には黙っててやるよ。」
「………はい。」
僕は頷くしかなかった。
二人とはグラキエス様とイグニス様のことだろう。
そんな二人の情事を覗いてしまいましたなんて…彼ら二人は高位貴族。
雲の上のような人達の情事を盗み見たなんて知られたら…。
僕はもうこの人から逃げられなくなった。
「じゃあ明日。」
男は僕を置いて出ていった。
はしたなく僕のものは露出したままだ。
どうしてこうなってしまったの?
僕はただ、一人になりたくて来ただけなのに…。
僕のが先にあの場所を使ってたのに…。
いつも部屋に入ろうとしたら先客がいて動けずにいただけなのに…。
どうしてこんな目に…。
知らないうちに涙がこぼれた。
家族意外の人に名前を呼ばれたのに嬉しいことはなく、恐怖だけだった。
33
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる