【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒

文字の大きさ
上 下
115 / 177

余計目立ってる

しおりを挟む
再びシャワーを浴びて今回はバスローブではなく服を着た、でないと終わりがない。
エストレヤには当然俺の服を着せ、食堂まで腰に腕を回して歩くのは俺のものだと言う宣言でもあるが、抱き続け膝立ちにさせたのでエストレヤは今足元をふらつかせていた。

心配で抱き上げると言ったが拒まれてしまった。

俺にしがみつきながらフラフラと歩く姿は、誰が見ても先程までしてましたと言っているようなもの。
午後の授業もサボったんだ今の俺達の姿をみたら完全に何をしていたかバレているだろう。
エストレヤは目立ちたくなくて歩くと言ったのかもしれないが、俺に確り捕まりフラフラする姿は余計目立っているように見える。

食堂に足を踏み入れればざわめきが消えていく。
噂の真相を話したのは数時間前、金髪が犯人だと伝えても王家の制裁を恐れ噂は広がらないだろうと思っていたが食堂の様子からして広まったように見える。

案外広まるもんだな。

エストレヤを席に座らせ食事を持ってくると伝え席を離れた。
一人にさせるのは心配だったが、トレイを持たせて歩かせるのも危険だった。
静かに注目されているのは分かっていたので態とらしく俺が強引にキスをした。
俺が一人でいても声を掛けてくる者は居なかったし、振り返りエストレヤを見ても変に絡んでいる者も居なかった。

寧ろそこだけ人も居なかった。

最近は二人分の食事を持つのも慣れたな。
エストレヤの待つ席まで向かい、トレイを目の前に置いた。
俺を見上げるエストレヤを見ると自然と唇に振れていた。
唇を離すのが名残惜しく長い時間キスをしていた。

「アティ…もぅ」

「…そうだな。」

俺達は漸く食事を始め、食べ終わる頃にティエンダとフロイントが現れた。
手を繋いで現れた二人は順調なんだと安堵する。
食事を取りに行くティエンダに席を確保する為に見渡しているフロイントと視線があった。
俺と目が合うとまだ緊張するのか、席を共にして良いのか悩んでいるようだったので空いてる席を指差した。
俺の許可を得たことで俺達の対面に座ることに。
ティエンダとフロイントはお互い相手を頼る事を覚え、仲を深めているようだ。

「イグニス様、体調は平気ですか?」

「へっ…ぅん…大丈夫。」

フロイントの心配でエッチで身体が辛いなんて言えずエストレヤは顔を赤らめていた。
純粋に心配され、返事に困惑しているエストレヤが面白かった。

「フロイントなんか聞いたのか?」

俺達が今までエッチしていたと婚約初心者のフロイントが気付くはずはないし、気付いていたら態々揶揄うような質問をするはずがない。
だとすると別の事で体調を心配したはず。

「はぃ…イグニス様が教室で…噂の真相について追求されたと…。」

エストレヤは言葉を失っていた。

「それで?」

「噂は全てデタラメだったと…。」

「…デタラメ?他には?」

「…ぃえ、それだけです。」

ふぅん。

事実ではないことは言えても、真実は言えなかったか…。

王族の恥を言いふらす事になるからな。
貴族社会ではこれが限界か。
それでも満足行くものではないが、少しは落ち着くだろう。
ティエンダが食事を持って戻ってきた。

「待たせた。」

「いえ、ありがとうございます。」

ティエンダの登場にフロイントも笑顔で出迎えていた。
初日とは打って変わり、二人のぎこちなさは大分無くなり今の二人を引き裂く事を考える奴は…居てほしくないな。
ここで「キスぐらいすれば?」と言いたかったが止めた。
二人には二人のペースがあるだろうし、パーティーでしたとはいえあの雰囲気だから許されることで普段の食堂で突然のキスは二人にはハードルが高すぎるか。
パーティーで見たが二人のキスって触れるだけで、もどかしかしく進展も遅そうだな。
二人を見ている間にエストレヤも食べ終えていた。

「んじゃ俺達、先行くわ。」

「「はい」」

「エストレヤ行くぞ。」

「うん」

トレイを片付けエストレヤの腰を支えるという名目でイヤらしく腕を回し食堂を出た。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

処理中です...