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久しぶり
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目覚めて気付く。
何日かぶりに熟睡できた事を。
片腕に他人の温もりを感じながらの目覚めは、清々しい気分で癒しを貰えた。
隣にいる人物は想像でき、相手の方へ向き抱き寄せた。
久しぶりのエストレヤだ。
また、俺の腕の中にいる幸せを噛み締めた。
エストレヤの首元の服を指で引っ張り身体を確認した…。
あれは夢ではなく現実だった証拠がまだ痛い程色濃く残っている。
媚薬…。
まさか、金髪がそんな事をしてくるとは考えておらず油断した。
紅茶を勧めてきたのも以前のアティランを思い出させるためかと安易に考えて早く立ち去るために一気に飲み干してしまった…。
金髪が俺に執着するのは公爵家の後ろ盾やアティランの能力欲しさだよな。
ピンク頭に金髪のパートナーとしての教育はしないって言ってたな。
パートナーにしないって意味なのか、そんな雑用は俺みたいな奴に任せて恋人感覚を続けるためかは結局のところは分からないが、金髪にとっては以前の俺は利用できる人間でしかなかったってことだよな。
なら今後は、同情も王族だからと遠慮する必要ねぇよな。
「エストレヤ」
眠っているエストレヤの名を呼んだ。
俺の腕の中にいるエストレヤは本物だ。
夢の中のエストレヤは泣き叫び、暴れながら助けを求めていた。
俺が触れると逃げ出し、全力で突き飛ばす姿で起きると俺の側にはエストレヤは居なかった。
あの感触は全て夢だったのか、それとも現実だったのか今でも区別が付かなかった。
今俺の目には、腕に寄り添いながら眠るエストレヤがいる。
これは現実なんだよな…。
俺の妄想じゃ…ねぇよな?
「んっぅん~ん……アティ…おはよう。」
「…お…はよぅ。」
目覚めて俺と目が合うとエストレヤは…笑った。
俺の知ってる笑顔だ。
俺はエストレヤに被さるよう抱きしめた。
「んふっアティ。」
エストレヤも俺を抱きしめ返した。
優しい手が俺の背を擦る。
この温もりが現実であることが実感できた。
「アティ…朝食…食べられる?」
「……あぁ」
「ふふ、よかった。」
こんこんこん
「朝食の準備が整いました。」
「…はい。」
「アティ。」
「あぁ。」
見上げるエストレヤに普段のように抱き寄せてしまうところだった。
あんなことがあったのに、反省もなく同じことなど出来ない。
「食事…行くか。」
「…ぅん。」
俺達は着替えて食堂に向かった。
向かう際、エストレヤの腰に手を…回そうとしたが触れることを躊躇ってしまった。
「…アティ?」
不安に見上げるエストレヤに誤魔化しの微笑みで食堂に向かった。
「…ん?」
俺から接触しないでいると、エストレヤから手を繋がれた。
俺達は初々しい恋人のように重ねるだけの手の繋ぎ方で食堂を目指した。
俺達が食堂に着き席に着くと見計らったように母さんと父さんが現れた。
「アティラン…体調は良さそうだな。」
「はい」
父さんの顔を見て会話するのは久し振りで、安心したように見える。
それは母さんも同じだった。
俺は本物のアティランじゃないのにこんなに心配されると…。
いつか真実を話すべき…かも…と罪悪感が生まれる。
「そうか…エストレヤ様は眠れましたか?」
「はい。」
嬉しそうに返事をするエストレヤの声が聞こえた。
頭の中で響くあの叫び声とは違う、優しい声…。
食事を始めた。
俺に合わせた胃に優しいメニューに見える。
食事を終えても二人は穏やかに微笑みながら俺を見つめていた。
エストレヤも目が合うと微笑んでいる。
こんなに幸せで良いんだろうか?これは俺が都合良く作り出した夢じゃないのか?
何日かぶりに熟睡できた事を。
片腕に他人の温もりを感じながらの目覚めは、清々しい気分で癒しを貰えた。
隣にいる人物は想像でき、相手の方へ向き抱き寄せた。
久しぶりのエストレヤだ。
また、俺の腕の中にいる幸せを噛み締めた。
エストレヤの首元の服を指で引っ張り身体を確認した…。
あれは夢ではなく現実だった証拠がまだ痛い程色濃く残っている。
媚薬…。
まさか、金髪がそんな事をしてくるとは考えておらず油断した。
紅茶を勧めてきたのも以前のアティランを思い出させるためかと安易に考えて早く立ち去るために一気に飲み干してしまった…。
金髪が俺に執着するのは公爵家の後ろ盾やアティランの能力欲しさだよな。
ピンク頭に金髪のパートナーとしての教育はしないって言ってたな。
パートナーにしないって意味なのか、そんな雑用は俺みたいな奴に任せて恋人感覚を続けるためかは結局のところは分からないが、金髪にとっては以前の俺は利用できる人間でしかなかったってことだよな。
なら今後は、同情も王族だからと遠慮する必要ねぇよな。
「エストレヤ」
眠っているエストレヤの名を呼んだ。
俺の腕の中にいるエストレヤは本物だ。
夢の中のエストレヤは泣き叫び、暴れながら助けを求めていた。
俺が触れると逃げ出し、全力で突き飛ばす姿で起きると俺の側にはエストレヤは居なかった。
あの感触は全て夢だったのか、それとも現実だったのか今でも区別が付かなかった。
今俺の目には、腕に寄り添いながら眠るエストレヤがいる。
これは現実なんだよな…。
俺の妄想じゃ…ねぇよな?
「んっぅん~ん……アティ…おはよう。」
「…お…はよぅ。」
目覚めて俺と目が合うとエストレヤは…笑った。
俺の知ってる笑顔だ。
俺はエストレヤに被さるよう抱きしめた。
「んふっアティ。」
エストレヤも俺を抱きしめ返した。
優しい手が俺の背を擦る。
この温もりが現実であることが実感できた。
「アティ…朝食…食べられる?」
「……あぁ」
「ふふ、よかった。」
こんこんこん
「朝食の準備が整いました。」
「…はい。」
「アティ。」
「あぁ。」
見上げるエストレヤに普段のように抱き寄せてしまうところだった。
あんなことがあったのに、反省もなく同じことなど出来ない。
「食事…行くか。」
「…ぅん。」
俺達は着替えて食堂に向かった。
向かう際、エストレヤの腰に手を…回そうとしたが触れることを躊躇ってしまった。
「…アティ?」
不安に見上げるエストレヤに誤魔化しの微笑みで食堂に向かった。
「…ん?」
俺から接触しないでいると、エストレヤから手を繋がれた。
俺達は初々しい恋人のように重ねるだけの手の繋ぎ方で食堂を目指した。
俺達が食堂に着き席に着くと見計らったように母さんと父さんが現れた。
「アティラン…体調は良さそうだな。」
「はい」
父さんの顔を見て会話するのは久し振りで、安心したように見える。
それは母さんも同じだった。
俺は本物のアティランじゃないのにこんなに心配されると…。
いつか真実を話すべき…かも…と罪悪感が生まれる。
「そうか…エストレヤ様は眠れましたか?」
「はい。」
嬉しそうに返事をするエストレヤの声が聞こえた。
頭の中で響くあの叫び声とは違う、優しい声…。
食事を始めた。
俺に合わせた胃に優しいメニューに見える。
食事を終えても二人は穏やかに微笑みながら俺を見つめていた。
エストレヤも目が合うと微笑んでいる。
こんなに幸せで良いんだろうか?これは俺が都合良く作り出した夢じゃないのか?
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