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今日俺達はキスをする…が、その前に… ラーデン ティエンダ
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ばちっと目が覚めた。
「俺達は今日キスをする。」
夢の中でも同じことを呟いていた気がする。
もしかしたら俺は眠っていなかったのかもしれない。
そのぐらい夢の中でもフロイントとするキスの事ばかり考えていた。
顔を洗い念入りに歯を磨き、着替えてから食堂に向かった。
食堂に入り邪魔にならないよう避けてからフロイントの姿を探した。
「ティ…ティエンダ様?」
勢い良く振り返れば、真後ろにフロイントがいた。
「おっおはよう」
「おはようございます」
「…今日も一緒に食事しないか?」
「はい」
「俺が食事を持ってくる。」
「あっ今日は僕がっ。」
「いや、席を頼む。」
「…はい。」
早足で食事を取りに行き手にするとフロイントを探した。
フロイントは昨日と同じ席にいて、すぐに俺と目があった。
昨日と同じ席を選んだからもあり、食堂に多くの生徒がいる中フロイントを見付けるのは難しくなかった。
早く、フロイントの側に…。
急いで向かう途中、フロイントの対面の席は空いていた。
今日はグラキエス達はまだなようだ。
約束しているわけではないが、なんとなくここを選ぶようにしている。
隣の席に座る時、椅子を僅かにフロイントに近づけた。
食事を初めていくと会話が思い浮かばなかった…頭にあるのは「今日はキスをする」だけだった。
口を開くと油断して昨日のように考えていることを滑らせてしまいそうで、食事を取る以外は確りと口を閉じていた。
「おはようございます」
俺に声をかけたのか?
誰だ?
振り返ると…ヴィシャスがいた。
驚きのあまり声を失った。
グラキエスとの会話を思い出してしまい硬直した。
「ティエンダ様?僕も一緒に良いですか?」
俺の許可を待たずトレイをテーブルに置いていた。
混み始めているとは言え空いている席は沢山あるのに、何故ここなんだ?
グラキエスが言ったように、俺達を別れさせる為なのか?
「座りますね。」
フロイントの事ばかり考えていて思いっきり油断していた所に来られたので、断り方も何も思いつかなかった。
気がつけば彼は俺の隣に座っていた。
「ふふっ、ティエンダ様何ですか?そんなに見つめられると僕照れちゃいます。」
なにを言っているんだ?
見つめる?誰が?誰を?
不愉快になり勢い良く顔を背けた。
彼はこんな人間だったのか?
今まで全く意識しておらず、会話も流していたので知らなかった。
初めて「関わってはいけないんだ」と認識した。
早めに食事を終えこの場から離れたかったので、無心に食べ続けた。
ふと横目でフロイントの皿を確認した。
フロイントの皿にはまだ半分以上が残っていた。
このまま俺が食べ進めれば、先に席を立つことになる、そうするとフロイントが残され彼と二人になってしまう。
もしそうなれば何を吹き込まれるか分からないので、それだけは避けたかった。
「大丈夫か?」
「え?」
俺が隣に座るフロイントに声をかけると、後方から驚きの声が聞こえた。
彼の言葉に反応しないようフロイントを見つめた。
「はい、平気です。」
フロイントの表情を確認し頷いた。
「あれぇフロイント様、隣にいらっしゃったんですね。僕達気付きませんでした。」
トレイを手にし席を探す際、周囲を確認するはず。
それで俺の隣のフロイントに気付かないわけがない。
態とか?それに「僕達」と言ったか?
達って誰だ?まさか俺の事か?
何を言っている?
気付かなかったのは君だけだろうが。
俺と君を一緒にするな。
折角のフロイントとの二人での食事だったのに俺がフロイントに気付かないわけないだろう。
ん?まさか…今までもこんな会話をしていたのか?
フロイントは以前、俺に対して誤解していたと言っていた…。
今のように「僕達」と言われると、俺もフロイントに気付かなかったように聞こえる。
食事を取りにいった前提があるので今回は誤解することはないが、俺のいないところでそんな風に言われれば俺に対して疑念を抱くのは不思議じゃない。
…やはり彼はグラキエスの言う通り「別れさせ屋」なんだ…。
俺はそんな奴の側にいたのか…。
いち早くこの場からフロイントと一緒に離れたかった。
「フロイント様はいつもお一人で食事をなさっているんですか?」
「えっ?……ぁっ…その…」
俺を挟んで声をかけられるとは思っていなかったのか、フロイントは動揺していた。
「お友達とかはいらっしゃらないんですか?」
何を言ってるんだ?婚約者の俺と一緒に食事をしているんだ、一人ではないし二人だけで食事しているのが見えないのか?
「フロイントは俺と食事している。これからはできるだけ毎日一緒にするつもりだ。」
思わず俺が答えていた。
「えっ?」
彼の動きが止まっている間に食事を進めていく。
フロイントと目が合い合図を送ると急ぎだしたので伝わったのだろう。
テーブルマナーに気を付けながら出来るだけ早く食べ終えた。
フロイントも一生懸命食べきっていた。
食事の余韻に浸ることもなく俺達は席を立った。
「あっ待ってください僕も…」
「婚約者で話があるから遠慮してくれるか?」
「…はい。」
彼の目を見て確りと「婚約者」と言う言葉を出した。
トレイを片付けフロイントと急いでその場から離れ姿を消したかった。
フロイントだけでなく俺もかなり動揺・混乱していたらしい。
「驚いた。」
「…はい。」
食堂から逃げるようにフロイントの部屋に辿り着き、手を繋いだままソファに座っていた。
「彼は本当に俺達を別れさせる気だったのか?」
「………。」
「フロイント…今まで彼に何を言われたか詳しくは聞かないが、俺は一度たって婚約解消を望んだことはない。」
「…はい。」
「これからは、ちゃんと婚約者らしくする…。」
グラキエスのようになるには時間が…いやっそれ以前の問題かもしれないが、俺はフロイントの婚約者であり続けたかった。
「はい…僕も…ちゃんと…婚約者します。」
その後、俺達に会話は無く互いに壁を見つめ続けていた。
「俺達は今日キスをする。」
夢の中でも同じことを呟いていた気がする。
もしかしたら俺は眠っていなかったのかもしれない。
そのぐらい夢の中でもフロイントとするキスの事ばかり考えていた。
顔を洗い念入りに歯を磨き、着替えてから食堂に向かった。
食堂に入り邪魔にならないよう避けてからフロイントの姿を探した。
「ティ…ティエンダ様?」
勢い良く振り返れば、真後ろにフロイントがいた。
「おっおはよう」
「おはようございます」
「…今日も一緒に食事しないか?」
「はい」
「俺が食事を持ってくる。」
「あっ今日は僕がっ。」
「いや、席を頼む。」
「…はい。」
早足で食事を取りに行き手にするとフロイントを探した。
フロイントは昨日と同じ席にいて、すぐに俺と目があった。
昨日と同じ席を選んだからもあり、食堂に多くの生徒がいる中フロイントを見付けるのは難しくなかった。
早く、フロイントの側に…。
急いで向かう途中、フロイントの対面の席は空いていた。
今日はグラキエス達はまだなようだ。
約束しているわけではないが、なんとなくここを選ぶようにしている。
隣の席に座る時、椅子を僅かにフロイントに近づけた。
食事を初めていくと会話が思い浮かばなかった…頭にあるのは「今日はキスをする」だけだった。
口を開くと油断して昨日のように考えていることを滑らせてしまいそうで、食事を取る以外は確りと口を閉じていた。
「おはようございます」
俺に声をかけたのか?
誰だ?
振り返ると…ヴィシャスがいた。
驚きのあまり声を失った。
グラキエスとの会話を思い出してしまい硬直した。
「ティエンダ様?僕も一緒に良いですか?」
俺の許可を待たずトレイをテーブルに置いていた。
混み始めているとは言え空いている席は沢山あるのに、何故ここなんだ?
グラキエスが言ったように、俺達を別れさせる為なのか?
「座りますね。」
フロイントの事ばかり考えていて思いっきり油断していた所に来られたので、断り方も何も思いつかなかった。
気がつけば彼は俺の隣に座っていた。
「ふふっ、ティエンダ様何ですか?そんなに見つめられると僕照れちゃいます。」
なにを言っているんだ?
見つめる?誰が?誰を?
不愉快になり勢い良く顔を背けた。
彼はこんな人間だったのか?
今まで全く意識しておらず、会話も流していたので知らなかった。
初めて「関わってはいけないんだ」と認識した。
早めに食事を終えこの場から離れたかったので、無心に食べ続けた。
ふと横目でフロイントの皿を確認した。
フロイントの皿にはまだ半分以上が残っていた。
このまま俺が食べ進めれば、先に席を立つことになる、そうするとフロイントが残され彼と二人になってしまう。
もしそうなれば何を吹き込まれるか分からないので、それだけは避けたかった。
「大丈夫か?」
「え?」
俺が隣に座るフロイントに声をかけると、後方から驚きの声が聞こえた。
彼の言葉に反応しないようフロイントを見つめた。
「はい、平気です。」
フロイントの表情を確認し頷いた。
「あれぇフロイント様、隣にいらっしゃったんですね。僕達気付きませんでした。」
トレイを手にし席を探す際、周囲を確認するはず。
それで俺の隣のフロイントに気付かないわけがない。
態とか?それに「僕達」と言ったか?
達って誰だ?まさか俺の事か?
何を言っている?
気付かなかったのは君だけだろうが。
俺と君を一緒にするな。
折角のフロイントとの二人での食事だったのに俺がフロイントに気付かないわけないだろう。
ん?まさか…今までもこんな会話をしていたのか?
フロイントは以前、俺に対して誤解していたと言っていた…。
今のように「僕達」と言われると、俺もフロイントに気付かなかったように聞こえる。
食事を取りにいった前提があるので今回は誤解することはないが、俺のいないところでそんな風に言われれば俺に対して疑念を抱くのは不思議じゃない。
…やはり彼はグラキエスの言う通り「別れさせ屋」なんだ…。
俺はそんな奴の側にいたのか…。
いち早くこの場からフロイントと一緒に離れたかった。
「フロイント様はいつもお一人で食事をなさっているんですか?」
「えっ?……ぁっ…その…」
俺を挟んで声をかけられるとは思っていなかったのか、フロイントは動揺していた。
「お友達とかはいらっしゃらないんですか?」
何を言ってるんだ?婚約者の俺と一緒に食事をしているんだ、一人ではないし二人だけで食事しているのが見えないのか?
「フロイントは俺と食事している。これからはできるだけ毎日一緒にするつもりだ。」
思わず俺が答えていた。
「えっ?」
彼の動きが止まっている間に食事を進めていく。
フロイントと目が合い合図を送ると急ぎだしたので伝わったのだろう。
テーブルマナーに気を付けながら出来るだけ早く食べ終えた。
フロイントも一生懸命食べきっていた。
食事の余韻に浸ることもなく俺達は席を立った。
「あっ待ってください僕も…」
「婚約者で話があるから遠慮してくれるか?」
「…はい。」
彼の目を見て確りと「婚約者」と言う言葉を出した。
トレイを片付けフロイントと急いでその場から離れ姿を消したかった。
フロイントだけでなく俺もかなり動揺・混乱していたらしい。
「驚いた。」
「…はい。」
食堂から逃げるようにフロイントの部屋に辿り着き、手を繋いだままソファに座っていた。
「彼は本当に俺達を別れさせる気だったのか?」
「………。」
「フロイント…今まで彼に何を言われたか詳しくは聞かないが、俺は一度たって婚約解消を望んだことはない。」
「…はい。」
「これからは、ちゃんと婚約者らしくする…。」
グラキエスのようになるには時間が…いやっそれ以前の問題かもしれないが、俺はフロイントの婚約者であり続けたかった。
「はい…僕も…ちゃんと…婚約者します。」
その後、俺達に会話は無く互いに壁を見つめ続けていた。
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