78 / 177
ラーデン ティエンダ
しおりを挟む
授業が終わりフロイントの教室まで向かうと、正面からフロイントが現れた。
「ぁっ…」
「フロイント。」
次の言葉が出てこなかった。
「僕と…一緒に…帰りませんか?」
フロイントに誘われた。
「あぁ一緒に。」
俺達は寮に向かった。
隣を歩くフロイントを何度も盗み見みしながら歩き続けた。
学園から寮まではそんなに遠くない。
婚約者不慣れな俺には、学園から寮までの距離でさえ無言が勝ってしまう。
「フろぉイント」
緊張のあまり声が裏返ってしまった。
「はい」
「…今日も良いだろうか?」
「………?」
俺を見て首を傾げる姿に、こんな可愛らしい仕草もするのかと前のめりになってしまう。
「ダメか?」
「…ぇっと…?」
気ばかりが焦りフロイントの気持ちを無視してしまったことに気付かされ反省した。
「やはり連続で部屋に邪魔するのは良くないな、焦りすぎた。」
「ぁっ、違うんです。部屋ですよね?…来てください。」
「いいのか?その…無理…して欲しくないんだ。」
「無理なんて…僕…もっと…ティエンダ様の事知りたいんです。」
知りたい?俺の事を?フロイントが?
「おっおっおっお゛俺もだっ。」
何でも知って欲しい、俺の全てを。
「…良かった。」
少し俯き微笑むフロイントの姿に目が離せなかった。
抱きしめたい。
初めて他人に対して生まれた感情だった。
「へっへやっ…部屋まで手を繋がないか?」
「…はぃ」
手を繋ぎながら歩くと何故だが寮の部屋まで、あっという間に着いてしまった。
フロイントが扉を大きく開けてくれたので、俺が扉を押さえた。
二人で部屋に入り昨日と同じソファまで歩いて行くと、フロイントと視線がぶつかった。
きっとフロイントも俺と同じことを考えているはず。
俺が先に座り手を差し出し、フロイントも手に導かれながら俺の膝の上に腰を下ろした。
グラキエスに注意されたようにフロイントの腰に手を回し、フロイントも俺の身体に身を寄せた。
グラキエス達のように唇が触れるような会話をと思ったが、密着しすぎる態勢からの至近距離での会話は予想を遥かに越える難易度だった。
「…フロイント」
俺は遠くの壁を見ながら口を開いた。
「はぃ」
「毎日とは言わない…が…出きるなら…その…部屋に…」
「…はぃ、いらしてください。」
「…あぁ、よろしく頼む。」
その後も視線を合わすこと無く会話が続けられた。
「もうすぐ学園パーティーだな。」
「はい。」
「エスコートしても良いか?」
「…はい、お願いします。」
時計を確認するとかなりの時間が経っていた。
俺が時計を見てしまったことで、フロイントも気付きなんとなく帰らなければならない雰囲気になった。
無言でフロイントが膝から降りてしまい「終わり」を告げられた。
未練がましい俺は少しでも一緒にいたくて動作が鈍くなる。立ち上がりカバンを手にし、ゆっくり歩くも扉まで何時間も掛かるはずもなく別れの時が来てしまった。
一歩部屋の外に出て扉の前で振り返る。
「…今日は僕が見送ります。」
昨日は俺が見送った…。
「…あぁ。」
俺は往生際悪くその場に立ち尽くしていた。
「ティエンダ様?」
「あぁ…フロイント」
フロイントの唇…柔らかそうだな。
「はぃ?」
「…キス…したい…しないか?」
「ぇっ」
フロイントの小さな困惑に思考がはっきりと覚醒した。
俺は今何て言った?
思わず考えていたことが声に出ていたのか?
目の前のフロイントの顔がこれでもかと言うくらい赤くなっていたので、声に出していたことを理解した。
「あっ違っいやっ違わないがっそのっ明日、そう明日キスしないか?」
「ぁっ明日…はっはぃ」
「明日…良いのか?」
「はい」
「そっそうか、なら明日キスしよう」
「はぃ」
「じゃぁ今日はこれで、ゆっくり休めよ。」
「はい…ティエンダ様も…。」
邪な気持ちがバレてしまい隠すように早口で訳の分からないことを口走ってしまった。
俺が勢いで押しきってしまったのでフロイントもなし崩しに納得したように…。
強引だったよな…。
俺がこの場を離れなければフロイントが扉を閉めることが出来ないので、部屋へ向かうも振り返り未練がましい男と思われるのが怖く自身の部屋に向かうまで振り向くことが出来なかった。
まだ見られているのか?と意識してしまうと歩き方を忘れたように身体が上手く動かなかった。
フロイントと歩かない部屋までの距離はかなり遠く疲れるものだった。
部屋につきソファに座ると先程の会話を反芻した。
未だに信じられない。
「明日俺達はキスするのか…?」
明日…俺達はキスをする。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
今日は眠れるだろうか…。
「…その前に歯磨きだ…」
「ぁっ…」
「フロイント。」
次の言葉が出てこなかった。
「僕と…一緒に…帰りませんか?」
フロイントに誘われた。
「あぁ一緒に。」
俺達は寮に向かった。
隣を歩くフロイントを何度も盗み見みしながら歩き続けた。
学園から寮まではそんなに遠くない。
婚約者不慣れな俺には、学園から寮までの距離でさえ無言が勝ってしまう。
「フろぉイント」
緊張のあまり声が裏返ってしまった。
「はい」
「…今日も良いだろうか?」
「………?」
俺を見て首を傾げる姿に、こんな可愛らしい仕草もするのかと前のめりになってしまう。
「ダメか?」
「…ぇっと…?」
気ばかりが焦りフロイントの気持ちを無視してしまったことに気付かされ反省した。
「やはり連続で部屋に邪魔するのは良くないな、焦りすぎた。」
「ぁっ、違うんです。部屋ですよね?…来てください。」
「いいのか?その…無理…して欲しくないんだ。」
「無理なんて…僕…もっと…ティエンダ様の事知りたいんです。」
知りたい?俺の事を?フロイントが?
「おっおっおっお゛俺もだっ。」
何でも知って欲しい、俺の全てを。
「…良かった。」
少し俯き微笑むフロイントの姿に目が離せなかった。
抱きしめたい。
初めて他人に対して生まれた感情だった。
「へっへやっ…部屋まで手を繋がないか?」
「…はぃ」
手を繋ぎながら歩くと何故だが寮の部屋まで、あっという間に着いてしまった。
フロイントが扉を大きく開けてくれたので、俺が扉を押さえた。
二人で部屋に入り昨日と同じソファまで歩いて行くと、フロイントと視線がぶつかった。
きっとフロイントも俺と同じことを考えているはず。
俺が先に座り手を差し出し、フロイントも手に導かれながら俺の膝の上に腰を下ろした。
グラキエスに注意されたようにフロイントの腰に手を回し、フロイントも俺の身体に身を寄せた。
グラキエス達のように唇が触れるような会話をと思ったが、密着しすぎる態勢からの至近距離での会話は予想を遥かに越える難易度だった。
「…フロイント」
俺は遠くの壁を見ながら口を開いた。
「はぃ」
「毎日とは言わない…が…出きるなら…その…部屋に…」
「…はぃ、いらしてください。」
「…あぁ、よろしく頼む。」
その後も視線を合わすこと無く会話が続けられた。
「もうすぐ学園パーティーだな。」
「はい。」
「エスコートしても良いか?」
「…はい、お願いします。」
時計を確認するとかなりの時間が経っていた。
俺が時計を見てしまったことで、フロイントも気付きなんとなく帰らなければならない雰囲気になった。
無言でフロイントが膝から降りてしまい「終わり」を告げられた。
未練がましい俺は少しでも一緒にいたくて動作が鈍くなる。立ち上がりカバンを手にし、ゆっくり歩くも扉まで何時間も掛かるはずもなく別れの時が来てしまった。
一歩部屋の外に出て扉の前で振り返る。
「…今日は僕が見送ります。」
昨日は俺が見送った…。
「…あぁ。」
俺は往生際悪くその場に立ち尽くしていた。
「ティエンダ様?」
「あぁ…フロイント」
フロイントの唇…柔らかそうだな。
「はぃ?」
「…キス…したい…しないか?」
「ぇっ」
フロイントの小さな困惑に思考がはっきりと覚醒した。
俺は今何て言った?
思わず考えていたことが声に出ていたのか?
目の前のフロイントの顔がこれでもかと言うくらい赤くなっていたので、声に出していたことを理解した。
「あっ違っいやっ違わないがっそのっ明日、そう明日キスしないか?」
「ぁっ明日…はっはぃ」
「明日…良いのか?」
「はい」
「そっそうか、なら明日キスしよう」
「はぃ」
「じゃぁ今日はこれで、ゆっくり休めよ。」
「はい…ティエンダ様も…。」
邪な気持ちがバレてしまい隠すように早口で訳の分からないことを口走ってしまった。
俺が勢いで押しきってしまったのでフロイントもなし崩しに納得したように…。
強引だったよな…。
俺がこの場を離れなければフロイントが扉を閉めることが出来ないので、部屋へ向かうも振り返り未練がましい男と思われるのが怖く自身の部屋に向かうまで振り向くことが出来なかった。
まだ見られているのか?と意識してしまうと歩き方を忘れたように身体が上手く動かなかった。
フロイントと歩かない部屋までの距離はかなり遠く疲れるものだった。
部屋につきソファに座ると先程の会話を反芻した。
未だに信じられない。
「明日俺達はキスするのか…?」
明日…俺達はキスをする。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
今日は眠れるだろうか…。
「…その前に歯磨きだ…」
34
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる