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ラーデン ティエンダ
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隣に座るのと同時にフロイントの手が視界に入った。
急に手を繋いだりしたら振り払われるだろうか?
やはり俺達には一つ一つ確認が必要だよな…。
「手を…繋がないか?」
「…はぃ」
先に手を差し出せば、フロイントの手が重なった。
俺とは違う小さく細い指を気遣いながら優しく覆った。
下手に握ると折れてしまうのではと不安になる。
「ティエンダ様。」
「…お゛お」
フロイントの手にばかり意識が集中してしまった。
「もぅ…行きますか?」
「…えっ?」
「…時間が…。」
「時間?」
フロイントの視線を辿ると時計があり、既にあれから大分時間が経っていた。
俺は長い間フロイントの手を見つめていたらしい。
「い…くか。」
「はい。」
空いている手でカバンを持ち立ち上がれば、フロイントもカバンを持って立ち上がる。
二人で俺の部屋を出ていく。
如何わしい事は何も無いと断言できるが、二人で俺の部屋から出ると言うだけで何処か恥ずかしくもあった。
学園に向かう途中もなんだか視線を感じる。
疑わしいことをしたわけでも後ろめたいわけでもないが、今日はすれ違う人間に全てにフロイントが俺の部屋から出てきたのがバレてしまっているのではと考えてしまう。
伯爵家で多少視線を感じて何も感じなかったが、今日は違う…。
フロイントは俺の婚約者だ。
「ティエンダ様?」
「ん?…っ」
「よぉティエンダ、今日は珍しいな。」
「んぁ?」
フロイントに聞き返す前に声をかけられ、振り返ると友人のフェッセン コンパーニョがいた。
「手繋いでティエンダの部屋から一緒に出てくるなんて初めてじゃないのか?」
「あっ、あぁ」
俺達はあれからずっと手を繋いでいた。
「ふぅん」
なんだそのにやついているような微笑みはっ。
「ティエンダ様…。」
「なんだっ」
そうだ、さっきも声をかけられていたんだ。
フェッセンの登場によりフロイントを後回しにしてしまうなんて、婚約者失格だ。
「あの…手…」
「手が痛いのか?」
しまった気を付けていたのに強く握りすぎたか?
「あっいえっその…。」
まさか…俺に触れられるのが…。
「…あっ、繋ぐのが嫌だったか?」
「いえっそうじゃなく…。」
「…言ってくれ。」
なに言われても…フロイントの言葉なら耐える。
我慢はしないでくれ。
「…学園まで…その…手を?」
「そのつもりだが…だめ…だろうか?」
ダメなのか?
離さなきゃいけないのか?
…離したくない。
「いぇっ………だ…め…じゃない…です。」
「そうか。」
良かった。
拒絶されたわけじゃないんだな?
俺達は手を繋いだまま登校したが、それでも別れは来る。
何故俺達は別のクラスなんだ。
悔しさにフロイントのクラスの前に来ても手を離せずにいた。
「ティエンダ様?」
「………。」
離したくないんだ…フロイントはもう俺から離れたいのか?
「お昼をご一緒してもいいですか?」
「もちろんだっ。」
誘われたっ、フロイントから食事を誘われた。
「ふふっまた、お昼に。」
なんて可愛らしい笑みだ。
「あぁ…(また、お昼に)」
フロイントの言葉が頭を占めた。
俺が手を緩めるとフロイントの手がするりと消えていった。
昼…はあと何時間だ?
俺のクラスに行き席についてもフロイントの事ばかりを考えてしまい、時計を見つめていた。
昼になると急いでフロイントのクラスまで迎えに行った。
クラスの前で待っていたので、出てくる生徒全員と視線が合う。
「あっ」
「フロイント。」
「待っていてくれたんですか?」
「…会いたかった。」
「えっ」
フロイントの反応で思いが声に出ていたことを知る。
なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだと後悔しかない。
たった数時間さえ待てない狭量な男と思われたか?
「…僕も…。」
「へっ」
あまりに小さい声だったが、俺は聞き逃さなかった。
鼻血が出るのではと思う程、血液が顔に集中し始めた。
廊下で顔を真っ赤にした婚約者同士を気になりつつも、視線を逸らしなが多くの生徒が通りすぎていった。
「…食堂に行くか?」
「はぃ」
ぎこちなくも歩き出したが、俺の隣にフロイントは居なかった。
振り返ると半歩後ろにフロイントが歩いていた。
「フロイント。」
「ひゃいっ」
「…手を…繋ごう。」
「…はぃ」
急に手を繋いだりしたら振り払われるだろうか?
やはり俺達には一つ一つ確認が必要だよな…。
「手を…繋がないか?」
「…はぃ」
先に手を差し出せば、フロイントの手が重なった。
俺とは違う小さく細い指を気遣いながら優しく覆った。
下手に握ると折れてしまうのではと不安になる。
「ティエンダ様。」
「…お゛お」
フロイントの手にばかり意識が集中してしまった。
「もぅ…行きますか?」
「…えっ?」
「…時間が…。」
「時間?」
フロイントの視線を辿ると時計があり、既にあれから大分時間が経っていた。
俺は長い間フロイントの手を見つめていたらしい。
「い…くか。」
「はい。」
空いている手でカバンを持ち立ち上がれば、フロイントもカバンを持って立ち上がる。
二人で俺の部屋を出ていく。
如何わしい事は何も無いと断言できるが、二人で俺の部屋から出ると言うだけで何処か恥ずかしくもあった。
学園に向かう途中もなんだか視線を感じる。
疑わしいことをしたわけでも後ろめたいわけでもないが、今日はすれ違う人間に全てにフロイントが俺の部屋から出てきたのがバレてしまっているのではと考えてしまう。
伯爵家で多少視線を感じて何も感じなかったが、今日は違う…。
フロイントは俺の婚約者だ。
「ティエンダ様?」
「ん?…っ」
「よぉティエンダ、今日は珍しいな。」
「んぁ?」
フロイントに聞き返す前に声をかけられ、振り返ると友人のフェッセン コンパーニョがいた。
「手繋いでティエンダの部屋から一緒に出てくるなんて初めてじゃないのか?」
「あっ、あぁ」
俺達はあれからずっと手を繋いでいた。
「ふぅん」
なんだそのにやついているような微笑みはっ。
「ティエンダ様…。」
「なんだっ」
そうだ、さっきも声をかけられていたんだ。
フェッセンの登場によりフロイントを後回しにしてしまうなんて、婚約者失格だ。
「あの…手…」
「手が痛いのか?」
しまった気を付けていたのに強く握りすぎたか?
「あっいえっその…。」
まさか…俺に触れられるのが…。
「…あっ、繋ぐのが嫌だったか?」
「いえっそうじゃなく…。」
「…言ってくれ。」
なに言われても…フロイントの言葉なら耐える。
我慢はしないでくれ。
「…学園まで…その…手を?」
「そのつもりだが…だめ…だろうか?」
ダメなのか?
離さなきゃいけないのか?
…離したくない。
「いぇっ………だ…め…じゃない…です。」
「そうか。」
良かった。
拒絶されたわけじゃないんだな?
俺達は手を繋いだまま登校したが、それでも別れは来る。
何故俺達は別のクラスなんだ。
悔しさにフロイントのクラスの前に来ても手を離せずにいた。
「ティエンダ様?」
「………。」
離したくないんだ…フロイントはもう俺から離れたいのか?
「お昼をご一緒してもいいですか?」
「もちろんだっ。」
誘われたっ、フロイントから食事を誘われた。
「ふふっまた、お昼に。」
なんて可愛らしい笑みだ。
「あぁ…(また、お昼に)」
フロイントの言葉が頭を占めた。
俺が手を緩めるとフロイントの手がするりと消えていった。
昼…はあと何時間だ?
俺のクラスに行き席についてもフロイントの事ばかりを考えてしまい、時計を見つめていた。
昼になると急いでフロイントのクラスまで迎えに行った。
クラスの前で待っていたので、出てくる生徒全員と視線が合う。
「あっ」
「フロイント。」
「待っていてくれたんですか?」
「…会いたかった。」
「えっ」
フロイントの反応で思いが声に出ていたことを知る。
なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだと後悔しかない。
たった数時間さえ待てない狭量な男と思われたか?
「…僕も…。」
「へっ」
あまりに小さい声だったが、俺は聞き逃さなかった。
鼻血が出るのではと思う程、血液が顔に集中し始めた。
廊下で顔を真っ赤にした婚約者同士を気になりつつも、視線を逸らしなが多くの生徒が通りすぎていった。
「…食堂に行くか?」
「はぃ」
ぎこちなくも歩き出したが、俺の隣にフロイントは居なかった。
振り返ると半歩後ろにフロイントが歩いていた。
「フロイント。」
「ひゃいっ」
「…手を…繋ごう。」
「…はぃ」
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