74 / 177
見本
しおりを挟む
教室では挨拶しに来る生徒はいても、無理に引っ付く奴は婚約が決まってからは多少は引いた。
数は少なくなったが、ふてぶてしいのだけが残った。
性格が代わり記憶喪失を理由に話しかける切っ掛けを与えてしまったようで、話しかけてくる奴は、俺に教えるの延長線で会話を続けたがりいつまでも隣に存在し身体に触れてくる。
触れると言っても腕だが、許した覚えはない。
俺がエストレヤとキスしてんのも直接見ることはなくとも知っているだろうに、それでも近づいてくるのは純粋に記憶喪失の奴への配慮…公爵家への媚売り?
それらなら大して気にしないが、数人が執拗にエストレヤの事を聞いたり俺の好みを知りたがっていた。
自惚れるわけではないが、公爵家とこの容姿で近づきエストレヤから婚約者を自分にと考えているのではと勘繰ってしまう。
最近俺によく声をかけてくる奴の事もあり警戒してしまう。
アイツは悪意をもってエストレヤを勘違いさせたよえに見えて仕方がなかった。
授業に集中しながら、近付いてくる生徒を確認していた。
昼休みになると俺がエストレヤと二人で食事しているのを知らない者は居ないので邪魔をしたり割り込む奴はいなくなった。
二人で食堂に向かうと既にティエンダとフロイントが場所を取っていて、俺の姿を見つけるとティエンダは手を上げ自然と誘導された。
エストレヤを座らせティエンダと二人で食事を取りに行けば、ティエンダの方も二人分を手にしていた。
彼らも少しずつ、彼らの婚約者をしているようだ。
食事中は他愛ない会話をしていた。
途中、フロイントに手首の怪我について聞かれたエストレヤが顔を赤くしながら「これは…その…大丈夫」と答えていたのには笑え…可愛らしかった。
潤んだ瞳で助けを求められたので、怪我している手を取り同じ場所に軽くキスをした。
「んっ」とエロい声を出しながら答えを教えてやるエストレヤは優しいな。
目の前で見せられた光景にフロイントも気付いたようで顔を赤くしていた。
食事を終え席を立ち中庭へ二人を誘った。
以前の彼らは共に食事をすることもなければ、中庭にも立ち寄ることはなかったらしい。
中庭は俺が始めて使っていた頃より賑わいだしつつ、俺達の定位置のベンチは空席だった。
ベンチは四人が座ることも出来る長さだったが、当然エストレヤを膝の上に乗せた。
いつもなら向かい合うように座るが、今日はエストレヤの腰を考え横抱きに座らせた。
膝から落ちないよう腰に腕を回し胸に凭れ掛からせる。
空いている手で唇をなぞりキスをするぞと合図を送れば、エストレヤは誘導されるまま唇を重ねた。
俺達から目を離せないでいる婚約者初心者二人はどうするべきか悩んでいた。隣に二人別々に座るのか、影響を受けて一緒に座るのか…。
先に行動を起こしたのはフロイントの方で、ベンチの端へ移動した。
「フロイント…」
「はいっ」
「「………」」
俺からティエンダの表情は見えないが、予想することは出来る。
二人は無言で見つめあっていた。
「ダメか?」
何が?と聞かないのはお互い考えていることが同じだと言うことだ。
二人がこの後どうするのか、エストレヤとイチャつきながら様子を見学していた。
ティエンダが手を差し出せば、おずおずとフロイントは手を重ねティエンダが先に座るので誘導されるように膝の上に座った。
座ったはいいが硬直している二人が面白すぎた。
お互い目も合わせず、安易にお互いの身体に触れないよう姿勢よく座っていた。
こんな状態では聞きたいことも聞けないと判断した。
「ティエンダ、ちゃんと落ちないように腰を支えてやれ。」
「はい。」
エロい雰囲気を出せば二人は更にぎこちなくなると思い、「落ちないように」と言葉を選び危険回避のためだと思わせた。
ティエンダは疑うことなく指示通りに腰に手を回し、フロイントの方も素直に受け入れていた。
それでも、まだ二人には距離が合った。
「フロイントもティエンダの方に凭れた方が楽だからそうしてやれ。」
「はいっ」
焦れったい程ゆっくりとティエンダに身を預けていく。
フロイントは恥ずかしいのか、ティエンダの顔を見ることが出来ずに視線を一点に集中させていた。
慣れるまでは仕方ないだろう。
四人座っているとは言え、二人は膝の上なのでベンチには余裕があった。
俺達四人の座り方に中庭にいた生徒立ちは視線を一切そらさず見続けていた。
「ティエンダ」
「えっあっはい」
俺が話し掛けたことで、婚約者との二人きりの時間を乱してしまった。
「ティエンダに聞きたいことがあるんだ、俺が料理した日の事で。」
「はい」
「その日、ティエンダの側にいたのって誰だ?」
「…あの日は…確か…友人のフェッセン コンパーニョとボンド ガウディぺディオですね。」
「ん…他にも二人居なかったか?」
「…二人…あっそうだ、直前にフェッセンの婚約者と友人が合流してきたんだ。」
「その中で背格好はエストレヤぐらいで茶色い瞳に赤みがかった髪の奴いたよな?」
「…あぁ、きっとヴィシャス…リヴァル ヴィシャス令息の事か?」
「………。」
「フロイント、なんか知ってるのか?」
俺の質問に答えていくティエンダの口からヴィシャスの名前が出た瞬間、明らかにフロイントは反応を見せた。
「えっ?いえ…」
「気になることが有るなら言ってくれ。」
俺がフロイントに尋ねるとティエンダも気になり出していた。
「えっと…ヴィシャス様は…子爵家で婚約者は居りません…。」
「それだけじゃねぇだろ?」
「…はぃ…。」
ちらっとフロイントはティエンダを確認した。
フロイントに訴えかけられるよう見つめられても、何の事だがティエンダは全く察知できずにいた。
「ヴィシャス様は……」
そこから躊躇い一向に話さなくなってしまった。
「なにか企んでいるようで、エストレヤが心配なんだ。なにか知っていたら教えてほしい。」
「えっ?」
フロイントはエストレヤに視線を移した。
一度深呼吸をしてから口を開いた。
「何度かヴィシャス様と話したことが有ります。ティエンダ様が僕との関係を改善するつもりがないことや、お二人が楽しく過ごした等を…聞きました。」
「そんな事話したことはないっ。」
フロイントの告白にティエンダは狼狽する。
「落ち着けティエンダ…それに近いことを言った覚えはあるか?」
「…正確には覚えてないが、以前の俺は婚約者とはこのまま…と思っていた。無理に距離を縮めなくても当然結婚するもので、解消などは一度も考えた事はないと話したことがある。言っておくが彼と二人で過ごしたことなどないと断言できる。俺は今まで婚約者を出来ていなかったが、俺はフロイントの婚約者であり続けたいと思っている。」
ティエンダは宣誓するようにフロイントに真摯に向き合っていた。
「……ごめんなさい。僕…ずっとティエンダ様を…信じることが出来ませんでした。怖くてお会いするのも…避けてました…。」
「………すまん。」
「ぃぃぇ」
二人のすれ違いに誤解を生ませ入り込もうとする、良くありそうだが効果的な手段だ。状況を見極める目をもち、行動力もあり自分の魅力を分かっている者といえる。そして、マウントを取り自分のが有利なんだと相手に思い込ませて身を引かせる…ティエンダが堅物でなかったら簡単に落ちていただろうな。
「エストレヤも覚えてるか?」
「ふぅぇっ?」
エストレヤは二人の深刻な関係の話の後に突然話を振られ、驚き困惑の表情をしている。
「以前昼休みに俺にベタベタしてきた奴の事覚えてるか?」
「…ぅん」
そいつを思い出させただけで表情が暗くなるところをみると、エストレヤにも完璧に効いていたらしい。
あの時、あいつに「興味ない」「迷惑している」と伝えたつもりだが忘れられずにいたようだ。
「アイツの事、アイツは別れさせ屋かもな。」
「別れさせ屋?」
「「………」」
エストレヤだけでなくティエンダもフロイントも知らない言葉だったようだ。
「婚約者を別れさせるのを専門にしてる奴。」
「「「………」」」
「別れさせ屋だと俺は思ってるが、別れて自分が婚約者にと思っているかもしれない。以前はティエンダを狙っていたが、今は俺達のようだな。」
別れさせ屋と言葉を選んだのは、俺が狙われてるなんて自意識過剰発言は避けたかっただけだ。
多分アイツは俺を狙ってる。
俺というより公爵家の婚約者だ。
自分さえ幸せになるなら他人がどうなろうと関係ない、誰かの幸せを壊してでも自分の幸せしかみていない奴。
「…まさか…」
ティエンダは自分達が狙われていたことに全く気付かず、驚きを隠せずにいた。
婚約者を蔑ろにしている気はなかったが、鈍感過ぎたんだろう。
俺が始めて見た調理場でもアイツはティエンダの婚約者・恋人のような距離にいた。
知らない奴なら勘違いする距離だ。
「「………」」
エストレヤとフロイントは無言で何を言われたのか理解できずにいる。
「俺達は昼休み毎日ここにいるが、二人はどうするんだ?」
「「………」」
「仲の良いところ見せ付けておかないと、おかしな噂流されるかもな。」
少し脅すように伝えた。
でないと、この二人は決断できないだろうと思った。
「………ここに来ても?」
「俺は…構わないぜ。」
視線でエストレヤに聞いた。
「僕も…はい。」
「では…今日…から?…お邪魔します。」
「ぅん…ぉ邪魔します。」
お互い頷き確認し合い、ティエンダもフロイントも頭を下げた。
「あぁ」
これでこの二人はエストレヤに何かあったらすぐに俺に報告してくれるだろう。
その後はお互い婚約者とイチャイチャタイムにはいった。
俺とエストレヤは会話の合間に何度もキスをしていたが、視界に入る婚約初心者二人は見つめ合うもキスをする事はなかった。
…キスしたことない二人なのかもと脳裏によぎった。
ティエンダは正直な奴だと認識している。
「手を繋いだ」「膝に乗せた」と言ったが、それが全てなんだろう。
これは付け入るのも簡単だし、良い獲物と思われたに違いない。
他人の恋愛毎には興味はないが二人に別れてほしいとは思っていない。
ティエンダもフロイントもエストレヤに対して先入観で対応せず悪意も感じなかった。
数は少なくなったが、ふてぶてしいのだけが残った。
性格が代わり記憶喪失を理由に話しかける切っ掛けを与えてしまったようで、話しかけてくる奴は、俺に教えるの延長線で会話を続けたがりいつまでも隣に存在し身体に触れてくる。
触れると言っても腕だが、許した覚えはない。
俺がエストレヤとキスしてんのも直接見ることはなくとも知っているだろうに、それでも近づいてくるのは純粋に記憶喪失の奴への配慮…公爵家への媚売り?
それらなら大して気にしないが、数人が執拗にエストレヤの事を聞いたり俺の好みを知りたがっていた。
自惚れるわけではないが、公爵家とこの容姿で近づきエストレヤから婚約者を自分にと考えているのではと勘繰ってしまう。
最近俺によく声をかけてくる奴の事もあり警戒してしまう。
アイツは悪意をもってエストレヤを勘違いさせたよえに見えて仕方がなかった。
授業に集中しながら、近付いてくる生徒を確認していた。
昼休みになると俺がエストレヤと二人で食事しているのを知らない者は居ないので邪魔をしたり割り込む奴はいなくなった。
二人で食堂に向かうと既にティエンダとフロイントが場所を取っていて、俺の姿を見つけるとティエンダは手を上げ自然と誘導された。
エストレヤを座らせティエンダと二人で食事を取りに行けば、ティエンダの方も二人分を手にしていた。
彼らも少しずつ、彼らの婚約者をしているようだ。
食事中は他愛ない会話をしていた。
途中、フロイントに手首の怪我について聞かれたエストレヤが顔を赤くしながら「これは…その…大丈夫」と答えていたのには笑え…可愛らしかった。
潤んだ瞳で助けを求められたので、怪我している手を取り同じ場所に軽くキスをした。
「んっ」とエロい声を出しながら答えを教えてやるエストレヤは優しいな。
目の前で見せられた光景にフロイントも気付いたようで顔を赤くしていた。
食事を終え席を立ち中庭へ二人を誘った。
以前の彼らは共に食事をすることもなければ、中庭にも立ち寄ることはなかったらしい。
中庭は俺が始めて使っていた頃より賑わいだしつつ、俺達の定位置のベンチは空席だった。
ベンチは四人が座ることも出来る長さだったが、当然エストレヤを膝の上に乗せた。
いつもなら向かい合うように座るが、今日はエストレヤの腰を考え横抱きに座らせた。
膝から落ちないよう腰に腕を回し胸に凭れ掛からせる。
空いている手で唇をなぞりキスをするぞと合図を送れば、エストレヤは誘導されるまま唇を重ねた。
俺達から目を離せないでいる婚約者初心者二人はどうするべきか悩んでいた。隣に二人別々に座るのか、影響を受けて一緒に座るのか…。
先に行動を起こしたのはフロイントの方で、ベンチの端へ移動した。
「フロイント…」
「はいっ」
「「………」」
俺からティエンダの表情は見えないが、予想することは出来る。
二人は無言で見つめあっていた。
「ダメか?」
何が?と聞かないのはお互い考えていることが同じだと言うことだ。
二人がこの後どうするのか、エストレヤとイチャつきながら様子を見学していた。
ティエンダが手を差し出せば、おずおずとフロイントは手を重ねティエンダが先に座るので誘導されるように膝の上に座った。
座ったはいいが硬直している二人が面白すぎた。
お互い目も合わせず、安易にお互いの身体に触れないよう姿勢よく座っていた。
こんな状態では聞きたいことも聞けないと判断した。
「ティエンダ、ちゃんと落ちないように腰を支えてやれ。」
「はい。」
エロい雰囲気を出せば二人は更にぎこちなくなると思い、「落ちないように」と言葉を選び危険回避のためだと思わせた。
ティエンダは疑うことなく指示通りに腰に手を回し、フロイントの方も素直に受け入れていた。
それでも、まだ二人には距離が合った。
「フロイントもティエンダの方に凭れた方が楽だからそうしてやれ。」
「はいっ」
焦れったい程ゆっくりとティエンダに身を預けていく。
フロイントは恥ずかしいのか、ティエンダの顔を見ることが出来ずに視線を一点に集中させていた。
慣れるまでは仕方ないだろう。
四人座っているとは言え、二人は膝の上なのでベンチには余裕があった。
俺達四人の座り方に中庭にいた生徒立ちは視線を一切そらさず見続けていた。
「ティエンダ」
「えっあっはい」
俺が話し掛けたことで、婚約者との二人きりの時間を乱してしまった。
「ティエンダに聞きたいことがあるんだ、俺が料理した日の事で。」
「はい」
「その日、ティエンダの側にいたのって誰だ?」
「…あの日は…確か…友人のフェッセン コンパーニョとボンド ガウディぺディオですね。」
「ん…他にも二人居なかったか?」
「…二人…あっそうだ、直前にフェッセンの婚約者と友人が合流してきたんだ。」
「その中で背格好はエストレヤぐらいで茶色い瞳に赤みがかった髪の奴いたよな?」
「…あぁ、きっとヴィシャス…リヴァル ヴィシャス令息の事か?」
「………。」
「フロイント、なんか知ってるのか?」
俺の質問に答えていくティエンダの口からヴィシャスの名前が出た瞬間、明らかにフロイントは反応を見せた。
「えっ?いえ…」
「気になることが有るなら言ってくれ。」
俺がフロイントに尋ねるとティエンダも気になり出していた。
「えっと…ヴィシャス様は…子爵家で婚約者は居りません…。」
「それだけじゃねぇだろ?」
「…はぃ…。」
ちらっとフロイントはティエンダを確認した。
フロイントに訴えかけられるよう見つめられても、何の事だがティエンダは全く察知できずにいた。
「ヴィシャス様は……」
そこから躊躇い一向に話さなくなってしまった。
「なにか企んでいるようで、エストレヤが心配なんだ。なにか知っていたら教えてほしい。」
「えっ?」
フロイントはエストレヤに視線を移した。
一度深呼吸をしてから口を開いた。
「何度かヴィシャス様と話したことが有ります。ティエンダ様が僕との関係を改善するつもりがないことや、お二人が楽しく過ごした等を…聞きました。」
「そんな事話したことはないっ。」
フロイントの告白にティエンダは狼狽する。
「落ち着けティエンダ…それに近いことを言った覚えはあるか?」
「…正確には覚えてないが、以前の俺は婚約者とはこのまま…と思っていた。無理に距離を縮めなくても当然結婚するもので、解消などは一度も考えた事はないと話したことがある。言っておくが彼と二人で過ごしたことなどないと断言できる。俺は今まで婚約者を出来ていなかったが、俺はフロイントの婚約者であり続けたいと思っている。」
ティエンダは宣誓するようにフロイントに真摯に向き合っていた。
「……ごめんなさい。僕…ずっとティエンダ様を…信じることが出来ませんでした。怖くてお会いするのも…避けてました…。」
「………すまん。」
「ぃぃぇ」
二人のすれ違いに誤解を生ませ入り込もうとする、良くありそうだが効果的な手段だ。状況を見極める目をもち、行動力もあり自分の魅力を分かっている者といえる。そして、マウントを取り自分のが有利なんだと相手に思い込ませて身を引かせる…ティエンダが堅物でなかったら簡単に落ちていただろうな。
「エストレヤも覚えてるか?」
「ふぅぇっ?」
エストレヤは二人の深刻な関係の話の後に突然話を振られ、驚き困惑の表情をしている。
「以前昼休みに俺にベタベタしてきた奴の事覚えてるか?」
「…ぅん」
そいつを思い出させただけで表情が暗くなるところをみると、エストレヤにも完璧に効いていたらしい。
あの時、あいつに「興味ない」「迷惑している」と伝えたつもりだが忘れられずにいたようだ。
「アイツの事、アイツは別れさせ屋かもな。」
「別れさせ屋?」
「「………」」
エストレヤだけでなくティエンダもフロイントも知らない言葉だったようだ。
「婚約者を別れさせるのを専門にしてる奴。」
「「「………」」」
「別れさせ屋だと俺は思ってるが、別れて自分が婚約者にと思っているかもしれない。以前はティエンダを狙っていたが、今は俺達のようだな。」
別れさせ屋と言葉を選んだのは、俺が狙われてるなんて自意識過剰発言は避けたかっただけだ。
多分アイツは俺を狙ってる。
俺というより公爵家の婚約者だ。
自分さえ幸せになるなら他人がどうなろうと関係ない、誰かの幸せを壊してでも自分の幸せしかみていない奴。
「…まさか…」
ティエンダは自分達が狙われていたことに全く気付かず、驚きを隠せずにいた。
婚約者を蔑ろにしている気はなかったが、鈍感過ぎたんだろう。
俺が始めて見た調理場でもアイツはティエンダの婚約者・恋人のような距離にいた。
知らない奴なら勘違いする距離だ。
「「………」」
エストレヤとフロイントは無言で何を言われたのか理解できずにいる。
「俺達は昼休み毎日ここにいるが、二人はどうするんだ?」
「「………」」
「仲の良いところ見せ付けておかないと、おかしな噂流されるかもな。」
少し脅すように伝えた。
でないと、この二人は決断できないだろうと思った。
「………ここに来ても?」
「俺は…構わないぜ。」
視線でエストレヤに聞いた。
「僕も…はい。」
「では…今日…から?…お邪魔します。」
「ぅん…ぉ邪魔します。」
お互い頷き確認し合い、ティエンダもフロイントも頭を下げた。
「あぁ」
これでこの二人はエストレヤに何かあったらすぐに俺に報告してくれるだろう。
その後はお互い婚約者とイチャイチャタイムにはいった。
俺とエストレヤは会話の合間に何度もキスをしていたが、視界に入る婚約初心者二人は見つめ合うもキスをする事はなかった。
…キスしたことない二人なのかもと脳裏によぎった。
ティエンダは正直な奴だと認識している。
「手を繋いだ」「膝に乗せた」と言ったが、それが全てなんだろう。
これは付け入るのも簡単だし、良い獲物と思われたに違いない。
他人の恋愛毎には興味はないが二人に別れてほしいとは思っていない。
ティエンダもフロイントもエストレヤに対して先入観で対応せず悪意も感じなかった。
39
お気に入りに追加
1,868
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる