【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒

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抱きまくった後は…

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存分に抱き合ったあとは二人でいつものように風呂に入った。
俺に抱きつきながら必死に洗われるのに耐えていた所為か、浴槽に浸かれば俺の腕の中に大人しく収まっていた。
このまま眠ってしまうんじゃないかと思うほど寛いでいる姿は、どうしたらそんなに安心できるんだろう?と思うくらいの表情で俺の腕の中にいる。
実際エストレヤにとって俺の腕の中が一番危険なんじゃないかって思うんだけどな。

「エストレヤ」

優しく名前を呼べば腕の中で見上げてくる。
ちゅっと軽く唇を合わせた。

「上がるか?」

「んっ」

浴槽を出てバスローブ姿となりソファで寛いだ。
火照りが引くのを待ち、服を着て食堂へ向かった。
普段より来るのが遅れたとはいえ食堂の混雑具合は変わらず、辺りを見渡しながら席を探していると「グラキエス」と名前を呼ばれた。
俺をグラキエスと呼ぶ人間は今のところ一人。
案の定、振り向けばティエンダが手を挙げて立っていた。
隣に婚約者を伴って。
二人の向かいの席が空いていて、案内されるままエストレヤと共に席についた。

「エストレヤ、ティエンダとフロイント。」

「伯爵家のラーデン ティエンダです。」

「僕は子爵家のラフィキ フロイントです。」

「僕は侯爵家のエストレヤ イグニスです。」

軽く自己紹介の後、俺とティエンダでお互い婚約者を席に残し食事を取りに行った。
人見知りのエストレヤに緊張しいのフロイント、二人残して少々心配だったが仕方ない。

「婚約者とはもう問題ないみたいだな。」

「はい、グラキエスの助言通りに。」

嬉しそうに語るも多少疑問が生まれた。

「手を繋いで?」

「はい」

「…手繋いで会話を…?」

「はい、出来ました。」

「………。」

嬉しそうに報告するも、手を繋いで会話って小学生か。
何年も会話がなかった奴らにしてはかなりの進歩なのか?
人の恋愛の進み具合は口出すべきじゃないが…良いのかティエンダ…。
それだと道のりは長いぞ?

トレイを手にし遠くから二人を見ても、緊張したまま会話しているようには見えなかった。
俺の姿を見つけたフロイントが反応した事でエストレヤも気付いた。

「お待たせ。」

「うんん。」

俺が来たことで安心したように見えたのは俺の願望か?

「食べようぜ。」

「うん」

食事をするも緊張感が場を支配していた。
食べ終えたことにほっとするフロイントが視界に入った。
エストレヤももう少しで食い終えるな。

「なぁ、少し場所変えて話せるか?」

「はい」

「…はぃ」

ティエンダは即答するも、フロイントはこの緊張が続くことに不安を募らせていた。

「エストレヤもいいか?」

「ぁっはい。」

こっちも緊張してんな。
皆が食事を終えトレイを片付け移動し始める。

「あっグラキエス様ぁ、皆さんでどちらに?僕もいいですか?」

俺達が席を立つのを何処かで待機してたのか?
前回の件もあるのに良く積極的にこれるよな?
コイツはなんでこんなに馴れ馴れしいんだ?
やり方として好きじゃねぇけど、こういう時爵位持ち出したくなるよな。

「断る。」

「ぇっ」

間髪いれずに答え、立ち止まることなく歩き続けた。
なんで驚いてんだよ、当然だろ。
態とエストレヤを勘違いさせるような行動を取るコイツには関わりたくなかった。
コイツを置き去りにして談話室に向かった。
談話室に入ると当然エストレヤを膝の上に横抱きした。
昼食後の俺達を知らないのか、ティエンダもフロイントも目を見開いていた。

「エストレヤ、明日の放課後空いてるか?」

「え?うん、大丈夫。」

「そうか、なら一緒にダンス練習してくんねぇ?」

「ぅんいいよ。」

返事からして、エストレヤはダンスが出来るんだな。

「二人も一緒だから。」

「ティエンダ様とフロイント様も?」

首を傾げる姿が可愛い。

「そっ」

「それとも二人きりが良かった?」

「えっそんなことっ」

反応からして俺の言っている意味伝わってねぇな。

「エッチは二人きりじゃなくても出来るか試してみるか?」

「…だっだめだからねっ。」

小声でエッチな事を囁くと顔を真っ赤にさせて、胸を押し精一杯の距離をとられた。

「あのぉ、もしお邪魔でしたら練習は…。」

俺達の雰囲気を察してフロイントが遠慮し始めた。

「あっ違うの練習はヤじゃないのアティランがエッチな事言うから。」

相手を拒絶してしまったと思い必死に弁解するも墓穴を掘っていることにエストレヤは全く気付いていなかった。

「「エッチな事?」」

「あっ」

二人の言葉に自身の言葉を理解した模様。
顔だけじゃなく耳まで赤くして、口をパクパクさせていた。

「練習は問題ないよな?」

エストレヤは両手で顔を隠し、何度も頷いていた。
エストレヤって本当に可愛いよな。
ちゅっと音をたて首筋にキスをした。

「「………。」」

漸く手を繋ぎだした婚約者初心者の二人には刺激が強かったのか、視線を逸らすことなく見られ続けた。
サービスとしてエストレヤの手を掴み、見つめ合いゆっくりと唇を重ねた。
あの二人からエストレヤが綺麗に見えるように頭の傾きに気を付けた。
唇をただ重ねるのではなく深く何度も角度を変えてキスをした。
角度を変えるとエストレヤから可愛い声が漏れていた。
態と二人に聞かせているところもあった。
エストレヤもこんな近くで二人に凝視されてるなんて思ってもいないようで、普段と変わらずキスを受け入れていた。
唇を離しコツンとおでこをつけた。

「エストレヤ部屋に戻ったら、またしよっか?」

「…ぅん」

軽く何度も唇が触れる。
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