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噂の事実確認
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二人で食堂を目指すと、最近薄れていた周囲からの熱い視線が再び始まった。
引っ掛かりはしたものの、大して気にすることなくいつも通りエストレヤとの食事を楽しんだ。
俺達が食事を終えるまで視線やざわめきが纏わりつき、食堂を出て部屋につくまで続いた。
部屋に戻りイチャつきながら授業の準備をして学園に向かった。
教室までの道中もやけに視線を感じるのは気のせいではない。
この状況でエストレヤと別れるのは不安だが、俺も一緒に授業を受けることも出来ないので自身の教室に向かった。
「グラキエス様、おはようございます。」
「んぁ、あぁはぁよ…。」
声をかけられ振り向けば同じクラスのオプトニールだった。
「あのぉお聞きしたいことが有るんですが…。」
「あ?」
「婚約されたのは事実ですか?」
「…あぁ」
こいつの質問で漸く納得した。
俺達の婚約話は既に多くの人間に広まっていたらしい。
貴族の情報網は侮れねぇと感じた。
…スパイでもいんのか?
「…そぅ…なんですね…。」
視界の端でも落ち込んでいる奴の目に映り、すれ違う人間達も噂を確かめたかったように見えた。
オプトなんとかと並んで歩くわけでもなく、俺一人先に教室に入った。
教室に入ると廊下でのやり取りを聞いていない奴らが近づいてくる。
「おはようございます。」
「…はよっ。」
こいつも最近話し掛けてくるよな。
名前は…うん。
「イグニス様と婚約されたとお聞きしました。」
「あぁ」
挨拶の後にしては直球だよな。
俺が「あぁ」とだけ答えれば表情が変わった。
「…本当なのですね…おめでとうございます。」
「あぁ」
全員とは言わないが多くの生徒がいる教室にしては、静かで俺の言葉に聞き耳をたてているようだった。
朝から纏わりつくような視線に晒され、昼には婚約が噂ではなく真実だと伝わり、鬱陶しいと感じながら昼食の為にエストレヤを探した。
魔法の実習で外にいるらしくエストレヤは教室にいなかった。
外まで迎えに行くと俺の姿を見た奴らが花道のように分かれ、エストレヤが登場した。
俺を見つけたエストレヤは小走りで近付いてくる。
「あっアティラン…待っててくれたの?」
「あぁ、授業は平気だったか?」
エストレヤが俺の事を「アティラン」と呼んだだけで周囲が過剰に反応する。
「ん?はいっ」
「なら夜は平気だな。」
「夜…ぁっ…ぅん。」
俺の言葉に意味を理解し、頬を紅潮させた。
エストレヤは俯きながら俺に腰を抱かれ、二人で食堂を目指した。
「エストレヤ座っ…」
「今日は僕も行きます。」
「…そうか?」
「はい。」
俺が食事を取りに行くのを「当然」として受け入れられないのか、一緒に行くことを提案された。
提案というか決意に近い。
俺の言葉に食いぎみにというか被せてまで一緒に行くことを望んでいた。
二人で並び日替わりを手にする。
学園の食堂はガラス越しに何人もの料理人が調理している姿が見える。
手際よく高級な食材を惜しげもなく使用し、食べることが可能でも見た目が悪そうな所は避けられていた。
捨てることはなかったので、自分達の賄い用にするんだろうがそこまで神経質になることか?と疑問が浮かぶ。
貴族からの寄付により成り立っている学園なので、料理人達も気合いを入れすぎているのだろう。
そして生徒側も彼らを疑い…とまでは言わないが、どんな風に調理しているのか見えるようにガラス張りにしているに違いない。
監視されるように見られても冷静に仕事を熟すのはプロの鏡だな。
…そんなところ悪いが俺としては、お堅い料理ばかりでなくファストフードが食いたくなった。
貴族に料理を出せる程の料理人の作るものに対して文句を言うつもりはないが、食えないって思うと食いたくなるんだよな…。
たまにで良いから食いてぇ。
引っ掛かりはしたものの、大して気にすることなくいつも通りエストレヤとの食事を楽しんだ。
俺達が食事を終えるまで視線やざわめきが纏わりつき、食堂を出て部屋につくまで続いた。
部屋に戻りイチャつきながら授業の準備をして学園に向かった。
教室までの道中もやけに視線を感じるのは気のせいではない。
この状況でエストレヤと別れるのは不安だが、俺も一緒に授業を受けることも出来ないので自身の教室に向かった。
「グラキエス様、おはようございます。」
「んぁ、あぁはぁよ…。」
声をかけられ振り向けば同じクラスのオプトニールだった。
「あのぉお聞きしたいことが有るんですが…。」
「あ?」
「婚約されたのは事実ですか?」
「…あぁ」
こいつの質問で漸く納得した。
俺達の婚約話は既に多くの人間に広まっていたらしい。
貴族の情報網は侮れねぇと感じた。
…スパイでもいんのか?
「…そぅ…なんですね…。」
視界の端でも落ち込んでいる奴の目に映り、すれ違う人間達も噂を確かめたかったように見えた。
オプトなんとかと並んで歩くわけでもなく、俺一人先に教室に入った。
教室に入ると廊下でのやり取りを聞いていない奴らが近づいてくる。
「おはようございます。」
「…はよっ。」
こいつも最近話し掛けてくるよな。
名前は…うん。
「イグニス様と婚約されたとお聞きしました。」
「あぁ」
挨拶の後にしては直球だよな。
俺が「あぁ」とだけ答えれば表情が変わった。
「…本当なのですね…おめでとうございます。」
「あぁ」
全員とは言わないが多くの生徒がいる教室にしては、静かで俺の言葉に聞き耳をたてているようだった。
朝から纏わりつくような視線に晒され、昼には婚約が噂ではなく真実だと伝わり、鬱陶しいと感じながら昼食の為にエストレヤを探した。
魔法の実習で外にいるらしくエストレヤは教室にいなかった。
外まで迎えに行くと俺の姿を見た奴らが花道のように分かれ、エストレヤが登場した。
俺を見つけたエストレヤは小走りで近付いてくる。
「あっアティラン…待っててくれたの?」
「あぁ、授業は平気だったか?」
エストレヤが俺の事を「アティラン」と呼んだだけで周囲が過剰に反応する。
「ん?はいっ」
「なら夜は平気だな。」
「夜…ぁっ…ぅん。」
俺の言葉に意味を理解し、頬を紅潮させた。
エストレヤは俯きながら俺に腰を抱かれ、二人で食堂を目指した。
「エストレヤ座っ…」
「今日は僕も行きます。」
「…そうか?」
「はい。」
俺が食事を取りに行くのを「当然」として受け入れられないのか、一緒に行くことを提案された。
提案というか決意に近い。
俺の言葉に食いぎみにというか被せてまで一緒に行くことを望んでいた。
二人で並び日替わりを手にする。
学園の食堂はガラス越しに何人もの料理人が調理している姿が見える。
手際よく高級な食材を惜しげもなく使用し、食べることが可能でも見た目が悪そうな所は避けられていた。
捨てることはなかったので、自分達の賄い用にするんだろうがそこまで神経質になることか?と疑問が浮かぶ。
貴族からの寄付により成り立っている学園なので、料理人達も気合いを入れすぎているのだろう。
そして生徒側も彼らを疑い…とまでは言わないが、どんな風に調理しているのか見えるようにガラス張りにしているに違いない。
監視されるように見られても冷静に仕事を熟すのはプロの鏡だな。
…そんなところ悪いが俺としては、お堅い料理ばかりでなくファストフードが食いたくなった。
貴族に料理を出せる程の料理人の作るものに対して文句を言うつもりはないが、食えないって思うと食いたくなるんだよな…。
たまにで良いから食いてぇ。
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