【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒

文字の大きさ
上 下
30 / 177

婚約が決まれば

しおりを挟む
食事までの時間談笑することとなった。

「エストレヤ」

名前を呼び手を伸ばすと、首をかしげ立ち上がり俺の元へとやって来た。
その場に居る全員が俺達に注目していた。

「座るときは?」

「えっ…でっでも…今は…」

周囲を確認して、父親と視線を交わしていた。

「良いから。」

エストレヤの視線を俺に戻した。

「………」

俺を跨いで膝に座るエストレヤの腰に腕を回した。

「もう婚約したんだ、隠すことねぇだろ?」

「ぇっぁっ…んんあむっんんはぁんむっんん」

すげぇガン見されてる。
僅かに抵抗をみせるエストレヤを抱きしめる手に力を込めキスを続けた。
一日ぶりのキス。

「エ…エストレヤ?」

なんとか状況を把握しようと侯爵がエストレヤの名を呼ぶ。

「…だめぇん…みんな…みてる…」

同級生ではなく、家族や使用人に見られる恥ずかしさに耐えられないでいるようだった。

「婚約者なんだから、気にするなっ」

「んっんやぁんだめぇんんぁっ」

エストレヤの唇から離れ首や鎖骨に移動する。
今日の為に痕をつけるのを我慢していた綺麗な首に強く痕を残していく。

「…ア…アティラン様…よ…よろしい…かな?」

折角エストレヤとイチャついていたのに…。

「はい。」

返事はするもののエストレヤの首を可愛がるのを続けていた。

「…二人は…その…もう?」

「もう?」

やばいなこのおっさん。
エストレヤとは違った意味で揶揄かいてぇわ。

「その…だから…既に…関係があるのか?」

「関係?」

ハッキリ言えよ親父。
ハッキリ言ってくんなきゃアティランわかんなぁい。

「エストレヤと…したのか?」

「した?」

もう、言っちゃえって。

「セックスをしたのか?」

ひゅー直球、言えたね。

「だって?どうするエストレヤ?正直に答えるか?」

エストレヤの耳元で囁くも、静まり返っていた部屋では皆に聞こえていたはず。

「………」

頭を振りながら俺の胸に顔を埋めた。

「お父さんに嘘吐くの?」

「………」

エストレヤは嘘を吐くという言葉にビクッと反応した。

「どうする?」

耳元で悪魔のように囁き続けた。

「…ぃぃよ…言って。」

エストレヤは素直で良い子だった。
俺がエストレヤに尋ねた時点で大体察するんだけどな。
現に侯爵は怒りで握った拳が震えていた。 

「わかった…ちゅっ…してますよ、毎日。」

「にゃっ」

態と「毎日」と付け足したことで、エストレヤが可愛く鳴いた。

「エストレヤっこっちに来なさい。」

「はっ…はい。」
立ち上がろうとするのを止めた。

「だぁめ…エストレヤが座るのは俺の膝の上だろ?」

おでこをつけ唇が振れそうな距離で甘えるように告げた。

「…ぅん」

「エストレヤっ、膝に座りたいなら私の膝に座りなさい。」

どうにかしてエストレヤを俺から引き離そうとするのは親としてか体裁からか。
おっさん、自分がなに言ってっか分かってる?

「んあ?それは違うんじゃねぇの?あんたの膝の上に乗れんのは今、あんたの隣に居る奴だけだろ?」

「………」

反論できず、エストレヤの両親は二人で見つめあっていた。

「アティラン…いつから二人はそんな関係なんだ?」

今まで何も言わず沈黙を貫いていた父親が遂に動いた。

「あー、俺が学園に戻った日からっすね。」

「その日から…エストレヤ様と?」

冷静を保ちながら声が震えてますよ。

「だよな?」

「………」

エストレヤに同意を求めるも必死にしがみつく姿が可愛い。

「エストレヤ」

甘く名前を囁き頬にキスを贈る。

「恥ずかしい?」

「……ん」

耳まで真っ赤にさせ一向に俺の胸から離れない。

「俺は浮かれてるのかもな…婚約者になれて。」

俺の胸からエストレヤの感触が離れていく。

「……ぼくも…うれしっ…んんっんぁむっんん」

キスできる隙を俺は見逃さなかった。

「ん゛っんん…ん゛っんん」

侯爵に咳で止めるよう促された。

「エストレヤ…アティラン様と散歩でもしてきてはどうだろうか?」

侯爵にここを離れ、イチャつくのはよせと指摘された。

「ぁっはい」

「なら、エストレヤの部屋を案内してくれよ。」

「にわだぁ、庭を案内してさしあげなさい゛」

侯爵は叫びつつ、精一杯冷静さを見せるように提案してきた。

「庭だって、行くか?」

「…ぅん」

エストレヤは俺の膝から降り俺が立ち上がるのを待っている。
俺はエストレヤに手を差し出した。
エスコートを望むように。
エストレヤは俺の意思を汲み取り、慣れない手付きで俺の手を取った。
立ち上がり手を繋いだまま…から腰を抱いた。
望みとしてはエストレヤの部屋のベッドに案内して欲しいものだったが、今日ぐらいは侯爵の言葉に従い庭を散歩することにした。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

処理中です...