【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒

文字の大きさ
上 下
25 / 177

寝違えたのは俺の所為

しおりを挟む
朝目覚めるとエストレヤはまだ眠っていた。
無理に起こす事はせず、起きるまで抱きしめていた。
眠ったのは数時間前、もう少ししたら起こさないといけなくなる。
それまで少しでも長く休ませてやりたい。
本音は休んで一日中ベッドにいたかった。

「んんっん」

起きたのか?

「んふん…んっ…グラキアスさまっ…つぅ。」

「どうした?」

「ちょっと首が…。」

首を押さえながら顔をしかめていた。
その原因は間違いなく俺だった。

「あぁ…悪ぃ俺の所為だな」

無理矢理俺の上で寝かせたからだ。

「んっ平気…ぁっごめんなさい僕…グラキアスさまの上で。」

「いや、それも俺だ…それで…風呂は入れそうか?」

こんなことなら昨日エストレヤの身体を綺麗にしておけば良かったな。

「入れます。」


「入れます」…ね。
俺の上からエストレヤの温もりが消えていく。
布団で身体を隠しながらキョロキョロと服を探す後ろ姿が可愛いくて、後ろからぎゅっと抱きしめた。

「裸…見られるの恥ずかしい?」

「ぅん。」

「何度も見てるのに?」

「…ぅん。」

「俺の裸も見ていいよ。」

耳元で囁くと身体を縮こめ、耳が赤くなるのがわかった。
何度も抱いて風呂も一緒に入ったのに、俺の裸に照れてくれるのは嬉しい。
慣れられるより、意識され続けたい。

「風呂場で見る?」

「………。」

「一緒に入ろう?」

「…ん。」

「エストレヤ…首痛めたのは俺の所為だ。だから運ばせて。」

「…はぃ。」

俺が悪かったから…という雰囲気で抱き上げるが、理由がなくても抱き上げていただろう。
裸でエストレヤを抱き上げ風呂場に向かった。
俺の部屋と同じ作りのエストレヤの風呂場。
扉を開けエストレヤを下ろした。
シャワーが温かくなるまで確認し、エストレヤの肌に当てていく。

「温度は平気か?」

「はい。」

「尻、洗うよ?」

「んっ」

何度目かなのに未だに緊張しているように見え、お尻を掴んで指を差し込むと「んはぁっ」と気持ち良さそうな顔をする。
偶然なのか誘っているのか、エストレヤは俺に気持ちいいと言うのを表情で見せ付けてくるよな…。

「エストレヤ?力入れてる?」

気持ち良さそうな声を出しながらもお尻に力を込めてしまっていた。

「ぁっ」

「態と?」

「ちっちがうの。」

分かってる、エストレヤは駆け引きめいたことはしない。

「いいよ、何しても。エストレヤにならされたい。」

唇を奪い、キスに夢中になってから再びお尻を洗い出した。
風呂場で俺を見るのを忘れ、目を閉じて快感と戦っていた。
無理に目を開けさせたりはしない。
少しでも、俺の身体に照れて、恥ずかしがってくれる日が続いて欲しい。
このまましたいが、今日はこれ以上無理をさせたくない。
真面目なエストレヤだ、授業に遅れることも嫌うだろう。
風呂場を後にして、二人で俺の服を着て食堂に向かった。
エストレヤを抱き上げ食堂を目指した。
久しぶりにエストレヤを抱き上げて向かえば多くの注目を浴びた。
最近キスさえ避けていたので勝手に二人は「別れる」と噂されていたが、今日のグラキアスとエストレヤで噂は真実ではないと見せつけた。
見せ付ける為にしているときもあるが、今は少しでもエストレヤに触れていたかった。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

処理中です...