【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

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お客様

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 レオミュールを応接室へ案内する。
 私は食事だけ出席なのだが、移動中幽霊のように消えるのも失礼と感じ応接室までは同行する事にした。
 応接室への案内が終われば父から下がるよう命じられるだろう。

「どうぞ、座ってください」

「どうも」

 二人がどのような会話をするのかは想像できないが、私は席に着くべきではないんだよね? 
 
「お父様、わ……」

「早く、こちらに座りなさい」

 私はこちらで下がります……と言いたかったのだが、同席する事に。

「……はい」

「レオミュール公爵にお話ししたい事がございます」

「なんでしょう? 」

 笑顔で対応するレオミュールだが、貴族特有の仮面だと分かる。

「娘セラフィーナの事です」

 父は一体なんの話をするつもりだろう?

「セラフィーナ令嬢がどうされました? 」

 レオミュールも笑顔で武装しながら、身構えたのが分かる。

「娘は、以前事故に遭い記憶喪失となってしまいました」

「記憶喪失ですか? 」

 思いも良らぬ父の告白にレオミュールは表情を崩したが、それは一瞬だった。
 だが、レオミュール以上に私の方が父の告白に衝撃を受ける。
 私は今、危機的状況に陥っている。
 格上の相手に嘘を……ここは本気で訂正をしないといけないのは分かる……
 だが、声が出ない。

「はい。経過観察中ですが、記憶は今のところまだ……この度レオミュール公爵のパーティーの招待状が届き、娘が参加した際には粗相をしてしまうやもしれません。私としては、娘は最近色々ありましたし記憶回復の為にも様々な経験をさせてやりたいと思っております。私が補佐するつもりではいますが、それでも何が起こるか分かりません。レオミュール公爵に迷惑をおかけしてしまう事もあるかと思います」

 私の記憶喪失の件を話す為に今回レオミュールを招いたようだ。
 本来であれば侯爵家である我が家が公爵家に出向くところなのだが、内密という事と私が最近酷い頭痛を引き起こしたのを考慮してだろう。

「それは大変でしたね。分かりました。こちらも使用人には『お客様が快適に過ごされるよう配慮するように』と伝えておきます」

「公爵様のご厚意、感謝いたします」

「いえ。最近令嬢の名を耳にすることがありましたが、そのような訳があったのですね」

 私の名……婚約解消の事だろう。

「はい。この事は内密にお願いいたします」

「もちろんです」

「よろしくお願いいたします」

 父と私はレオミュールに頭を下げる。
 その後も二人は仕事の話をすることなく談笑し、食事の準備が整いもてなす。
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