本物の聖女に能力は関係ない

天冨 七緒

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そうきたか……

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 あれからゼルーガ侯爵家の使用人と一緒になって掃除をしているのだが、一貫してゼルーガ自身が掃除することはない。
 王宮の祈りの場の掃除が終わると教育の時間の為ゼルーガとは別行動になる。

「聖女様」

 ゼルーガから声を掛けられるのは珍しい。

「はい、どうしました? 」

「私も一緒に教育を受けてはいけませんか? 」

 突然のゼルーガの申し出に困惑する。
 一応、私の『教育』は王族の許可を得ての事なので、私の一存で許可することは出来ない。
 私の教育にも王族から給金が発生しているに違いない。
 それに、私が受けている内容はこの国の基本的なものなので貴族令嬢であれば必要ないだろう。

「私の一存では決めかねるので、相談してからでもよろしいでしょうか? 」

「はいっ」

 ゼルーガはとても嬉しそうにする。
 王宮で教育を受けることは貴族にとっては重要な意味を成すのかもしれない。
 王族の判断が下りるまでの時間、ゼルーガは王宮に来ては祈りの場の掃除の監視をし私を見送り午後大聖堂で合流する。
 そんな日が日常となりつつあったのだが、突然訪問者が現れた。

「……イニアス公爵令嬢、どうされたのですが? それにサラディーン侯爵令嬢に、エリクソン伯爵令嬢、ワーグナー伯爵令嬢まで……何かあったのですか? 」

 聖女補佐達が勢ぞろいしていた。

「補佐を続行したく参りました」
 
 イニアスが聖女補佐復帰を願うと三人の令嬢も頷く。

「私と前回の聖女の仕事内容はかなり異なりますが、それでも補佐を続けるのですか? 」

「はい。聖女様の補佐をさせていただきたく参りました」

 使用人を引き連れゼルーガ自身が掃除をしていない情報をどこからか入手したのか、聖女の仕事内容を話した翌日から訪れなかった四人が突然大聖堂に訪れる。

「そうですか……私が以前お話しした聖女の仕事を変更するつもりはありませんが、皆さんはよろしいでしょうか? 」

「はい」

 再度確認すると、復帰を願う四人は頷く。
 
「分かりました。私は教皇様に報告してから大聖堂に向かいますので、ゼルーガ侯爵令嬢の指示に従ってください。ゼルーガ侯爵令嬢、お願いできますか? 」

「……はい」

 私が振り向きゼルーガ侯爵令嬢にお願いすると、一瞬引き攣った表情を見せる。
 令嬢達と別れ私は再び教皇のいる部屋を目指す。
 私が来ることを予測していたのか、司祭は紅茶の準備をさせていた。
 そして会話の内容もゼルーガ侯爵令嬢が復帰した時と同じもので、令嬢達を受け入れる許可が下りる。
 この日から再び聖女補佐は五人となった。
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