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<トランビーノ国>
「ケイトリーン。王妃を救ってくれた事は感謝している。たが、あの日以降聖女としての能力を失った君をいつまでも『聖女』として崇める事に、疑問を抱く貴族からの嘆願書が年々増え始めているんだ」
申し訳なさそうに私の婚約者であるマカリオン王子は告げる。
「そうなんですね」
「王命とはいえ貴方にとって望んでもいない王宮生活を強いらせ、更には私の婚約者として王妃教育を受けてもらっていたのだが、最近になり『次期王妃としての役割が到底熟せるものとは思えない』と各方面からの声が強く、押さえることが困難な状態となっている」
「それは……ご迷惑をおかけしております」
「いや、我々も過去に王妃を救ってくれた君には敬意を払ってはいる……が、私との婚姻は国の行く末にも関わる事。今一度立ち止まり公平な目で状況を鑑みた結果、貴族社会だけでなく国を先導する者として君をこのまま私の婚約者……次期王妃という立場に相応しいのか議会が開かれ審議された。今の立場が君にとっては精神的重圧となり『聖女』の能力も失われたのではないかという意見もある。もしかしたら、今の立場から解放されることで聖女としての能力が戻る可能性があるのではないかという見解もある。私も聖女の能力が君に戻るなら、一時的に私との婚約を解消するのもそう悪い決断ではないのではと思っている」
「……はい」
「『婚約解消』は私達にとって前向きな決断だと言える」
婚約者としての立場で第一王子であるマカリオンは、私の反応を確認しつつ『議会で決定された』と口にする。
婚約は私が九歳、王子が十歳の時に国王陛下の一存で決定され、この度国王陛下の崩御と共に終わった。
過去に王妃を救い『聖女』として崇められている私がいながら国王陛下が命を落としたのは、私が故意に国王を助けなかったからではない。
王妃を救ったあの日、聖女の能力を全て使い切ってしまったからだ。
今の私は切り傷さえ治癒することが出来ない。
それでも国王陛下は再び王妃の体調の変化を案じ、私を傍に置いている。
能力が戻る時の事を考え私を手元に置き王宮に住まわせ傍で管理すると同時に、他国に聖女の能力喪失を知られぬよう戦争の火種を回避するためだった。
だがそれだと王妃を助けたとはいえ平民の私を王宮に滞在させるには理由が弱く他の名目が必要と周囲に迫られ、当時婚約者が居なかった王子を利用し国王陛下の独断で私と王子の婚約が決定した。
王子の婚約者が誕生したその日から、王宮で過ごす事が決定した……誰が? 私だ。
誰も望んでいない婚約も、今……終わろうとしている。
王の訃報が城内だけでなく、国民にも伝えられる。
国全体が王の死を悼み粛々と過ごしている中、婚約者である王子から『婚約解消』について見直す提案がされた。
私の答えは……
「そうですね。私も国王陛下の命令ですので、次期王妃という立場は荷が重く感じつつも『辞退』を口に出来ずにおりました」
私達の婚約は国王陛下の命令と言ったのは、私がこの婚約にしがみ付いているわけではないという細やかな対抗だった。
私は孤児院で育ち。
辛いとか悲しいとかはなく、これが私の人生なのだと疑問など持たず過ごしていた。
そんな時、突如聖女の能力を授かった私に目を付けた貴族に引き取られる。
孤児が貴族になり更には王子の婚約者を任命されたとなれば、その幸運を離すまいと野心を持つ者もいるだろう。
だが、私にはそんな強さは持ち合わせていない。
婚約が決定し王宮に滞在するようになり信頼のおける味方を作るどころか、突如現れた王子の婚約者に対し貴族や使用人からの不平不満や憎悪などに日々打ちのめされていた。
悪意しかない王宮で過ごす私は、あれから毎日『逃げ出したい』と思っていた。
なので、王子からの提案は私としても願ったり叶ったりだった。
だが、解消理由が私の聖女としての『能力喪失』ということなので、私に能力が再び戻った時の事を考え『一時的に婚約解消』と表向きはしたいのだろう。
「婚約解消……承諾致します」
私が婚約解消を受け入れると、王子は一度私を見据えるもその後は何も言わずに去っていく。
「こちらにサインを……」
それから数時間もしないうちに役人数名が私のところを訪れ、流れ作業のように私は言われた通りサインをしていけば私と王子の婚約解消が正式に成立。
サインする前には書面を確認する時間を与えられなかったが、私の控え用にと渡された書類には
「婚約解消に異議を唱えない」
「金銭を要求しない」
「今後は王宮が要請した場合を除く、王宮への出入り禁止」
「以上を違反した場合は、聖女であろうと処分の対象となる」
私はこれらすべての事に同意したとされた。
サインした瞬間、私の立場は『王子の婚約者』でも『聖女』でもなくなり、只の子爵令嬢となった。
私を養女にした子爵も『能力を失った聖女』『国王陛下を救えなかった聖女』では使い道がないと判断するだろう。
書類には『王宮への出入り禁止』ともある。
そんな書類にサインしたとなれば、どこかの貴族に売りつける事も出来ず利用価値がないと判断される。
そうしたら再び『孤児』に戻されることになるだろう。
六年という歳月をこの場所に捧げたが、私にとって何の後腐れもない王宮。
柔らかいベッドに清潔な服装、それに孤児院では考えられない毎日三回の食事という贅沢な施しを受けたのでその部分は感謝している。
感謝はしているが、残りたいとは思わない。
王子の婚約者としての教育に聖女の能力を取り戻す為に教会へ通い祈る毎日。
休みという休みも無く、この部屋に私物という物はほぼない。
「これは……残して行こう」
聖女が着用する服は、次世代の聖女の為に残していくつもり。
他に私サイズのお茶会用や隣国からの来賓を持て成す際に着用する服もあるが、王子の婚約者から解放され貴族社会に戻るつもりのない私には邪魔でしかならない。
そんな衣服は全て残し、私以外誰も着ないような簡素な服だけをバッグに詰め込み部屋を出る。
一度振り返り使用していた部屋を確認すれば、やはり私には似つかわしくない部屋だったと実感する。
「……お世話になりました」
私の全財産ともいえるバックを手にして出て行く。
すれ違う者達は視線で私を捉えると状況を察したのか、過ぎ去るとくすくすと笑いだす。
「あれ……漸く出ていくのね」
「能力もないのに、厚かましいにもほどがあるわ」
「私達もこれで孤児から解放されるのね」
誰も私の立場を理解せず勝手な事を口にする。
「私だって……出来るもんならこんな場所来たくなかったわよ。あんた達の願い通り二度とこんな所戻らないわよっ」
誰かに吐き捨てることも出来ず、悔し紛れに呟くしか出来なかった。
王宮から去る時には歩いて門を出る。
誰かに引き留めてもらいたくて歩いているのではない。
現在、私の籍がある子爵家に戻るにも、婚約解消となった人間が王族の馬車を利用するなんて烏滸がましいとされる。
長年待った王子の婚約解消に関心が集まり、目障りな人間がどのように王宮を去るかなんて誰も興味がない。
私は正門ではなく出入り業者や使用人が利用する通用門から抜け、緩い坂道を歩いて下っていく。
門を警備する騎士を最後に、誰も私の姿を確認する者はいない。
私は能力を失ったと実感した日から『王宮を去る』という願いを漸く叶えることが出来た。
「……はぁ……やっと解放されて……自由だ……」
空を見上げ自由を確認する。
「なっ何?」
突然足元が赤く輝き、周囲の景色が見えない程の目映い光に包まれる。
そして光が落ち着くと先程とは別の景色が広がっていた。
「おぉ、聖女様」
「聖女様が来てくださったぁ」
「これで、我が国も救われる」
唖然とする私を置き去りにし、人々は歓喜に沸いていた。
私の周囲を多くの人が取り囲むも誰一人見知った顔は無く、彼らは私に視線を向け『聖女』と口にする。
その言葉は私にとって誉れなものではなく、苦しめるものだった。
「ぇっ……ぁっ……あのっ……」
私の頭は真っ白だった。
「なんでしょう、聖女様っ」
小さな声にも関わらず発すると、皆が耳聡く反応し期待している表情を向ける。
彼らの目が私には恐ろしかった。
「聖女……様とは? 」
それは誰に向けての言葉なのか確認せずにはいられなかった。
「はいっ、貴方様が聖女様です」
男の言葉に衝撃を受けた。
漸くその立場かから解放されたというのに……
彼らの顔はあの日、王妃を救った奇跡の聖女としてパーティーで紹介をされた時の貴族達を思い出す。
愛する人を救った少女を紹介する国王に貴族らは大層盛り上がるも、その後私が能力を使い果たしたと分かると一気に手のひらを返し悪意を向けた。
私は自分から『聖女』と名乗ったことはないし、能力も使い果たしてしまい残っていないことを国王に隠さず伝えていた。
それでも国王は私を解放することは無く、それどころか願ってもいない見返りまで準備していた。
王妃を治癒した見返りに王子との婚約を私が要求した訳でもない。
なのに……貴族の間では私が望んだことにされ『これだから卑しい平民は……』と、何年も囁かれ続けた日々が一気に脳裏に蘇る。
あの環境から漸く解放されたというのに、私は再び戻ってしまうの?
嘘でしょ? そんなの……戻りたくない。
「わ……わた……私はっ……」
「はいっ」
「せっ……聖……聖女では……ありません……」
期待する彼らに私は必死に訴える。
ここで聖女だと認めるわけにはいかない。
認めてしまえば、この後どのような扱いを受けるのか私は知っている。
「えっ? 」
舞い上がっていた人達は、私の言葉に呆気に取られ始める。
「私は……聖女……様……ではなく……聖女様の……世話がかりをしておりました」
私はもう二度と聖女になるつもりは無い。
「ケイトリーン。王妃を救ってくれた事は感謝している。たが、あの日以降聖女としての能力を失った君をいつまでも『聖女』として崇める事に、疑問を抱く貴族からの嘆願書が年々増え始めているんだ」
申し訳なさそうに私の婚約者であるマカリオン王子は告げる。
「そうなんですね」
「王命とはいえ貴方にとって望んでもいない王宮生活を強いらせ、更には私の婚約者として王妃教育を受けてもらっていたのだが、最近になり『次期王妃としての役割が到底熟せるものとは思えない』と各方面からの声が強く、押さえることが困難な状態となっている」
「それは……ご迷惑をおかけしております」
「いや、我々も過去に王妃を救ってくれた君には敬意を払ってはいる……が、私との婚姻は国の行く末にも関わる事。今一度立ち止まり公平な目で状況を鑑みた結果、貴族社会だけでなく国を先導する者として君をこのまま私の婚約者……次期王妃という立場に相応しいのか議会が開かれ審議された。今の立場が君にとっては精神的重圧となり『聖女』の能力も失われたのではないかという意見もある。もしかしたら、今の立場から解放されることで聖女としての能力が戻る可能性があるのではないかという見解もある。私も聖女の能力が君に戻るなら、一時的に私との婚約を解消するのもそう悪い決断ではないのではと思っている」
「……はい」
「『婚約解消』は私達にとって前向きな決断だと言える」
婚約者としての立場で第一王子であるマカリオンは、私の反応を確認しつつ『議会で決定された』と口にする。
婚約は私が九歳、王子が十歳の時に国王陛下の一存で決定され、この度国王陛下の崩御と共に終わった。
過去に王妃を救い『聖女』として崇められている私がいながら国王陛下が命を落としたのは、私が故意に国王を助けなかったからではない。
王妃を救ったあの日、聖女の能力を全て使い切ってしまったからだ。
今の私は切り傷さえ治癒することが出来ない。
それでも国王陛下は再び王妃の体調の変化を案じ、私を傍に置いている。
能力が戻る時の事を考え私を手元に置き王宮に住まわせ傍で管理すると同時に、他国に聖女の能力喪失を知られぬよう戦争の火種を回避するためだった。
だがそれだと王妃を助けたとはいえ平民の私を王宮に滞在させるには理由が弱く他の名目が必要と周囲に迫られ、当時婚約者が居なかった王子を利用し国王陛下の独断で私と王子の婚約が決定した。
王子の婚約者が誕生したその日から、王宮で過ごす事が決定した……誰が? 私だ。
誰も望んでいない婚約も、今……終わろうとしている。
王の訃報が城内だけでなく、国民にも伝えられる。
国全体が王の死を悼み粛々と過ごしている中、婚約者である王子から『婚約解消』について見直す提案がされた。
私の答えは……
「そうですね。私も国王陛下の命令ですので、次期王妃という立場は荷が重く感じつつも『辞退』を口に出来ずにおりました」
私達の婚約は国王陛下の命令と言ったのは、私がこの婚約にしがみ付いているわけではないという細やかな対抗だった。
私は孤児院で育ち。
辛いとか悲しいとかはなく、これが私の人生なのだと疑問など持たず過ごしていた。
そんな時、突如聖女の能力を授かった私に目を付けた貴族に引き取られる。
孤児が貴族になり更には王子の婚約者を任命されたとなれば、その幸運を離すまいと野心を持つ者もいるだろう。
だが、私にはそんな強さは持ち合わせていない。
婚約が決定し王宮に滞在するようになり信頼のおける味方を作るどころか、突如現れた王子の婚約者に対し貴族や使用人からの不平不満や憎悪などに日々打ちのめされていた。
悪意しかない王宮で過ごす私は、あれから毎日『逃げ出したい』と思っていた。
なので、王子からの提案は私としても願ったり叶ったりだった。
だが、解消理由が私の聖女としての『能力喪失』ということなので、私に能力が再び戻った時の事を考え『一時的に婚約解消』と表向きはしたいのだろう。
「婚約解消……承諾致します」
私が婚約解消を受け入れると、王子は一度私を見据えるもその後は何も言わずに去っていく。
「こちらにサインを……」
それから数時間もしないうちに役人数名が私のところを訪れ、流れ作業のように私は言われた通りサインをしていけば私と王子の婚約解消が正式に成立。
サインする前には書面を確認する時間を与えられなかったが、私の控え用にと渡された書類には
「婚約解消に異議を唱えない」
「金銭を要求しない」
「今後は王宮が要請した場合を除く、王宮への出入り禁止」
「以上を違反した場合は、聖女であろうと処分の対象となる」
私はこれらすべての事に同意したとされた。
サインした瞬間、私の立場は『王子の婚約者』でも『聖女』でもなくなり、只の子爵令嬢となった。
私を養女にした子爵も『能力を失った聖女』『国王陛下を救えなかった聖女』では使い道がないと判断するだろう。
書類には『王宮への出入り禁止』ともある。
そんな書類にサインしたとなれば、どこかの貴族に売りつける事も出来ず利用価値がないと判断される。
そうしたら再び『孤児』に戻されることになるだろう。
六年という歳月をこの場所に捧げたが、私にとって何の後腐れもない王宮。
柔らかいベッドに清潔な服装、それに孤児院では考えられない毎日三回の食事という贅沢な施しを受けたのでその部分は感謝している。
感謝はしているが、残りたいとは思わない。
王子の婚約者としての教育に聖女の能力を取り戻す為に教会へ通い祈る毎日。
休みという休みも無く、この部屋に私物という物はほぼない。
「これは……残して行こう」
聖女が着用する服は、次世代の聖女の為に残していくつもり。
他に私サイズのお茶会用や隣国からの来賓を持て成す際に着用する服もあるが、王子の婚約者から解放され貴族社会に戻るつもりのない私には邪魔でしかならない。
そんな衣服は全て残し、私以外誰も着ないような簡素な服だけをバッグに詰め込み部屋を出る。
一度振り返り使用していた部屋を確認すれば、やはり私には似つかわしくない部屋だったと実感する。
「……お世話になりました」
私の全財産ともいえるバックを手にして出て行く。
すれ違う者達は視線で私を捉えると状況を察したのか、過ぎ去るとくすくすと笑いだす。
「あれ……漸く出ていくのね」
「能力もないのに、厚かましいにもほどがあるわ」
「私達もこれで孤児から解放されるのね」
誰も私の立場を理解せず勝手な事を口にする。
「私だって……出来るもんならこんな場所来たくなかったわよ。あんた達の願い通り二度とこんな所戻らないわよっ」
誰かに吐き捨てることも出来ず、悔し紛れに呟くしか出来なかった。
王宮から去る時には歩いて門を出る。
誰かに引き留めてもらいたくて歩いているのではない。
現在、私の籍がある子爵家に戻るにも、婚約解消となった人間が王族の馬車を利用するなんて烏滸がましいとされる。
長年待った王子の婚約解消に関心が集まり、目障りな人間がどのように王宮を去るかなんて誰も興味がない。
私は正門ではなく出入り業者や使用人が利用する通用門から抜け、緩い坂道を歩いて下っていく。
門を警備する騎士を最後に、誰も私の姿を確認する者はいない。
私は能力を失ったと実感した日から『王宮を去る』という願いを漸く叶えることが出来た。
「……はぁ……やっと解放されて……自由だ……」
空を見上げ自由を確認する。
「なっ何?」
突然足元が赤く輝き、周囲の景色が見えない程の目映い光に包まれる。
そして光が落ち着くと先程とは別の景色が広がっていた。
「おぉ、聖女様」
「聖女様が来てくださったぁ」
「これで、我が国も救われる」
唖然とする私を置き去りにし、人々は歓喜に沸いていた。
私の周囲を多くの人が取り囲むも誰一人見知った顔は無く、彼らは私に視線を向け『聖女』と口にする。
その言葉は私にとって誉れなものではなく、苦しめるものだった。
「ぇっ……ぁっ……あのっ……」
私の頭は真っ白だった。
「なんでしょう、聖女様っ」
小さな声にも関わらず発すると、皆が耳聡く反応し期待している表情を向ける。
彼らの目が私には恐ろしかった。
「聖女……様とは? 」
それは誰に向けての言葉なのか確認せずにはいられなかった。
「はいっ、貴方様が聖女様です」
男の言葉に衝撃を受けた。
漸くその立場かから解放されたというのに……
彼らの顔はあの日、王妃を救った奇跡の聖女としてパーティーで紹介をされた時の貴族達を思い出す。
愛する人を救った少女を紹介する国王に貴族らは大層盛り上がるも、その後私が能力を使い果たしたと分かると一気に手のひらを返し悪意を向けた。
私は自分から『聖女』と名乗ったことはないし、能力も使い果たしてしまい残っていないことを国王に隠さず伝えていた。
それでも国王は私を解放することは無く、それどころか願ってもいない見返りまで準備していた。
王妃を治癒した見返りに王子との婚約を私が要求した訳でもない。
なのに……貴族の間では私が望んだことにされ『これだから卑しい平民は……』と、何年も囁かれ続けた日々が一気に脳裏に蘇る。
あの環境から漸く解放されたというのに、私は再び戻ってしまうの?
嘘でしょ? そんなの……戻りたくない。
「わ……わた……私はっ……」
「はいっ」
「せっ……聖……聖女では……ありません……」
期待する彼らに私は必死に訴える。
ここで聖女だと認めるわけにはいかない。
認めてしまえば、この後どのような扱いを受けるのか私は知っている。
「えっ? 」
舞い上がっていた人達は、私の言葉に呆気に取られ始める。
「私は……聖女……様……ではなく……聖女様の……世話がかりをしておりました」
私はもう二度と聖女になるつもりは無い。
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