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歴代の聖女

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まず通された部屋で服を着替えることになった。
着てきた服装は華美な服ではないが、聖女として渡された服は真っ白のワンピースに、青い刺繍で薔薇と蔦が描かれ派手でも地味でもなく上品なもの。
肌を見せることがない服は、神に仕えるものらしい服装に感じる。
渡された聖女の服に着替えた後は、教会の限られた者しか入室が許されないとされる地下の部屋に案内された。

「ここには歴代の聖女様が眠っております」

まず始めに紹介された場所は、光の届かない厳重な場所。

「歴代の聖女様?」

ピエール司祭に促され私も蝋燭を持ち、部屋の奥へと進んでいくと更に重々しい扉が存在した。
私達は扉の前に立ち、小さな小窓から中を覗いた。

「はい」

「…ここに埋葬されているってことですか?」

「はい。聖女様は特別ここに納められ、我々が毎日祈りを捧げます。生前の感謝を込めて」

生前の感謝を込めて…過去の聖女達はどんな功績を残したんだろう…
それにいずれは私も、死んだらここに入るという意味なんだろうか…

「…私も…ですか?」

「はい」

ピエール司祭は当然の事のように頷かれる。

「…毎日の祈りをとは…以前の聖女は何年前だったんですか?」

「…二十一年前です」

「…そんなに前なんですね」

聖女が亡くなると能力を受け継がれるように、新たな聖女が直ぐに生まれるものだと漠然に思っていた。

「あの年は…災害が起こりましたから…」

「災害?」

災害と聖女は何か関係があるのだろうか?

「大規模な山火事です。多くの犠牲者が生まれ…その傷を癒すように聖女が現れました」

「…そうなんですね」

言われると私の両親も大雨による山崩れが原因の災害だった。
そのために私が生まれた?
災害と聖女は表裏一体、悲しみを癒すために聖女…
もしかしたら、あの災害は両親だけでなく他にも犠牲者がいたのかもしれない。あの災害についてはつい避けがちにしていたが、男爵から詳しく詳細を聞いた方がいいのかも知れない。あの森の周辺には私が知らないだけで、人が住んでいた可能性もある。
もしそうであるなら、その人は今も苦しんでいるかもしれない。
私は運良く男爵に拾われたが、拾われていなかったらこの世界で生きてこれたのか想像もつかない。
私も自分の事だけでなく、誰かのために…
クリストフ王子が言っていた通り聖女は分かりやすい力を求められているのではなく、安寧の為に存在するのかもしれない。

「そろそろ戻りましょう」

「はい」

聖女が眠るとされる部屋の扉を開けることなく、私達は地上へ戻った。
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