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オマケの続きの番外編
イメルダ・チャースティン
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私がチャースティン侯爵夫人と名乗ることが出来るようになった頃、お茶会でオルフレッド様に婚約を申し込んだ令嬢がいるという噂を聞いた。
私の事を愛している彼が私以外と婚約するとは思えなかったが、人にはそれぞれ事情があることも理解している。
私がオルフレッド様と結婚できないのは事実なんだもの…
だけどオルフレッド様が私以外の女と結婚するなんて許せない思いはある。
「チャースティン夫人は何故ランクーベ公爵と離縁を望んだんですか?」
私が離縁を受け入れる側だったら目の前の夫人はこのような失礼な質問をしなかっただろうが、彼との離縁は私が望んだ事と言うのは私が口にしていなくともお父様により社交界で拡散されていた。
「…オルフレッド様の屋敷には不可解なことが多くて…」
「「「「「えっ?」」」」」
私の思いもよらぬ言葉にお茶会に集まっていた夫人達が驚きの声をあげた。
「そ…それはどういう事ですか?」
一人の夫人が代表して私に尋ねる。
その顔は興味津々な様子で、周囲にいた人達皆が同じ顔に見えた。
私は正直に話すことにした。
「公爵邸に足を踏み入れた時なんだか刺すような視線を感じたんです。気のせいかなと、あの時は思い深くは考えなかったんです。その後は一緒に着いてきた侍女が、何度も転ぶようになり退職しました」
「まぁ、それは酷い事をする方がいらっしゃるということですか?」
「いえ。公爵家の人達は私の事をランクーベ公爵夫人と受け入れ、良くしてくださったのですが…」
「なにがあったんです?」
「公爵夫人の部屋が…何度掃除をしても手形が浮き出てくるんです」
「きゃっ」
私の話に一人の夫人が叫び声をあげた事で、一人の恐怖が皆に伝染した。
「…ランクーベ公爵は呪われているのですか?」
「そんなっ呪いだなんて…」
「確か、チャースティン夫人の前に別の婚約者の方がいましたよね?」
「…はい」
「その方は婚約解消してから、社交に一切顔出ししていませんよね?」
「えぇ、シェリンダー伯爵令嬢は体調を崩し結婚目前で婚約を解消しました」
「…やっぱり、ランクーベ公爵は呪われているのよ」
夫人の言葉に「違います」と否定しようとしたが、踏みとどまった。
もしオルフレッド様が「呪われている」となれば、誰も結婚したがらないと思ったから。
オルフレッド様と結婚できないなら、オルフレッド様は誰とも結婚させない。
私がオルフレッド様を下品な令嬢から守って差し上げます。
「そんな…オルフレッド様が呪われているなんて…」
「ですが、手形に怪我に病気だなんて…」
その日からオルフレッド様はお茶会やパーティーで彼の話になると夫人や令嬢の間で「呪われた公爵」と呼ばれるようになった。
言っておくが、私は彼が呪われているとは一言も言っていない。
私の周囲で起きた事実を話しただけ…
「貴方は私のもの…誰にも渡さない」
私の事を愛している彼が私以外と婚約するとは思えなかったが、人にはそれぞれ事情があることも理解している。
私がオルフレッド様と結婚できないのは事実なんだもの…
だけどオルフレッド様が私以外の女と結婚するなんて許せない思いはある。
「チャースティン夫人は何故ランクーベ公爵と離縁を望んだんですか?」
私が離縁を受け入れる側だったら目の前の夫人はこのような失礼な質問をしなかっただろうが、彼との離縁は私が望んだ事と言うのは私が口にしていなくともお父様により社交界で拡散されていた。
「…オルフレッド様の屋敷には不可解なことが多くて…」
「「「「「えっ?」」」」」
私の思いもよらぬ言葉にお茶会に集まっていた夫人達が驚きの声をあげた。
「そ…それはどういう事ですか?」
一人の夫人が代表して私に尋ねる。
その顔は興味津々な様子で、周囲にいた人達皆が同じ顔に見えた。
私は正直に話すことにした。
「公爵邸に足を踏み入れた時なんだか刺すような視線を感じたんです。気のせいかなと、あの時は思い深くは考えなかったんです。その後は一緒に着いてきた侍女が、何度も転ぶようになり退職しました」
「まぁ、それは酷い事をする方がいらっしゃるということですか?」
「いえ。公爵家の人達は私の事をランクーベ公爵夫人と受け入れ、良くしてくださったのですが…」
「なにがあったんです?」
「公爵夫人の部屋が…何度掃除をしても手形が浮き出てくるんです」
「きゃっ」
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「…ランクーベ公爵は呪われているのですか?」
「そんなっ呪いだなんて…」
「確か、チャースティン夫人の前に別の婚約者の方がいましたよね?」
「…はい」
「その方は婚約解消してから、社交に一切顔出ししていませんよね?」
「えぇ、シェリンダー伯爵令嬢は体調を崩し結婚目前で婚約を解消しました」
「…やっぱり、ランクーベ公爵は呪われているのよ」
夫人の言葉に「違います」と否定しようとしたが、踏みとどまった。
もしオルフレッド様が「呪われている」となれば、誰も結婚したがらないと思ったから。
オルフレッド様と結婚できないなら、オルフレッド様は誰とも結婚させない。
私がオルフレッド様を下品な令嬢から守って差し上げます。
「そんな…オルフレッド様が呪われているなんて…」
「ですが、手形に怪我に病気だなんて…」
その日からオルフレッド様はお茶会やパーティーで彼の話になると夫人や令嬢の間で「呪われた公爵」と呼ばれるようになった。
言っておくが、私は彼が呪われているとは一言も言っていない。
私の周囲で起きた事実を話しただけ…
「貴方は私のもの…誰にも渡さない」
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