ワガママ令嬢に転生かと思ったら王妃選定が始まり私は咬ませ犬だった

天冨 七緒

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オマケの続き

贈り物の準備

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 招待状を受け取ったので出席の返事を出す。
 それから私達は王都に戻り八歳の貴族の男の子の贈り物はよく分からず、オルフレッドに助言を求めた。

「令息だがまだほんの子供だ、そこまで深刻になることはない」

「はい…」

 オルフレッドは深刻に考えることはないと言ってくれたが、相手があの女性だと思うと色々と考えてしまう。私からの贈り物であればきっとセンスが悪いなど言われそうで、気に触ったりしたらそれを理由にオルフレッドに連絡を取りかねない。あの女性に対して隙を見せたくない、これは女の戦いよ。

「私も一緒に選ぼう」

 別に理由があるとはいえ悩み過ぎてしまいオルフレッドに気を遣わせてしまった。

「いえいえ、オルフレッド様はお忙しいでしょうから…」

「いや、私も久々に王都を歩きたいと…ヴァレリア嬢と一緒に」

 オルフレッドの「一緒に」と言った後、ハートが見えたの私の勘違いだろうか?最近彼の色気が増してきている気がして私の心臓は大忙しだ。

「はい」

 女の戦いなんてどうでも良いわっ。そんなことより、オルフレッド様とのデートを取る。

 翌日にはオルフレッドと一緒に王都にあるお店を観て回ることにした。
 何にして良いのか、高級すぎるものを八歳の子供に送るのはどうなのか?だが我が家は公爵家で相手も侯爵家、下手なものは贈れない。無難な消耗品が良いかなと思うもハンカチーフは令嬢が気持ちを伝えるために贈るので却下、貴族の嗜みの乗馬の道具を贈るにもサイズがあり調べれば容易いが一度も会ったことの無い人間がピッタリのサイズの物を渡したら気持ち悪いだろう。

 私達は色んなお店を渡り歩き、目についたのが万年筆だった。

「これにしようか?」

「そうですね」

 色んな物を見すぎて候補が決められずにいたので、オルフレッドの提案に救われた。漸く贈り物が決まり安堵する。

「少し休みましょうか?」

「はい」

 贈り物は控えていた使用人に渡し、私達は近くのカフェに入る。椅子に座ると、疲れていたことを知る。
 紅茶とケーキのセットを頼むと、周囲の視線に気がついた。
 女性客が多い店内、皆が会話を疎かにしながら注目しているのは私の目の前にいる人物に対してだった。

「どうしました?」

「いえ…」

 女性が一緒にいても素敵な人に目を奪われてしまうのは仕方がない。それにオルフレッドは誰がどうみても格好いい。貞淑を重んじる貴族令嬢達が、「一夜の過ちで良いからお相手してほしい」と願ってしまう人なんだもの。
 服装など気を付けて、身分を隠している私達に対して待ち行く人々も遠慮なく視線を向けている。分かりやすく貴族を全面に押し出した服装で来ていれば店内の奥を勧められるのだが、今は裕福な平民が着るような服装なので外から見える場所に案内された。オルフレッドを目撃して吸い込まれるように女性客が店内に入ってくるのを見て、集客する宣伝に使われてしまったのだと分かる。何気なく案内され、良い席だなぁと深くは考えていなかっだが奥まった席を希望するべきだった。
 当のオルフレッドは何も気にする素振りはなく、妖艶な微笑みを浮かべていた。

 卑しく見えない程度に急いでケーキを食べ、少しでも早くお店を後にしたかった。私の作戦に気が付いた女性客もいて、彼女達のケーキをがっつく姿を見て嫌な予感しかしなかった。急いで食べ終わり、会計を済ませ店を出てこの場から離れる。

「すみません」

 誰かに声を掛けられ振り向けば、案の定と言うべきかカフェにいた二人組の女性客がそこにいた。

「あのぉ、お兄さん素敵だなぁって。お名前だけでも教えてもらえませんか?私、普段はすぐそこの花屋で働いているんです」

 隣にいる私がいてもお構い無しで話しかけるのは、貴族ではあり得ない行為。貴族であれば私が公爵令嬢と誰もが知っているので近付きはしないのに、知らないって強いわ。ちゃったかり働いている場所を言う辺り、「今は駄目でもこっそり私を訪ねてきてください」という魂胆がみえみえだ。
 オルフレッドは気付いていないだろうが、静かに女の闘いが始まっていた。
 私はオルフレッドを信じていないわけではないがなんて返事するのか気になった。

「花ですか、良いですね。妻への贈り物に今から向かいます。教えてくれてありがとう」

 オルフレッドの「花ですか、良いですね」まで聞いた女性は満面の笑みをしたが「妻」という言葉に表情をひきつらせた。

「…ぁっ」

 女性に見せ付ける為にわざとなのか、オルフレッドに腰を抱かれ花屋まで向かう。彼は本当に花束を買い、私にプレゼントしてくれた。彼が選んでくれた花束を抱える私をオルフレッドがエスコートすると女性だけでなく、すれ違う人達の視線全てが私達に向いているのでは?と勘違いしてしまいそうな程で、私は視線が恥ずかしくて待機させていた馬車に乗り込み屋敷へと帰った。
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