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オマケの続き
明日に備えて
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それから私達は緊急会議を開き、カビが混入していた麦を買い取った店を特定できた。そこで終わりではなく、その麦を使用した店からパンを買った人間を突き止めなければならないが、それは明日から始めることに。既に日付が変わろうとしているので今から領民を起こしてパンを回収するのは賢明とはいえない。
私達は明日の朝一から動くと言うことで、今日は解散することに。研究所代表を見送った後、あまりの深刻な状況に言葉を失い気が付くと私は自室のベッドに座って呆然としながら振り返っていた…
「…あれ?麦を回収したら、食料は足りるの?」
今でさえ十分とはいえないのに、これ以上廃棄をだしたら…
急に不安になり私はお父様だけでなく北部のファイン男爵、南部のトリルム伯爵、ニクソン令嬢、アドリーヌ令嬢、モアノア令嬢に全ての経緯を記し食糧支援をしていただけないかと一心不乱に手紙を書いていた。
こういう時、貴族は人脈だと思い知らされる。
社交性のない私が手紙を出せる数少ない人脈…改めて貴族との信頼関係を築いておかなければならないんだと今この時に実感する。
…誰かと比べたくないが、私がお茶会やパーティーなどで輪の中心になれるような人物だったらと考えてしまう。領民を本気で助けたいと思えるようになったのに…私はなんて無力なんだ…
コンコンコン
「…ぁっはい」
ノックの音は確りと聞こえていたが、何の音なのか理解するのに時間を要した。椅子に繋がれている訳でもないのに、身体が重く扉まで歩くのに普段とは違い遠く感じる。
扉を開ければオルフレッドが立っていた。
「オルフレッド様っ?」
先ほどの報告に精神的に疲れていたのか相手を勝手にマーク、もしくはノーラだと決めつけていた。まさか、オルフレッドが私の部屋を訪ねてくるとは予想していなかった。
「いいか?」
「はい…どうぞ」
彼の突然の訪問に疲れは何処かに隠れ一気に目覚めた。
使用人が常に部屋を綺麗に掃除してくれているが、一度部屋を見渡してから彼を部屋に招き入れる。
「…えっと…紅茶…」
「いや、気にしなくて良い」
私が彼の部屋に突撃することはあっても彼が私を訪れる事はなかったので、普段通りが出来ず挙動不審のようになってしまう…
「…この後はゆっくり休んでほしい、私は大丈夫だ」
彼の言葉から「今日は部屋に来なくて良い」という意味に聞こえた。
「…はい」
「ヴァレリア嬢が居てくれて前年の疫病の手懸かりを掴めました…今のところ領民に死者が出ておらず、最悪の事態を回避できそうです。領主として感謝しております、ありがとう」
彼の言葉は夫から妻へというより、領主から恩人へというくらい硬い。
「いえっ私はただ…オルフレッド様の…お役に立ちたくて…」
私はオルフレッドに会いたい、彼の妻として認められたいという不純な動機だったのに、真正面から感謝の言葉を述べられると多少の後ろめたさを感じる。
「ヴァレリア嬢には助けられてばかりです」
「いえっそんな…」
もっもう、それ以上は大丈夫です。
「それだけ言いたかったんだ。遅い時間にすまない、今日はもう休んでくださいね」
オルフレッドの微笑みは一瞬にして心を掴む力を持っている。
彼は長居するつもりはなく立ち上がり、部屋から出ていくのを私は夢見心地気分で扉まで見送る。
そして彼は私の頭を撫で、流れるように髪を一房手にし彼の唇が触れた。
「今日はありがとう、おやすみ」
「…おや…すみなさぃ」
魔法に掛かったように夢の時間だった。
「…今の…現実だよね?」
彼に頭を撫でられるなんて…それに…髪に…髪にキスなんて…
「今日…寝れないかも…」
ベッドに入って瞼を閉じるも、先程の光景が脳裏に浮かび興奮してしまう。
明日の為にも早く寝なければならないのに眠るのが勿体ない。
頭を撫でられキスは唇ではないのにこんなに舞い上がるなんてと思うが、男性に…好きな人にあんな事をされるなんて私には初めての経験だから許してほしい。
ベッドの上で何度も寝返りを打ち布団を乱すだけ乱し暴れていると、いつの間にか幸せな眠りについていた。
私達は明日の朝一から動くと言うことで、今日は解散することに。研究所代表を見送った後、あまりの深刻な状況に言葉を失い気が付くと私は自室のベッドに座って呆然としながら振り返っていた…
「…あれ?麦を回収したら、食料は足りるの?」
今でさえ十分とはいえないのに、これ以上廃棄をだしたら…
急に不安になり私はお父様だけでなく北部のファイン男爵、南部のトリルム伯爵、ニクソン令嬢、アドリーヌ令嬢、モアノア令嬢に全ての経緯を記し食糧支援をしていただけないかと一心不乱に手紙を書いていた。
こういう時、貴族は人脈だと思い知らされる。
社交性のない私が手紙を出せる数少ない人脈…改めて貴族との信頼関係を築いておかなければならないんだと今この時に実感する。
…誰かと比べたくないが、私がお茶会やパーティーなどで輪の中心になれるような人物だったらと考えてしまう。領民を本気で助けたいと思えるようになったのに…私はなんて無力なんだ…
コンコンコン
「…ぁっはい」
ノックの音は確りと聞こえていたが、何の音なのか理解するのに時間を要した。椅子に繋がれている訳でもないのに、身体が重く扉まで歩くのに普段とは違い遠く感じる。
扉を開ければオルフレッドが立っていた。
「オルフレッド様っ?」
先ほどの報告に精神的に疲れていたのか相手を勝手にマーク、もしくはノーラだと決めつけていた。まさか、オルフレッドが私の部屋を訪ねてくるとは予想していなかった。
「いいか?」
「はい…どうぞ」
彼の突然の訪問に疲れは何処かに隠れ一気に目覚めた。
使用人が常に部屋を綺麗に掃除してくれているが、一度部屋を見渡してから彼を部屋に招き入れる。
「…えっと…紅茶…」
「いや、気にしなくて良い」
私が彼の部屋に突撃することはあっても彼が私を訪れる事はなかったので、普段通りが出来ず挙動不審のようになってしまう…
「…この後はゆっくり休んでほしい、私は大丈夫だ」
彼の言葉から「今日は部屋に来なくて良い」という意味に聞こえた。
「…はい」
「ヴァレリア嬢が居てくれて前年の疫病の手懸かりを掴めました…今のところ領民に死者が出ておらず、最悪の事態を回避できそうです。領主として感謝しております、ありがとう」
彼の言葉は夫から妻へというより、領主から恩人へというくらい硬い。
「いえっ私はただ…オルフレッド様の…お役に立ちたくて…」
私はオルフレッドに会いたい、彼の妻として認められたいという不純な動機だったのに、真正面から感謝の言葉を述べられると多少の後ろめたさを感じる。
「ヴァレリア嬢には助けられてばかりです」
「いえっそんな…」
もっもう、それ以上は大丈夫です。
「それだけ言いたかったんだ。遅い時間にすまない、今日はもう休んでくださいね」
オルフレッドの微笑みは一瞬にして心を掴む力を持っている。
彼は長居するつもりはなく立ち上がり、部屋から出ていくのを私は夢見心地気分で扉まで見送る。
そして彼は私の頭を撫で、流れるように髪を一房手にし彼の唇が触れた。
「今日はありがとう、おやすみ」
「…おや…すみなさぃ」
魔法に掛かったように夢の時間だった。
「…今の…現実だよね?」
彼に頭を撫でられるなんて…それに…髪に…髪にキスなんて…
「今日…寝れないかも…」
ベッドに入って瞼を閉じるも、先程の光景が脳裏に浮かび興奮してしまう。
明日の為にも早く寝なければならないのに眠るのが勿体ない。
頭を撫でられキスは唇ではないのにこんなに舞い上がるなんてと思うが、男性に…好きな人にあんな事をされるなんて私には初めての経験だから許してほしい。
ベッドの上で何度も寝返りを打ち布団を乱すだけ乱し暴れていると、いつの間にか幸せな眠りについていた。
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