上 下
64 / 91
オマケの続き

一歩前進

しおりを挟む
 それから私はカビについて話した。
 パンなどに生えたカビは健康被害をもたらし、喩え黒い部分だけを取り除いても周囲にもカビ菌が存在する事を語る。

 長雨が続くとカビが発生しやすく、さらに領民は食材を床に直置きや袋に入れて保管するのでカビにとって過ごしやすい環境が整ってしまっている事も今日の視察で確認済みだ。
 なので領民にはカビが生えた食材を使用しないことや、食材の保管は風通しの良い「すのこ」のようなものの上に置くべきだと話す。
 話している間、「すのこ?」と別の質問もありそこを応えながら、なんとかカビが身体に悪くこの時期の領民は無意識に口にしてしまう機会がある事を伝える事が出来た。

 ただ、それだと死に至る病には弱い気がする…
 カビを体内に吸い込んだとしても、咳や呼吸困難など肺から犯される。カビが原因で死ぬとしたら長年体調不良を起こしてないと無理がある。何かまだあるような気がするが、私にはここまでが限界だ。

 それから、オルフレッドとマークと私で対応策を協議することになった。
 カビが発生した食材に関しては、こちらで回収し処分することに決定。その際新鮮な食材と交換すれば、平民から不満を訴えられることはないだろう。
 数日内にお父様…ルルーシアン公爵から食料と種苗が送られてくる手筈となっていた。それまでに私達は領民に説明を行う。
 それと同時に、カビについても研究してもらうことにした。オルフレッドは「呪い」の対抗策として様々な医療施設・研究所を支援しているので、カビとの因果関係を調査してもらえればと考えている…もらえればと言いながら、公爵という立場を使うつもりだ。

 明日の予定も決まり、時間も時間なので私達は解散する。
 お風呂に入って明日の事を思うも、今日はちゃんと眠ってくれているのか心配になる。
 一度気になってしまうとなかなか眠れない。
 昨日行って今日も彼の部屋に突撃するのは迷惑…嫌われる可能性も…あるの?…考えれば考えるほど眠れず目が覚めていく。無理矢理ベッドに入り布団を被るも心配て仕方がない。

「…もぅっ…」

 私は勢いよく起き上がり、オルフレッドの部屋を目指す事にした。昨日マークに着いていった道順で歩いていく。あっているのか分からないが、部屋の前に辿り着き大きすぎず小さすぎないくらいの音を目指してノックする。

 コンコンコン

「はい」

 …今日も彼はまだ眠っていなかった。

「…私です」

 ガチャ

「…どうぞ」

「ありがとうございます」

 二日連続で夫の部屋を訪ねるなんて…しかも今日はマークの付き添いはない。端から見たらこれは仲の良い夫婦?それとも妻が妖艶な夫を夜な夜な…って変なことを考えるなっ。

 昨日と同じようにソファに座り、対面の彼を見た。

「寝ないんですか?」

「…寝ます…これから…」

 目を伏せて誤魔化す彼が可愛いと思うも、ベッドに促す。

「寝てくださぁいっ」

今日も私は優しく、優しぃく彼を睡眠へ促す。

「もう寝ますんで、ヴァレリア嬢も部屋に戻って…」

「オルフレッド様が本当に眠っているのか不安で、安心できずここまで来てしまいました」

「…はぃ…」

 彼はベッドへ入る。
 昨日と同じように瞼を覆うように手を翳す。
 王都に戻らず領地の為に働き続けてきた彼が、一日寝たくらいでは疲れは取れず今日も吸い込まれるように眠りに落ちていった…
しおりを挟む
感想 400

あなたにおすすめの小説

婚約者だと思っていた人に「俺が望んだことじゃない」と言われました。大好きだから、解放してあげようと思います

kieiku
恋愛
サリは商会の一人娘で、ジークと結婚して商会を継ぐと信じて頑張っていた。 でも近ごろのジークは非協力的で、結婚について聞いたら「俺が望んだことじゃない」と言われてしまった。 サリはたくさん泣いたあとで、ジークをずっと付き合わせてしまったことを反省し、解放してあげることにした。 ひとりで商会を継ぐことを決めたサリだったが、新たな申し出が……

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

「おまえを愛することはない。名目上の妻、使用人として仕えろ」と言われましたが、あなたは誰ですか!?

kieiku
恋愛
いったい何が起こっているのでしょうか。式の当日、現れた男にめちゃくちゃなことを言われました。わたくし、この男と結婚するのですか……?

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。