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オマケの続き
噂話に耳を傾けています
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東部までの移動もあり私は部屋で休むことにした。
オルフレッドが帰ってくるまで起きて待つつもりだったが、長距離移動はやはり馬車に乗っているだけでも体が疲れていたようで眠ってしまったらしい。
使用人にはオルフレッドが帰ってきたら起こしてほしいと伝えていたが、目覚めたらカーテンの隙間から光が射し込んでいた。
私が目覚めたことを確認すると、使用人は申し訳なさそうに口を開く。
「旦那様より、ゆっくり寝かせてあげてほしいと…今日はできるだけ早く帰宅する…との事です」
使用人が失態を犯したのではなく、オルフレッドの気遣い…
「そぅ…」
それでも私は彼に会いたかった…
東部の彼の屋敷は妻となった私の屋敷でもある…皆が私を受け入れようとしてくれているのに、彼のいない家は私にとって他人の家だ。
視察の日程はオルフレッドと一緒に決める予定でいたので、今日は大人しくしているつもりだ。だけど何処で何をして良いのか分からなくて、気持ちは迷子の子供のよう。
「散歩しようかな」
「…私でよければ街を案内しましょうか?」
独り言のように呟けば、マークが優秀な侍女として私に紹介したノーラが返答する。
「…お願ぃ…しようかなっ」
「はい、ではすぐに準備いたしますね」
ノーラはマークに伝え私の服や馬車、護衛の手配など手際よく指示している。
もし彼女が私に対して不穏な計画を企てていたとしても私はきっと見抜くことは出来ないだろうなぁ…と楽観的に眺めていた。
ほどなくして「準備が整いました」と、ノーラが現れる。
私はノーラと同じように使用人の制服に着替え、端から見ると新人が先輩に案内されるという形にし、「これが最も安全な変装です」と胸を張って宣言された。
私も本気のメイド服に身を包み、顔には出さずときめいていたりもする。
「…ぉっ奥様?その制服、気に入ったのですか?」
私はいつの間にか姿見の前に立ち、全身を確認しながら笑みを浮かべている自分に気付く。
使用人の制服を着て浮かれる貴族を見てノーラは明らかに困惑している。
「へっ?ぁっえっと…そろそろぉ行こっか?」
私は誤魔化すように促した。
「…はい」
二人で馬車に乗り、街の人目の無い所で降り立つ。ノーラが先導し、私の背後には平民を装った騎士が三人が護衛としてついている。
迷いなく歩くノーラの後を、はぐれないよう真剣に着いていく。着いていくので必死なので、はぐれたら絶対に迷子だ。
街を案内される中、人々の会話が耳に入ってきた。
幼い兄弟の会話。
「おなかすいたぁ」
「ご飯まで我慢しろよ」
「にぃちゃんはたくさん食べててズルい」
「兄ちゃんなんだから当然だろっ」
「おなかすいたぁ」
長雨による農作物不良で食料が行き渡っていないのか、空腹を訴える子供の声は胸を締め付ける。
結婚に興味のある成人の会話。
「公爵の結婚相手の話聞いたか?」
「あぁ」
「王妃選定に落ちた贅沢三昧のワガママ女を押し付けられたって本当かよ?迷惑な話だよな、全部こっちに不運が回ってくるって言うのに…流石「呪われた公爵」だよな」
「どこまでも呪われてるよな…結婚くらい優しい女か、楽な女がいいよ」
「まぁ、ワガママな貴族の女を組み伏せるってのも興奮するけどな」
なんて、下品な会話…不満を発散するのに誰かの悪態を吐くのは理解しよう…そこでワガママ令嬢の私の悪評も構わない。だけど、なんでも「呪い」のせいにしないでほしい。そもそも、オルフレッドは呪われてなんていない…そう叫んでやりたいのに、私がランクーベ公爵夫人と分かれば面倒なことになる。折角、メイド服という人生初のコスプレをして少しワクワクしていたのに一気にテンションが下がる。
あんな下らないことでも気分が滅入るのだから、彼らの心ない言葉はきっとオルフレッドの心にも…言い返せないのが悔しいっ。
今後に不安を抱える農民の会話。
「もうすぐ収穫だったってのに、長雨のせいで芋が腐っちまったよ」
「俺んとこの麦は黒くなっちまったよ、そのせいで商人に買い叩かれたわ」
「はぁ…植え直すにも種苗が手に入らんしな…」
「漸く晴れたかと思えば、今度は乾燥で畑が固くなっちまてるしよぉ」
「…ぉおっ、ジッサンそっちは種有ったか?」
「んや。何処も在庫無いってよ…」
「はぁ…今年はどうなっちまうんだろうな…」
農家の被害は酷く、植え直すにも作物の種苗が手に入らない様子。植えるものがないのは死活問題。これはオルフレッドの許可を得ることなく今すぐにでもお父様に支援を求めるべきだと判断した。
今の東部は災害被害もあるが、様々な不満をぶつける相手として公爵を目の敵にしているんだろう。公爵の「呪い」のせいにしてしまえば、オルフレッドが反論しないのを分かっていてそうしているんだ。彼らの行動は卑怯だが、オルフレッドは領主として彼らの不満の捌け口になろうとしている…
その現実を知っているから、オルフレッドは私が領地を視察するのを拒んだのだろう。
何も知らずに全てをオルフレッドのせいにする領民を嫌いになりそうだが、彼らの為に必死になるオルフレッドの為に私は父に食料と種苗の援助を願う手紙を書いてやる。
ただ少し気になったのが恨み言や不満を言う気力・体力のある若者はいいが、年齢層が上がれば上がるほど、不満を漏らす体力さえ奪われている様子…最悪、彼らが楽な方法を選んでしまいそうで怖かった…
オルフレッドが帰ってくるまで起きて待つつもりだったが、長距離移動はやはり馬車に乗っているだけでも体が疲れていたようで眠ってしまったらしい。
使用人にはオルフレッドが帰ってきたら起こしてほしいと伝えていたが、目覚めたらカーテンの隙間から光が射し込んでいた。
私が目覚めたことを確認すると、使用人は申し訳なさそうに口を開く。
「旦那様より、ゆっくり寝かせてあげてほしいと…今日はできるだけ早く帰宅する…との事です」
使用人が失態を犯したのではなく、オルフレッドの気遣い…
「そぅ…」
それでも私は彼に会いたかった…
東部の彼の屋敷は妻となった私の屋敷でもある…皆が私を受け入れようとしてくれているのに、彼のいない家は私にとって他人の家だ。
視察の日程はオルフレッドと一緒に決める予定でいたので、今日は大人しくしているつもりだ。だけど何処で何をして良いのか分からなくて、気持ちは迷子の子供のよう。
「散歩しようかな」
「…私でよければ街を案内しましょうか?」
独り言のように呟けば、マークが優秀な侍女として私に紹介したノーラが返答する。
「…お願ぃ…しようかなっ」
「はい、ではすぐに準備いたしますね」
ノーラはマークに伝え私の服や馬車、護衛の手配など手際よく指示している。
もし彼女が私に対して不穏な計画を企てていたとしても私はきっと見抜くことは出来ないだろうなぁ…と楽観的に眺めていた。
ほどなくして「準備が整いました」と、ノーラが現れる。
私はノーラと同じように使用人の制服に着替え、端から見ると新人が先輩に案内されるという形にし、「これが最も安全な変装です」と胸を張って宣言された。
私も本気のメイド服に身を包み、顔には出さずときめいていたりもする。
「…ぉっ奥様?その制服、気に入ったのですか?」
私はいつの間にか姿見の前に立ち、全身を確認しながら笑みを浮かべている自分に気付く。
使用人の制服を着て浮かれる貴族を見てノーラは明らかに困惑している。
「へっ?ぁっえっと…そろそろぉ行こっか?」
私は誤魔化すように促した。
「…はい」
二人で馬車に乗り、街の人目の無い所で降り立つ。ノーラが先導し、私の背後には平民を装った騎士が三人が護衛としてついている。
迷いなく歩くノーラの後を、はぐれないよう真剣に着いていく。着いていくので必死なので、はぐれたら絶対に迷子だ。
街を案内される中、人々の会話が耳に入ってきた。
幼い兄弟の会話。
「おなかすいたぁ」
「ご飯まで我慢しろよ」
「にぃちゃんはたくさん食べててズルい」
「兄ちゃんなんだから当然だろっ」
「おなかすいたぁ」
長雨による農作物不良で食料が行き渡っていないのか、空腹を訴える子供の声は胸を締め付ける。
結婚に興味のある成人の会話。
「公爵の結婚相手の話聞いたか?」
「あぁ」
「王妃選定に落ちた贅沢三昧のワガママ女を押し付けられたって本当かよ?迷惑な話だよな、全部こっちに不運が回ってくるって言うのに…流石「呪われた公爵」だよな」
「どこまでも呪われてるよな…結婚くらい優しい女か、楽な女がいいよ」
「まぁ、ワガママな貴族の女を組み伏せるってのも興奮するけどな」
なんて、下品な会話…不満を発散するのに誰かの悪態を吐くのは理解しよう…そこでワガママ令嬢の私の悪評も構わない。だけど、なんでも「呪い」のせいにしないでほしい。そもそも、オルフレッドは呪われてなんていない…そう叫んでやりたいのに、私がランクーベ公爵夫人と分かれば面倒なことになる。折角、メイド服という人生初のコスプレをして少しワクワクしていたのに一気にテンションが下がる。
あんな下らないことでも気分が滅入るのだから、彼らの心ない言葉はきっとオルフレッドの心にも…言い返せないのが悔しいっ。
今後に不安を抱える農民の会話。
「もうすぐ収穫だったってのに、長雨のせいで芋が腐っちまったよ」
「俺んとこの麦は黒くなっちまったよ、そのせいで商人に買い叩かれたわ」
「はぁ…植え直すにも種苗が手に入らんしな…」
「漸く晴れたかと思えば、今度は乾燥で畑が固くなっちまてるしよぉ」
「…ぉおっ、ジッサンそっちは種有ったか?」
「んや。何処も在庫無いってよ…」
「はぁ…今年はどうなっちまうんだろうな…」
農家の被害は酷く、植え直すにも作物の種苗が手に入らない様子。植えるものがないのは死活問題。これはオルフレッドの許可を得ることなく今すぐにでもお父様に支援を求めるべきだと判断した。
今の東部は災害被害もあるが、様々な不満をぶつける相手として公爵を目の敵にしているんだろう。公爵の「呪い」のせいにしてしまえば、オルフレッドが反論しないのを分かっていてそうしているんだ。彼らの行動は卑怯だが、オルフレッドは領主として彼らの不満の捌け口になろうとしている…
その現実を知っているから、オルフレッドは私が領地を視察するのを拒んだのだろう。
何も知らずに全てをオルフレッドのせいにする領民を嫌いになりそうだが、彼らの為に必死になるオルフレッドの為に私は父に食料と種苗の援助を願う手紙を書いてやる。
ただ少し気になったのが恨み言や不満を言う気力・体力のある若者はいいが、年齢層が上がれば上がるほど、不満を漏らす体力さえ奪われている様子…最悪、彼らが楽な方法を選んでしまいそうで怖かった…
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