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オマケの続き

到着したが、やはりというか…

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 馬車が止まり、東部のランクーベ公爵家の屋敷に到着したのかを窓の外を覗いて確認した。外には使用人が数名待機していたが、そこにオルフレッドの姿を見つけることは出来なかった。
 馬車の扉の施錠を解くと外から開けられ陽の光が足元へ射し込む。一歩踏み出し外気を感じ、執事の手を借り馬車を降りる。

「お待ちしておりました」

 出迎えた使用人が一斉に頭を下げた。

「ありがとうございます、皆さんも頭を上げて」

 全員が頭をあげ、彼らの表情から私をどう思っているのか探ってしまう。
 私には良い噂はないだろうし、王妃選定に落ちた令嬢というのは国に関わることなので貴族の屋敷で働く者として知らないでいるのは難しいだろう。オルフレッドが私を出迎えないことで、使用人達の彼らが私は公爵夫人として受け入れていないと判断してもおかしくはない。
 雇用主の決定に従うのは当然、喩え言葉での指示はなくとも察するのが賢い使用人。
 私は執事に案内される中、緊張していた。
 流石は公爵家の使用人、当然のように優雅なおもてなしで私に紅茶を運ぶ。一口紅茶を含み堪能する。
 紅茶は苦味もなく温度も適温、嫌がらせ等は一切感じない。それに案内された部屋も空気も爽やかで私の為なのか常にこの状態なのか、花を飾られ華やかだった。

「旦那様は朝から視察に行っており、奥様の事は窺っております。私は執事長のマークです。何かあれば私にお申し付けください」

「ありがとう…それで、復興の方はどのくらい進んでいますか?」

 表向きとして私が東部に足を運んだ理由は、領地復興支援の為の視察。なんの情報も得ることなく「今、私の旦那様は何処ですか?」なんて聞いたら絶対に教えてもらえなくなりそう…まずは領地の状況を私の目で確認してからお父様…いえ、ルルーシアン公爵にどの程度の支援を求めるのか決めたいと言ってあるので、確認せずに求めるわけにいかなかった。

「この地域は長雨対策が出来ているとはいえ、農作物にはかなりの被害が出ております。旦那様は他貴族や他領地に支援を求めることを嫌いますので「問題ない」と奥様にもお伝えしているかもしれませんが、やはり食糧は今後も必要になるかと…ですが、私が心配なのは寝る間も惜しんで働き詰めの旦那様です」

 オルフレッドの働き方に対して、誰よりも傍で見ているマークは心配な様子。
 もしかしたら私が「旦那様と一緒の時間を過ごしたい」というワガママを期待し、少しでも仕事から離れ休んでほしいと願っているのかもしれない。

「…そうなんですね…それと…」

 私は事前に聞いていた「疫病」について聞いても良いのか躊躇ってしまった。

「…あぁ、あれの事ですか?」

 私の気まずそうにする雰囲気からマークは察してくれた。

「…はぃ」

「去年流行したあの病は今のところ確認できておりませんが、原因も未だ未解決です」

「そう…なんですね」

「その為、あの時期に近づくにつれ旦那様も張り詰めていて…」

 それで私が呼ばれたのか…

「オルフレッド様は、食事は取っていますか?」

「…軽食…程度ですね」

「食べてはいるんですね」

「はい」

「良かったです」

 領地復興の前に旦那様が倒れてしまうと不安だったが、最低限の食事と睡眠は取っているようだった。
 だが、最低限だ。
 早く彼に会ってどのくらい最低限なのか確認したい。

 不安になりながらオルフレッドを待っていると、使用人からあることを伝えられた。

「旦那様は奥様を守るために、今回出迎えはしませんでした」

「私を…守るため?」

「はい、旦那様にはその…噂があるため、ヴァレリア様が奥様だと周囲に認識されてしまうと「奇異の目に晒される」と言って、朝から屋敷を出ていかれました」

 噂についてすっかり忘れていたが、災いが起きた領地はそうもいかないらしい。
 王都の屋敷を出る際も見たことの無い真っ黒い馬車を利用してきた。普段なら家紋入り馬車を使うのに、どこの貴族が分からないような馬車を用意され多少の疑問を感じたが深くは考えなかった。
 だが、ここで疑問が溶けた。

「…領民の方達もオルフレッド様の事を…」

 私はどうしても彼が「呪われている」と口にしたくなかった。彼は呪われてなんていないもの…

「…はい。何かある度に、旦那様の「呪い」のせいだと…」

 濁して聞いた私の質問に正確な返答がくる。
やはり、ここても「公爵の呪い」で解決なのか…

「…楽ですもんね。自分のせいではなく誰かのせいにするのって…それが貴族であれば尚更…」

「…そう…かもしれません」

しまった…つい彼に八つ当たりしてしまった。
彼はオルフレッドの事を「呪われた公爵」なんて言っていないのに…

「ごめんなさい…オルフレッド様は、そのように言われることに今まで耐えていたんですね…」

「…慣れ…ですかね」

「慣れ…ですか…」

そんなもん、慣れてほしくない。

「…ですので、その…落ち込まないでください」

「へっ?」

「旦那様が奥様を蔑ろにしているのではなく、大切にされているからこその判断です」

 使用人の言葉は嬉しいが私は王妃選定に落ちたワガママ令嬢と伝わっているはず、それなのに対応が優しすぎる…
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