ワガママ令嬢に転生かと思ったら王妃選定が始まり私は咬ませ犬だった

天冨 七緒

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オマケの続き

隠し事

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「公爵様は執務室に何か隠しているのですか?」

「いやっ…それは…その…」

 公爵はハッキリとは言わず誤魔化そうとするも、しどろもどろな対応が彼の人の良さを表していた。
 嘘を吐くことが出来ない人…

「入ります」

 私は公爵と同時に執務室の中にいる人物にも聞こえるように宣言した。
 取っ手に手を掛け、扉を開ける。喩えそこに私の見知った相手がいたとしても受け入れ…ようとは思う。
 きっとこの世界でも同性愛というのは後ろめたくあり、貴族であれば尚更周囲に公表など出来ない。公爵は私を隠れ蓑とし、愛する者を守りたかった…それほどまでに愛した人…公爵に愛された人がここにはいる。

 私は公爵に止められないように、勢いよく扉を開けた。
 初めて入る公爵家の執務室。執務机とソファとローテーブルがあり、人の気配はなかった。

 …誰も…いない?

 ローテーブルには何もなく、ソファも誰かがいた形跡はない。
 誰もいない部屋なのに、公爵は顔を背け「見つかってしまった」としか思えない行動をしている。
 …きっと相手はどこかに隠れているに違いない。私は執務室を調べていく。

「令嬢っ」

 公爵の手が伸びてきたのを察知し、私は素早く一歩を踏み出し隠れ場所として最も怪しい公爵の机の下を覗いた。

 誰もいない…

 安心したいのに、公爵の反応を見ると他を探さずにはいられない。大人の男性一人が隠れられそうな箇所を手当たり次第調べるも、怪しいもの一つ見付けられなかった。
 突然来たにも拘わらずこんなにも痕跡を消せるものだろうか?
 …私の勘違い?なら、どうして公爵はそんな傷ついた顔をしているの?

「…公爵様…私に何か伝えたいことがあるのではありませんか?」

「…ルルーシアン令嬢…」

「はい」

「…離…縁…を望むのであれば受け入れる」

 …酷い人。
 愛する人がいるのは公爵なのに、私から別れを告げさせるなんて…

「…公…爵様がお望みとあれば…」

 結局私は、公爵の事を名前を呼べずに終わるのね…

「…私は貴方に傷付いてほしくない」

「私が傷つくのは公爵のせいです」

 勝手に涙が溢れてくる。
 最後に泣くなんて、面倒な女って思われる…けど、私たちの関係が終わりなら我慢する必要はない。
 私は最後に、公爵がどんな表情をしているのか見てやろうと睨み付けてやった…

「…すまない」

 そういう彼は、私よりも辛そうな顔をしている。
 別れを告げられたのは私なのに、どうして貴方がそんな表情をするの?
 被害者にならないでよっ。

「…はぁ…公爵様、今後はご自身を偽らず恋人と幸せになってください」

 私は最後なんて捨て台詞を吐いてやろうかと頭を巡らせたが、秀逸な言葉なんて思い浮かばず嫌みを言うくらいが精一杯だった…
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