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オマケの続き
今度は何?
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「イーサン…イーサン…イーサン」
使用人の一人が慌てた様子でイーサンを呼びに来る姿は、公爵家では珍しい光景だ。
「こらっ奥様の前だ、慎みなさい」
「申し訳ありません」
「それで、どうした?」
「庭師のドルフィーが…」
「ドルフィーがどうした?」
「突然痒みを訴えたので確認したところ、首に小さな赤い皮疹ができて 時間が経つに連れて皮疹が大きくなり赤く腫れ上がってきたんです」
「それは直ぐにお医者様を呼びなさい」
「はいっ」
執事は医者の手配を指示し、ドルフィーのいる場所に向かうので私も同行した。
「奥様は部屋でお休みください」と言われても、気になってゆっくり休む気分ではないので強引に着いてきた。
公爵以外の人にはワガママを発揮できるみたい。
数人に囲まれた人物は倉庫の一角、木箱に座っている。
「奥様は近づかないでください、襲いかかるかもしれませんので」
イーサンには彼が襲いかかると思っているのだろうか?確かに忙しなく首を引っ掻いている姿は異常だが、人に襲いかかるようには見えない。
ドルフィーは長年公爵家の庭師を担当してくれているお爺ちゃんで、今は息子さんに跡を継がせる予定でいるので付きっきりで伝授していた。
「何かに取り憑かれたんじゃ?」
「まさか、何かに刺されたんじゃないのか?」
「あんなに数ヵ所をか?」
「俺も近くにいたが周囲に虫なんて見当たらなかったぞ…」
「やっぱり、これも「呪い」じゃねぇのか?」
公爵家で働いている者は事ある毎に「呪い」で解決しようとする。
もういい加減その呪いに直結させるのやめませんか?
「あの…まず、赤く腫れている所を水で洗った方が良いのでは?」
「呪い」と信じている使用人達は、洗うことなどせず他の人へ移らないよう距離を取り隔離することを選んでいた。
「…あっ、そうですね」
ドルフィーは自らの足で水場に歩いていくのだが、いつ暴れるのか分からないので周囲には使用人が囲みドルフィーが洗うのを皆で眺めている。まずは患部をよく水で洗い流すも、赤みは治まらない。
「氷を持ってきて、冷やした方がいいですね」
ふっふっふ。
公爵家には今年から冷蔵庫と氷が存在するのだ。立食パーティーの時にちゃっかり頂いていたのだ…言っておくが、私が強引に奪ったのではなくファイン男爵が完成品を貰ってほしいと言ったんだ。私のワガママではないからねっ。
私の言葉に使用人が氷を取りに走り出す。
「あの、何をしていてそうなったんですか?」
「えっと…庭の手入れをしていて突然痒くなり…痛みもあります」
「何かに刺されたり?」
「いえ、周囲に虫や蜂などはいませんでした」
「それは毎年なるんですか?」
彼は長年庭師として働いているので、植物に寄り付く虫や植物自体の毒や棘に関しては詳しいだろう。
「今回が初めてです。バ…奥様が散歩しやすいよう整えていたんですが、急に痒みを感じたと思ったら…一気に広がりこの状態になりました」
「…そうなんですね」
「あっあの…氷、お持ちしました」
使用人が氷を持って現れた。
「痒みが酷い箇所に氷を当てて、お医者様がくるのを待っていてください。その間、私は庭を見に行きます」
「奥様、それはダメです」
私が「呪い」の現場を確認しに行くと言うと、イーサンに強く止められた。
呪いではなくとも実際に被害が出ているので、主不在の屋敷で公爵夫人である私に被害が出るのを恐れているのだろう。
イーサンの判断は正しい。
だけど、私も自分の目で確かめたい。
「周囲を確認するだけで、どんな場所なのか確認させてください」
「いえ、ダメです」
「その場には行きませんから」
「ダメなんです」
「どうしてですか?」
「…危険だからです」
「部屋の手形や犬、廊下の時も大丈夫だったじゃないですか?」
「今回はダメです。奥様にも同じ症状が現れる危険がありますので、今回だけは許可できません。奥様の「安全第一」と旦那様より仰せつかっておりますので今回ばかりはいけません。代わりに私が確認して参ります」
今回のイーサンは頑なに首を縦に振ってはくれなかった。
「…分かりました。では私は行きませんので、もう一度確認して頂けませんか?」
「畏まりました」
はい…始まります、呪われた庭
使用人の一人が慌てた様子でイーサンを呼びに来る姿は、公爵家では珍しい光景だ。
「こらっ奥様の前だ、慎みなさい」
「申し訳ありません」
「それで、どうした?」
「庭師のドルフィーが…」
「ドルフィーがどうした?」
「突然痒みを訴えたので確認したところ、首に小さな赤い皮疹ができて 時間が経つに連れて皮疹が大きくなり赤く腫れ上がってきたんです」
「それは直ぐにお医者様を呼びなさい」
「はいっ」
執事は医者の手配を指示し、ドルフィーのいる場所に向かうので私も同行した。
「奥様は部屋でお休みください」と言われても、気になってゆっくり休む気分ではないので強引に着いてきた。
公爵以外の人にはワガママを発揮できるみたい。
数人に囲まれた人物は倉庫の一角、木箱に座っている。
「奥様は近づかないでください、襲いかかるかもしれませんので」
イーサンには彼が襲いかかると思っているのだろうか?確かに忙しなく首を引っ掻いている姿は異常だが、人に襲いかかるようには見えない。
ドルフィーは長年公爵家の庭師を担当してくれているお爺ちゃんで、今は息子さんに跡を継がせる予定でいるので付きっきりで伝授していた。
「何かに取り憑かれたんじゃ?」
「まさか、何かに刺されたんじゃないのか?」
「あんなに数ヵ所をか?」
「俺も近くにいたが周囲に虫なんて見当たらなかったぞ…」
「やっぱり、これも「呪い」じゃねぇのか?」
公爵家で働いている者は事ある毎に「呪い」で解決しようとする。
もういい加減その呪いに直結させるのやめませんか?
「あの…まず、赤く腫れている所を水で洗った方が良いのでは?」
「呪い」と信じている使用人達は、洗うことなどせず他の人へ移らないよう距離を取り隔離することを選んでいた。
「…あっ、そうですね」
ドルフィーは自らの足で水場に歩いていくのだが、いつ暴れるのか分からないので周囲には使用人が囲みドルフィーが洗うのを皆で眺めている。まずは患部をよく水で洗い流すも、赤みは治まらない。
「氷を持ってきて、冷やした方がいいですね」
ふっふっふ。
公爵家には今年から冷蔵庫と氷が存在するのだ。立食パーティーの時にちゃっかり頂いていたのだ…言っておくが、私が強引に奪ったのではなくファイン男爵が完成品を貰ってほしいと言ったんだ。私のワガママではないからねっ。
私の言葉に使用人が氷を取りに走り出す。
「あの、何をしていてそうなったんですか?」
「えっと…庭の手入れをしていて突然痒くなり…痛みもあります」
「何かに刺されたり?」
「いえ、周囲に虫や蜂などはいませんでした」
「それは毎年なるんですか?」
彼は長年庭師として働いているので、植物に寄り付く虫や植物自体の毒や棘に関しては詳しいだろう。
「今回が初めてです。バ…奥様が散歩しやすいよう整えていたんですが、急に痒みを感じたと思ったら…一気に広がりこの状態になりました」
「…そうなんですね」
「あっあの…氷、お持ちしました」
使用人が氷を持って現れた。
「痒みが酷い箇所に氷を当てて、お医者様がくるのを待っていてください。その間、私は庭を見に行きます」
「奥様、それはダメです」
私が「呪い」の現場を確認しに行くと言うと、イーサンに強く止められた。
呪いではなくとも実際に被害が出ているので、主不在の屋敷で公爵夫人である私に被害が出るのを恐れているのだろう。
イーサンの判断は正しい。
だけど、私も自分の目で確かめたい。
「周囲を確認するだけで、どんな場所なのか確認させてください」
「いえ、ダメです」
「その場には行きませんから」
「ダメなんです」
「どうしてですか?」
「…危険だからです」
「部屋の手形や犬、廊下の時も大丈夫だったじゃないですか?」
「今回はダメです。奥様にも同じ症状が現れる危険がありますので、今回だけは許可できません。奥様の「安全第一」と旦那様より仰せつかっておりますので今回ばかりはいけません。代わりに私が確認して参ります」
今回のイーサンは頑なに首を縦に振ってはくれなかった。
「…分かりました。では私は行きませんので、もう一度確認して頂けませんか?」
「畏まりました」
はい…始まります、呪われた庭
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