上 下
28 / 91
オマケの続き

お祭り

しおりを挟む
 皆から労いの言葉を頂き照れ臭くなり「皆でお祭りに行きませんか?」と提案すれば、全員から断られた。
 いや、一人を残してほぼ全員から…

「お母様はお父様とお祭りを回りたいから遠慮するわ」といわれ、他の皆は「私達も行きたいところがあるので…」とニクソン令嬢とアドリーヌ令嬢はアイコンタクトで頷き合う。

「では、モアノア令嬢は…」

「私はカリックス様と回る予定なんです」

「「「えっ?」」」

 カリックス様とは、カリックス・ファインの事だろうか?
 彼とモアノア令嬢が?えつ?
 私だけでなく、ニクソン令嬢やアドリーヌ令嬢も驚いていたので始めて聞く事実なんだろう。

「あぁ私今、カリックス様と婚約の話がありまして何度かお会いしているんです」

「…へぇ、そう…なんですね…」

 意外だ。
 カリックス様はとても素晴らしい男性だが、ファイン男爵は北部に住んでいて環境が過酷な事と経済面から婚約者が決まらないと言われていた…
 確か、モアノア令嬢もそんなことを…だけど、相手を知って変わったのかもしれない。環境よりも、その人自身の魅力に惹かれたのだろう。そんな二人の時間を邪魔したくないので見送った。
 となると…

「あの…公爵様…もしよろしければ…一緒に…回りませんか?」

「…私で…良ければ…」

「はい」

 私達は初めてのデートに行くことになった。
 なんだか皆に見守られていた気がしなくもない。
 私は急いで平民に近い服装に着替える。
 公爵とデートできると知っていればもっと可愛い服を用意すれば良かったと後悔するも、服で悩む時間が削れたんだと考えを変え待たせている公爵の下へ急いで向かう。
 当然騎士やジャネットも一緒だが、気を使って少し離れた位置にいる。

「あの、この先に北部と南部の共同で製作した「かき氷」の店があります」

「あぁ、貴方が考えたものだろう?」

「いっいえ、皆で考えたデザートです」

「そうなんですね」

 お店が近付くとチンドン屋が盛り上げ、活気があり人だがりが出来ていた。
 お店の前には人がいるんだが店内がどうなっているのか見えず、背伸びをするも全く見えなかった。

「店内も混雑しているようだ」

 背の高い公爵が教えてくれる。

「そうなんですね、公爵にもぜひ味わってほしかったんですが…この分じゃ一時間は並んじゃいますよね…」

「…並びますか?」

「良いんですか?」

 人を避けている公爵から「並ぶ」という選択肢が出たことに驚いた。
 私は公爵と一緒にいる時間だけで嬉しいが、こんな人混み…公爵は辛くはないのだろうか?

「はい」

 並んでいる間、私に気がついた接客係が特別席を案内すると提案されたがお断りした。貴族だからと特別扱いされると周囲の人の不信感を買い、更にはお店の評判にも影響してしまうと思った。
 しまった…公爵のことを考えれば提案を受け入れた方がよかったのかもと後になってから気付き窺うように公爵を見つめれば、微笑んでくれる。
 それだけじゃなく人混みだという事で公爵との距離が近く、すれ違う人との距離が近いためぶつかりそうになると優しく肩を抱き寄せてくれる。
 公爵の大きな手の感覚は忘れない、男の人に初めて肩を抱かれた。

 私にとって今日は、初めて肩を抱かれた記念日だ。
しおりを挟む
感想 400

あなたにおすすめの小説

婚約者だと思っていた人に「俺が望んだことじゃない」と言われました。大好きだから、解放してあげようと思います

kieiku
恋愛
サリは商会の一人娘で、ジークと結婚して商会を継ぐと信じて頑張っていた。 でも近ごろのジークは非協力的で、結婚について聞いたら「俺が望んだことじゃない」と言われてしまった。 サリはたくさん泣いたあとで、ジークをずっと付き合わせてしまったことを反省し、解放してあげることにした。 ひとりで商会を継ぐことを決めたサリだったが、新たな申し出が……

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

「おまえを愛することはない。名目上の妻、使用人として仕えろ」と言われましたが、あなたは誰ですか!?

kieiku
恋愛
いったい何が起こっているのでしょうか。式の当日、現れた男にめちゃくちゃなことを言われました。わたくし、この男と結婚するのですか……?

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。